札幌藻岩高校 中村 文則

【材 料】 本時で使用する素材

厚紙、教室の壁に貼ってある不要になった掲示物(西洋紙)、チョーク(あるいはマジック)、ハサミ、マグネット、輪ゴム、クリップ

【下ごしらえ】

厚紙を切り抜いて、自動車、家を作る。教室の不要の掲示物を拝借して、カードを作る。

【調 理】

《基本編1》  〜カードの値から絶対値をメイクる

《基本編2》  〜自動車を走らせ絶対値をメイクる

《基本編3》  〜車と家の距離から絶対値1次方程式をメイクる

ex1) 次の方程式を解け。
   (1) |x-2|=4  (2)|x|=3  (3) |2x-3|=4

《基本編4》  〜車と家の距離から絶対値1次不等式をメイクる

ex1) 次の不等式を解け。
   (1) |x-3|<4  (2)|x+2|>3  (3) |3x+2|≧1

《応用編1》  〜数直線上に絶対値方程式をメイクる

ex1)の(1)の問題を解く。

《応用編2》  〜数直線上に絶対値不等式をメイクる

ex2)の(1)の問題を解く。ex2)の(2)の問題を解く。

《応用編3》  〜車を替えて絶対値方程式をメイクる

ex1) (3)を解く。

《応用編4》  〜車を替えて絶対値不等式をメイクる

ex2) (1)を解く。

ex2) (3)を解く。

まとめ

 絶対値問題が難しいのは、「絶対」といっておきながら、その解法が「相対」的であるからだと思います。大きさを求める記号と捉えたり、数直線(平面・空間)における距離と考えたり、あるいは平面上のグラフでは 軸に関する反射とみたり、扱う問題によって多種多様の色をみせます。もちろん根源に違いはないのですが「そう考えると分かり易いから」と押し付けることが分かりにくくなっている分野の代表例といえるでしょう。絶対値分野が深みにはまると際限なく落ち込むのは、過去に小手業シリーズで絶対値不等式を扱ったとき、次の不等式変形は認められるかということに対しての波紋の大きさからも分かります。

   @|2x-1|<x ⇔ -x<2x-1<x
   A|2x-1|>x ⇔ 2x-1<-x,x<2x-1

 実は両方ともに正しいことがネット上の議論で証明されたのですが、Aに対しては正しいのになぜ現場では認められないかという点では依然結論がでていません。絶対値は数学的に触れられたくない部分を被覆しているgateみたいなものでもあり、そこは教育上、ネグレクトした方がきっといいのでしょう。
 さらに、−(マイナス)記号をどう生徒は解釈しているかということで指導法も変わってきます。生徒が、|-a|=a と答えるなら、a が変数であることを理解させることと同時に(−)記号が、負数を表すのではなく、ベクトル的に符号を変える働きをする記号と認識することも必要でしょう。絶対値が曖昧な変数の大きさを包括的に求めるのに対し、(−)記号は直接的に作用する訳です。こういった出発点の違いからも絶対値は苦い味わいをもって苦しめてくれます。
 さて、本文の内容ですが、前半の家と車と輪ゴムはそれぞれ、定数(定点)と変数(動点)と(−)記号をパロディっています。輪ゴムの伸び縮みで不等式の表現しようとしたのですが、ちょっと失敗だったかもしれません。遊びすぎるとロクなことがありません。
 後半は、変数を車で表し、x,2x,2x+3 と変えていく様を車の大きさで例えています。左方向から定数と変数を拾っていき、「<」、や「≦」で結べば自然と解が得られます。変化する点、変化しない点をそれぞれ家と車で置き換えると随分すんなりと理解ができたなと感じます。
 なお、本文の数直線上の自動車はすべて左方向(x軸負方向)を向いています。他意があったわけではありません。自動車のイラストで右向きのが手元になかっただけのことです。車の向いている方向も考えて指導をアレンジしてもらえればと思います。