札幌新川高等学校 中村 文則

○ちょっとした誤手技?

<先 生> 絶対値の記号||は数から負符号をチェックし,奪い取る関所みたいなものですが,数直線上で点をプロットし,数学言語としてとらえれば,
   |xa|⇔点A(a)から点P(x)までの距離
と翻訳できたんだったよね。この考えを利用して,絶対値のついた1次不等式を解いてみよう。

ex) 次の不等式を解け。
(1)|x−3|<4   (2) |2x−3|<5   (3) |3x+4|>2

<先 生>まず(1)だけど,そのまま日本語として読むと,「点3からxまでの距離が4より短い」となる。例えば,先生の今立っている場所を点3としよう。この点から4までの距離の点は左右2箇所あるけど,黒板に向かって右の場所はというと,……先生,1歩,2歩,3歩,4歩と右に歩き出す……この点だ。では,この点は何だ,まなぶ。

<まなぶ>…指折り4,5,6,7と数えて…はい,7です。

<先 生>今度は,左方向だ。……再び点3の位置に戻って歩き出す……,さあ,この点は,かず子。

<かず子>3−4=−1です。

<先 生>従って,4より短い距離は,−1と7の間だから,その範囲の適当な数xに対して,−1<x<7となる訳だ。それでは,同様に(2)を皆で話し合って求めてごらん。

<かず子>まず,xの1次の項の係数が1でなければ直訳できないから,両辺を2で割って,
   
 これから,点から点P(x)までの距離がより短いということですから,点aから右方向に進んだ点  と,点aから左方向に進んだ点  の間の範囲より,
   −1<x<4
となるわ。

<よしお>俺は,t=2xと置きかえるな。すると点a(3)から点P(t)までの距離が5より短いという意味だから
   3−5<2x<3+5
 よって,両辺を2で割って,−1<x<4となる。

<まなぶ>そうやって置きかえるならいっそのこと,まるごとt=2x−3と置き換えてしまった方がラクだと思うな。
   −5<x<5 から −5<2x−3<5
 これから,両辺に3を加えて2で割ればいい。

<先 生>どの考え方も面白いけど,今回は「まなぶ法」を採用してみようか。まなぶ法は,絶対値のとる値を一つの点とみて,原点からの距離と考える方法だね。
   |P|<k (0<k) ⇔ −kPk
ということだ。では,まなぶ法で,(3)に挑戦だ。

<まなぶ>原点から点P(3x+4)までの距離が,2より長いんだから,
   3x+4<-2,2<3x+4
となるから,
   
です。

<先 生>まなぶ法全開だな。では,次の問題に応用してみよう。

ex) 次の不等式を解け。
(1) |2x−3|≦x+1   (2)|3x−1|>x+3   (3)|x−1|≧2x+3

<よしお>(1)を解きます。原点から点P(2x−3)までの距離がx+1より短いから……

<先 生>不等号の部分に注意!。

<よしお>あっ,はい,短いか,等しいから
   −(x+1)≦2x−3≦x+1
です。左辺と中辺から,,中辺と右辺から,x≦4。共通範囲を求めて,
   
となります。

<かず子>(2)も同じです。原点から点P(3x−1)までの距離がx+3より長いわけですから,
   3x−1<−(x+3), x+3<3x−1
それぞれを解いて,
   
となります。

<先 生>では最後の問題はまなぶ法に敬意をはらって,まなぶに解いてもらおう。


<まなぶ>カンタンです。原点から点P(x−1)までの距離が2x+3より長いか等しいんだから,
   x−1≦−(2x+3), 2x+3<x−1
それぞれを解いて,
   
で終わりです。

<先 生>本当に終わりかい。求めた解はまとめられないかな。

<まなぶ>えっ?。あっ。共通範囲を求めて,x≦−4です。

<先 生>ほんとう?。もともとの解は,図をみると2つの領域で与えられていたね。その場合は共通部分を求めるのかな。


<まなぶ>そうか。解を合わせるんだ。だから,
   
です。
 だけど,先生,全然,俺に敬意払ってないと思うんだけど!。


Note

   このまなぶ法はどこまで,認められるでしょうか。