
| 
ex) 次の不等式を証明せよ。 (1) (a2+b2)(x2+y2)≧(ax+by)2 (2) (a2+b2+c2)(x2+y2+z2)≧(ax+by+cz)2  | 
<よしお> 僕が(1)をやります。
<先 生>うん。では最後に等号成立の条件を考えよう。
<まなぶ>簡単だ。平方完成した式が0の場合だから、ay=bx のときですね。
<先 生>これは、比で表すと、a:b=x:y と同じだね。では、次に(2)を証明してみよう。
<かず子>私の番だわ。
<先 生>確かにどうまとめていいかこの式だけでは見当がつきにくいかもしれない。それをどう方向性を見つけていくかというのが不等式の証明のキーポイントになるんだ。具体的にみてみよう。
 まず、大事なことは(2)の不等式は(1)の拡張であるということだ。ということは、(1)の証明法は当然拡張した(2)の証明にも保存されていると考えられないだろうか。そこでだ。(1)の展開の結果と(2)の展開の結果を比較してみてごらん。なにか気がつくことがないだろうか。
<まなぶ>ええーっと、(2)の展開した項の中に(1)の展開した項が含まれているということですか。
<先 生>その通り。ということは、その部分は平方完成されて、
   a2y2+b2x2-2abxy=(ay-bx)2
となるわけだ。では、それ以外の項はどうだろうか。
<よしお>同じように平方完成できるということではないでしょうか。そうすると………、
<まなぶ>分かった!!。さっきの平方完成した式は、aとbそれとxとyについてですよね。じゃ、今度はbとc、yとzについて考えればいいのではないですか。
<先 生>どうだろうか。ちょっと確認してみよう。
 (ay-bx)2をbとcおよびyとzの関係に変えると(bz-cy)2となるね。ではこの式を展開した項が、先ほどの(*)に含まれているかどうか調べてごらん。
<かず子>(bz-cy)2=b2z2-2bcyz+c2y2ですから…先生、全部含まれてます。
<まなぶ>そうするとあとは、aとc、xとzの関係を考えればいいってことですね。
   (cx-az)2=c2x2-2cazx+a2z2
 あつ、これは、(*)の残りの項に一致している。
<先 生>まとめよう。したがって、
   (左辺)-(右辺)=(ay-bx)2+(bz-cy)2+(cx-az)2≧0
となって証明ができた。では、最後に等号成立の条件を考えてみよう。
<かず子> はい。ay=bx,bz=cy,cx=azですね。
<先 生>比の形にして見やすくしてごらん。
<よしお>a:b=x:y,b:c=y:z,c:a=z:xですから、a:b:c=x:y:zとなりますね。
<先 生>この方がずっと見やすいことが分かるね。では、いまの考え方を使って、次の問題を解いてみよう。
| 
ex) 次の不等式を証明せよ。 (1)a≧b,x≧yとするとき、(a+b)(x+y)≦2(ax+by) (2)a≧b≧c,x≧y≧zとするとき、(a+b+c)(x+y+z)≦3(ax+by+cz)  | 
<かず子>(1)は、 私がやってみます。この場合、一次式だから、一般には因数分解する方向で考えるんでしたよね。
<まなぶ>じゃあ、(2)だ。
<先 生>では、最後に、等号成立のケースを考えてみよう。因数分解された3つの式がすべて0になればいいから、
   (a=bまたはx=y)かつ(b=cまたはy=z)かつ(c=aまたはz=x)
となるけど、これは整理して簡単にするとどうなるだろう。
<まなぶ>(1)の等号成立のケースが単純に拡張できると考えると、a=b=cまたはx=y=zだと思うんですけど。
<先 生>だいぶ不等式の証明の扱い方に慣れてきたね。確認してみよう。
 右図を見てごらん。@,A,Bのそれぞれにある2つの等式から1つの等式を選べばいい。たとえば@からはa=b、Aからはy=z、Bからはc=a。するとこれから、a=b=cが得られるね。他の選び方も考えてごらん。
<かず子>@からx=y、Aからy=z、Bからc=aを選ぶと、x=y=zとなるわ。
<先 生>どういう選び方をしても、必ずa=b=cかx=y=zのどちらかの式がでてくるね。これからまなぶが予想した等号成立のケースが正しかったことがわかったね。
 さて、本時のまとめだ。
 今日の不等式の証明は、もっとも単純な絶対不等式を、変数を増やして拡張していく場合には、もともとの変形式が保存されていることを利用したものだ。左辺から右辺を引いて、多項式をバラバラに分解して、単項式を組み合わせたわけだけど、例えるならば、トランプゲームで神経衰弱をするようなもの。組合わせるペアさえ分かれば簡単に拾い出してまとめていけるということだ。
<まなぶ>なるほど。分かったような気がする。僕たち3人がまとまらないのはペアが作れないからなんですね。
<かず子>そういう問題じゃないでしょ。
   等号成立は、ak=tbk (k=1,2,・・・,n)
  等号成立は、ak=ajまたはbk=bj本文の中での証明法が、証明すべき式を展開(分解)し、拡張前の式に咀嚼することで組合わせを求めるのに対して、上述の方法は、変数を積み上げて証明すべき形を構築していく方法といえるでしょう。ただ、証明の印象で言えば、この解法は巧過ぎるように思えます。結果と方法どちらを踏襲して拡張するかという選択であれば、後者の方が組みし易いのではないでしょうか。もう一例。
| 
ex) 次の不等式を証明せよ。 (1)|a|<1,|b|<1のとき、ab+1>a+b (2)|a|<1,|b|<1,|c|<1のとき、abc+2>a+b+c  | 
(1)の証明
(2)の別証明
 (1)から自然と式変形が導かれ、(*)も必然的に要求されることが分かるでしょう。
 この証明法を三角不等式に適用してみましょう。
| 
ex) 次の不等式を証明せよ。 (1)|a+b|<|a|+|b| (2)|a+b+c|≦|a|+|b|+|c|  | 
(1)の証明
から導かれます。
から、この2次方程式の判別式をDとすると、
より得られます。

