札幌藻岩高校 中村 文則
【材 料】 本時で使用する素材
【下ごしらえ】
【調 理】
《基本編1》 〜カモメで放物線をメイクる
以下の要領で、カモメの放物線を作成する。生徒に事前に何ができるか悟られぬように、慎重にかつ、スピーディに作業は行うこと。なお、作成されたカモメ放物線(パラボラ)を、以後、「カモパラ」と呼ぶことにする。
@西洋紙を半分に折る操作を4回する。
《基本編2》 〜カモパラで2次不等式をメイクる
2.餌の魚を採りに、海に潜っているカモメがいる場合
(1)上空に飛んで浮かんでいる(y>0)カモメを探そう。
@「上空に浮かんでいるカモメはそのうち疲れて、海面に降りてくる」という。
(2)水中に潜っている餌を漁っている(y<0)カモメを探そう。
@「水中に潜っているカモメはそのうち苦しくなって、海面に顔をだす」という。
まとめ
本編は、「二次不等式の解のちょっとした小手技」の実践編という位置付けです。小手技での情景設定は以下のとおりです。
積丹の神威岬にいったことあるかい。ない?、なければどこか適当な岬でいいから思い浮かべてごらん。君は恋人と手をつないで展望台に立っているんだ。エメラルドグリーンの海を恋人と眺めている。彼方の空と海が出会うところが地平線だ。これを 軸に見立ててやろう。その地平線の上方にカモメが飛ぶ。君達のようにお互いに寄り添いカモメ達は編隊飛行をしている。その様は下に凸の放物線とオーバーラップするね…… |
先生のこんな語り口から授業が始まります。このあとはいつものように3人の登場人物が悩み、笑い、怒り、授業を盛り立てていきます。
「一番嫌いな二次不等式の解法を一番好きにするにはどうすればいいか」という葛藤は、楽しさの中から不等式のイメージを刷り込ませようという極めて単純な結論に落ちつきました。でも、このカモメ達をチョークでいちいち書いて説明するのは面倒だし、せっかく呼び込んだ流れを寸断してしまうことになります。実は、小手技では、その肝心の部分についてはまったく触れていないのです。
そこで、「カモメを書く(作る)段階から興味をもって展開できないか」と考えたのが本メイクるの切り絵によるカモメ放物線(カモパラ)の作成です。
西洋紙を折って切りぬく場面は、生徒にとっては予測不能な出来事です。「何をしているんだろう」「何が起きるんだろう」「何ができるんだろう」おぼろげな興味は「何かができる」確信に変わっていきます。ぐぐっと引き寄せた強い興味をそらさないように、「飛んでるカモメは疲れて落ちる」、「潜っているカモメは苦しくなって浮かび上がる」、言葉をコーティングしていくわけです。さらに、逃してなるものかと、カモパラの両端を箒やモップにくくり付けて、先生もノリノリになってたたみ掛けてしまうのです。
トドメは、カモメの代表さん。変数をカモメで代用しようという企てです。カモメに手を挙げさせると不思議と変数 に見えてくるではありませんか。見えない?、見えなくてもいいのです。見えるように生徒に強要します。「先生、バカいってる」と思うことは授業に参加していることです。そっと、悟られずにイメージを忍び込ませていくのです。
そうして、気が付いたら、きっと、生徒は不等式を楽しんでいるでしょう。
ウォルト・ディズニーは、彼の偉大な事業のテーマを「edutainment」という言葉に託しました。
「education 」と「entertainment」の合成語です。ディズニーランドやディズニーシーのきらびやかなパノラマ世界は、娯楽のみを追求しているわけではけっしてないのです。その根底にある「教育」というキーワード。学ぶこと、学べることの大切さを教えてくれています。
カモパラワールドでもその精神は忘れたくはないと思います。