札幌藻岩高校 中村 文則
【材 料】 本時で使用する素材
【下ごしらえ】
《基本編2》 〜助手と関数をメイクる
《応用編2》 〜合成関数をメイクる
まとめ …………メイクる数学をメイクる
「メイクる」は「メイクする」からの造語です。何をメイクるかというと、もちろん数学ですが、「make ⇔ 作る」ほど大げさなことは考えていません。「make-up」的な飾りと捉えていいかと思います。化粧のように、淡く、ファンデーションを塗り、薄く口紅を引く。けっして素材を傷めるでなく、引き立てるような興具が作れればという思いがありました。
ところで「メイクる」は、藻岩高校、菅原先生の名言
「5分の教材は5分で教具を作ろう」
からその発想が始まりました。
身近にある素材を最大限に生かし、最大限の効果をと考えます。ケバイ化粧は、強烈なインパクトを一瞬与えるだけで、すぐに飽きてしまいます。化粧そのものに興味がいき、本来の素材の良さが疎かになる危険性があります。もちろん、何時間もかけて興具を作成し、その苦労を生徒に追体験させることで生徒を引き込み、教材を展開していくことに勝てるはずもありませんが(双葉高校、大山先生作のブラック・ボックスが傑出しているのはご存知のとおりです)。
さて、初回のブラック・レターはもちろんブラック・ボックスの説明をコンパクト化したものです(ブラック・レターという命名は、「不幸の手紙」を連想させ、どうかなと思いましたが、ブラック・ボックスに敬意を払いました)。
興具として利用するのは手紙ですが、「使い古し」に限定しました。新品の封筒ではブラック・レターの価値は半減します。資源の再利用という面はもちろんあるのですが、使用済みの「○○○○様」と宛名が入っている方が、興味を引き付け、数学がグッと活きてくると思うのです。封筒の底を開くのも、レターナイフやハサミでは味気がないわけです。手でビリビリと破って、関数の出口(値域)を開いてやる(探してやる)楽しさを味わいたいと思います。
また、生徒を助手として使うことも、生徒を数学に近づけます。生徒とともに「数学を遊ぶ」ことからまずメイクりしていきます。例えば、わざとらしく、誰にも分かるように封筒の中でカードを裏返しする。
「バカだなあ、先生。裏に数字○○が書いてあることみんな知ってるよ。」
生徒は「数学で遊び」だします。当たり前のことを当たり前に見せてやることの方が、モチベーションとなることがあるように思うのです。
そうして、遊んでおいて、例えば合成関数の場合のように「小袋」に隠しておいたカードをそっと抜き出すわけです。
「あれ?、数字が変わっている!」
疑問は、再び冷めかかっていた生徒の興味を呼び起こします。
このように、予想外の結論を引き出すことを奇術の世界では、ミスディレクションといいます。観客をある方向に巧みに誘導しておいて、一定観念を植え付け、土壇場でまったく予想外の結論を突きつける。衝撃は記憶として残るものです。そんな演出を数学でもしてやると、いつのまにか、生徒は「数学に遊んで」いるものではないでしょうか。
今回、旗揚げをした「メイクる数学」は、できるだけ、数学に遊べるように、教材をメイクっていき、連載を続けていこうと思っています。「小手技シリーズ」同様、泥臭い悪戦苦闘にお付き合いいただければ嬉しいのですが。