札幌藻岩高等学校 中村文則

放物線を結ぶ赤い糸!!!

<先 生>今日は,赤い紐によって結ばれた縁についての話をしよう.

<まなぶ>先生,どうしたの.頭でも打った.

<先 生>真面目な話だよ.茶化さないように.まず,次の問題を考えてみよう.

ex1) 次の2つの放物線の両方に接する直線の方程式とその接点の座標を求めよ.
  y=x2+2x−1……@, y=x2−4x+8……A

<かず子> 共通接線の定番の問題ですね.接線はy軸に平行でないから接線の方程式をy=mx+nとおいて,判別式を使えばいいわ.私が解いちゃっていいかしら.まず,@と連立させて,
   x2+(2−m)x−1−n=0 …B
判別式をD1とすると,
   D1=(2−m)2−4(−1−n)=m2−4m+4n+8=0
次にAと連立させて,
   X2−(4+m)x+8−n=0 …C
判別式をD2とすると,
   D2=(m+4)2−4(8−n)=m2+8m+4n−16=0
この2式を辺々引いて,
   −12m+24=0 よって,m=2
第1式に代入して,n=−1
以上より,y=2x−1
そして,接点は……パス!,まなぶ,やって.

<まなぶ>おいおい,急に振るなよ.よしおにパス!.

<よしお>しょうがないな.m=2より,Bの重解を求めて,
   x=(m-2)/2=0 これから接点は,(0,−1)
同様に,Cから接点は,(3,2).
でも,僕なら問題では接点も要求していることを考えると,微分を使った方がいいと思うな.

<先 生>では,よしお,言った責任をとって解いてもらおう.

<よしお>はい,@の接点のx座標をx=sとすると,
y'=2x+2より,接線の方程式は,
   y=(2s+2)(x−s)+s2+2s−1=(2s+2)x−s2−1
同様に,Aの接点のx座標をx=tとすると,
   y=(2t−4)(x−t)+t2−4t+8=(2t−4)x−t2+8
2式は一致するから,
   2s+2=2t−4, −s2−2=−t2+8
   ∴ s=0,t=3 
これから,接線と接点が両方求められます.

<先 生>そうだね.この2つが代表的な解法だね.

<まなぶ>先生,もう一つあるよ.二人の考えをドッキングさせるんだ.よしおが求めた@の接線は,
   y=(2s+2)x−s2−1
これがAと接すればいいから,連立させて,
   x2−(2s+6)x+s2+9=0
この判別式をDとすると,
   D/4=(s+3)2−(s2+9)=6s=0
これから,s=0が求まる.

<かず子>いつものことだけど,応用力というか適応力というか,まなぶのサバイバル機能には恐れ入るわ.

<まなぶ>褒められていると解釈し,僕のサバイバルレーダーで予測すると,先生が言いたいのはこれだけではないですよね.

<先 生>まあね.実はこの問題は,赤い紐を使うと,1分でできてしまう.

<かず子>赤い紐?,接線も接点もですか?.凄い.どうやってやるんですか.

<先 生>さて,取り出したる赤い紐.

<まなぶ>本当に赤い紐を持っているんですか.用意周到というか.

<先 生>おほん,さて,この紐の両端を接点に置く.そうして,両端が曲線上にあるように,@上の紐を動かしていくと何か気がつくことはないだろうか.

<まなぶ>なんか面白そうだな.僕にやらせて.えーっと,こう@の上を紐を滑らすと,Aも動いて…,あっ,分かったぞ.

<かず子>頂点だわ.@の頂点の位置に紐の端がきたとき,Aも頂点に紐の端が来るわ.

<まなぶ>横取りするなよ.でも考えてみれば当たり前だよな.Aと@のグラフは同じ開きだから平行移動したら重なる.したがって紐の長さが固定されていたら,@とAの曲線上の点の移動量は等しいということですよね.

<先 生>そう,逆に頂点の位置から移動させてみればもっと分かりやすい.少しずつ曲線上をずらしていくと,接線になる.

<よしお>そうか,ということは先生,紐は平行移動しているわけだから,接線の傾きと2頂点を結ぶ線分の傾きは等しいということになりますね.

<先 生>その通り.それぞれの放物線を標準形にすると,
   y=(x+1)2−2, y=(x−2)2+4
よって,2頂点(−1,−2),(2,4)を結ぶ線分の傾きは,
   m={4−(−2)}/{2−(−1)}=2
@より,y'=2x+2よって,接点のx座標は,2x+2=2より,x=0
これから,接点は(0,−1)より,接線の方程式は,y=2x−1
同様に,Aより,y'=2x−4=2 これから接点は,(3,5)となる.

<かず子>ほんとだ.1分ぐらいでできちゃった.でも,先生,ひょっとしたら今日のネタはこれだけじゃないのでは.

<先 生>かず子,その人を疑るような眼つきは,まなぶが入ってぞ.どうして,そう思うんだい.

<かず子>これだけのことにずぼらな先生がわざわざ紐を用意するわけないし,それと今回のテーマが共通接線なら,もう一つ別の共通接線が考えられると思うのだけれど.

