札幌新川高等学校 中村 文則

 無理が通れば道理も通る

<先 生>隣接二項漸化式の一般項の求め方の復習をしよう。
   a1=5,an+1=3an−4
を解くには,α=3α−4なる特性方程式の解を利用するんだったよな。
 二式の差をとると,an+1−α=3(an−α),α=2より,与式は,
   an+1−2=3(an−2)
と変形されるから,{an−2}は公比2,初項a1−2=3の等比数列となる。よって
   an−2=3・2n−1 より an=3・2n−1+2 となるわけだ。
 それでは,今日の問題だ。

ex) 次の漸化式を満たす数列{an}の一般項を求めよ。
  a1=5,an+1=3an−4n

では,まなぶ,解いてごらん。

<まなぶ>まず,anan+1をαとおいた式を作ります。
   α=3α−4n
ここで,与式との差をとると,
   an+1−α=3(an−α)
となります。ここでα=2n を代入して,
   an+1−2n=3(an−2) ……(*)
 あとは,カンタン!。{an−2n}が公比3の等比数列になるから初項を求めて……

<かず子>ちょっとまって,まなぶ君。それおかしいよ。等比数列になってないよ。

<まなぶ>えっ,どうして?,だって左辺と右辺は,anan+1の違いだけで,3倍されていくんだから等比数列だろう。

<かず子>だってね。仮に,bn=an−2nっておけばね,bn+1=an+1−2(n+1)になって,ほら,2nも変わるでしょ。

<まなぶ>あっ!

<先 生>かず子のいう通りだね。数列の問題では,項の位置を表すnの扱いが重要なポイントになる。気をつけなくてはいけないね。では,この問題はどう考えればいいのだろう。

<よしお>はい,「邪魔者は消せ」の発想でできると思います。この場合の邪魔者は4nですから,これを消すために,次の二項の漸化式,
   an+2=3an+1−4(n+1) から,与式との差をとると,
   an+2an+1=3(an+1an)−4
 ここで,bn=an+1anとおけば,bn+1=3bn−4 ですから,特性方程式を求めて変形すれば,解けると思います。

<先 生>よく勉強してるね。でも,ちょっとこの後の計算を考えると頭がクラクラするけどね。a2の値が必要だし,bnを求めた後は,今度は,階差数列型の漸化式を解かなければいけないわけだ。ところで,よしお,特性方程式の解を何ていったっけ。

<よしお>はい,平衡値です。

<先 生>そうだね。バランスを取る値という意味だ。では何に対してのかというと,二項漸化式を等比数列型に変形するための隣り合う二項のバランスということだ。さて,そこでだ。先ほどまなぶが考えた(*)の式だけど,確かにバランスはとれていない。でも,バランスはとれかかっているんだよ。かず子がいっていたね。「ほら,2nもかわるでしょ」。じゃ,実際に変えてやるとどうなる,かず子。

<かず子> an+1−2(n+1)=3(an−2n) ですか?

<先 生>数列のバランスはとれたね。でも,等号のバランスが崩れてしまったよ。

<まなぶ>かず子,左辺の減った2だけ,右辺も減らさないと。

<かず子>そうか。an+1−2(n+1)=3(an−2n)−2 となります。

<先 生>そう,これで完璧に釣り合ったね。後は,bn=an−2nとおくと,bn+1=3bn−2となる。さあ,よしお,今度は再度,bnのバランスをとって,問題を解いてごらん。

<よしお>変形して,bn+1−1=3(bn−1) より,{bn−1}は等比数列で,公比3,初項b1−1=(a1−2)=2です。
 これから, bn−1=2・3n−1
 よって, an−2n−1=2・3n−1
   ∴ an=2・3n−1+2n+1
となります。

<先 生>いいかな。バランスが取れないからといってすぐあきらめてしまう必要はないんだよ。バランスを取ろうと努力していれば,それなりの結果は得られるんです。


 Note

 nの一次式を含む隣接二項漸化式は,一般には,    anbn+an+β
とおくことで求められる。

   an+1=3an−4n に代入して
   bn+1+α(n+1)+β=3(bn+an+β)―4n
   bn+1 =3bn+(2α−4)n−α+2β
 {bn}が等比数列になるようにするためには,
    2α−4=0,−α+2β=0
であるから,α=1,β−1であればよい。

 よって,bn=an−2n−1とおくと,
   an−2n−1=(a1−2−1)・3n−1 より,an=2・3n−1+2n+1 が得られる。

 最終的にはこの説明までできればいいのだが,「バランスをとる」という観点で生徒が作ることができるよう指導することが望ましいのではないかと思う。

 同様に考えれば,n次式f(n)を含む二項漸化式
   an+1=pan+f(n)  (p≠0,1)
を解くことも可能である。

ex) a1=5,3an−4n2 を満たす数列{an}の一般項を求めよ。

<α=3α−4n2よりα=2n2
   an+1−2n2=3(an−2n2)
   an+1−2(n+1)2=3(an−2n2)−4n−2  ……第1バランス
   bn=an−2n2 とおくと,bn+1=3bn−4n−2
<β=3β−4n−2よりβ=2n+1>
  bn+1−(2n+1)=3{bn−(2n+1)}
 bn+1−{2(n+1)+1)=3{bn−(2n+1)}−2  ……第2バランス
   cn=bn−2n−1とおくと,cn+1=3cn−2
<γ=3γ−2よりγ=1>
    cn+1=3(cn−1)           ……第3バランス
 よって,{cn−1}は公比3の等比数列である。
    cn−1=(bn−2n−1)−1=(an−2n2)−2n−2=an−2n2−2
であるから,
   an−2n2−2n−2=(a1−2−2−2)・3n−1=−3n−1
    ∴  an=−3n−1+2n2+2n+2