<先 生>紐を用意してきたことの憶測は余計なお世話だけど,もう一つの共通接線に気がついたのは鋭い.次の問題を見てごらん.

ex2) 次の2つの放物線の共通接線の方程式を求めよ.
   y=x2−2x+3 …@, y=−x2+6x−13 …A

<まなぶ>そうか,放物線のグラフの開きが上に凸と下に凸の場合か.なるほど,この場合の共通接線もありえるか.

<よしお>これは2つの接線が考えられますね.今日のテーマから考えると,これも赤い紐を使うとできるということになりますね.

<先 生>よしおも先読みするようになったか.まなぶウィルスが蔓延したかな.
まあ,ウィルスに感染した諸君ならもう分かっていると思うけど,当然まず2頂点を結ぶ.そうして,共通接線になるように移動量を同じにして曲線上をずらしていくんだけど,下に凸の放物線上の点を左方向に動かすと,上に凸の方は右方向になるね.だから紐を伸ばしながら動かすことになる.実演しよう.こうだ.この動きをみて何か感じることはないかな.

<かず子>すだれをねじった形に紐の軌跡が出来上がるわ.

<まなぶ>ということは,そのねじった箇所は定点ということにならないかな.

<よしお>それは紐の中点ですよね.

<先 生>連係プレイというより二人がまなぶのクローンになっているようでちょっと怖いが,その通りだ.これも考えてみれば当たり前だね.2つの放物線を重ねるには2頂点の中点に関して対称移動すればいいわけだから.

<まなぶ>そうか.ということは,接線もこの中点を通るってことだ.

<かず子>だから,点がきまっているから後は傾きを求めればいいってことね.

<よしお>あるいは微分で接点を求める.

<先 生>まあ,そういうことだ.じゃ,誰か求めてごらん.

<かず子>まず@の頂点は,y=(x−1)2+2より,A(1,2).
同様にAは,y=−(x−3)2−4より,B(3,−4)
したがって中点はP(2,−1)だわ.

<よしお>あとは,判別式か微分を使えばいいですね.微分でやります.
@の接点のx座標をx=tとおくと,接線の方程式は,
   y=(2t−2)(x−t)+t2−2t+3=(2t−2)x−t2+3 …(*)
これに点Pを代入して,−1=2(2t−2)−t2+3
   t2−4t=0より,t=0,4
したがって,(*)式に代入して,y=−2x+3,y=6x−13
となります.

<まなぶ>うーん,なんとなくできたけど,しっくりこないなあ.

<かず子>何がなの.簡単に求まってるじゃない.

<まなぶ>確かに普通にやるより簡単だけど,最初にやったグラフの開きが同じ場合の1分の解答に比べると随分手間がかかっている気がしないか.

<よしお>そういえば,そうだな.

<先 生>さすが,元ウィルスまなぶ.するどい.

<まなぶ>ひでぇな.先生,まだ秘密を隠し持ってるでしょ.早く吐きなよ.

<先 生>それでは,さて,この赤い紐の両端を 軸に平行になるように放物線を移動させる.このときの紐の長さで何か気づくことは.

<生徒達>………

<先 生>では,紐の下端が中点Pになるように紐を上に平行移動させると….

<かず子>あっ,先生,わたし知ってる.下に凸の放物線の2接点を結ぶと,赤い紐の上端はその直線上にあるんでしょ.

<まなぶ>そんな性質あるの.

<先 生>放物線の大事な性質のひとつだね.
直感的な証明は赤い紐と放物線が交わった点Qにおける接線を求めて,接線の値だけ放物線の値を引いてみる.

<まなぶ>先生の得意なy軸に平行に曲線をスライスしてx軸上に整形しなおすって方法ですね.

<先 生>そう,スケーリングといったね.そうするとこの放物線は点Qを頂点とする放物線の基本形に整形できる.この図から放物線に関するいろいろな性質が見えてくる.例えば2接点のx座標の平均は,点Pのx座標に等しいことから,整形した線分STはx軸に平行となる.これはもとの放物線において点Qを通る接線と,直線STは平行であることを意味する.

<よしお>線分STと放物線で囲まれる図形の面積S1と,2接線と放物線で囲まれる図形の面積S2の面積比は,
   S1:S2=2:1
になるっていうのもありましたよね.

<先 生>そしてこれらの性質を使うとexの問題も簡単に解けてしまうんだ.
その前に少しもともとの問題を整理してみよう.
まず,2つの放物線の頂点を結ぶ線分の中点に関して2つの放物線は対称であることが分かった.その対称点P(2,−1)を通る接線を求めると考えればex2の問題は,

ex3) 点P(2,−1)から放物線y=x2−2x+3に引いた接線を求めよ.

とみなすことができるだろ.

<かず子>なんだ.共通接線の問題と,曲線外から引いた接線の問題は同じことを要求していたんですね.でも,この場合の求め方も,通常は,接点を適当において接線の方程式を作り,曲線外の点を代入するって方法だったと思うけど.

<まなぶ>だから,それが簡単にできてしまうということを先生はいいたいんでしょ.

<先 生>そういうことだ.そのためにさきほどかず子がいってた性質を図で説明しておこう.
右図において,点Qにおける接線を土台にy軸方向にスケーリングしてできた放物線をy=ax2とする.この放物線をみると,PQ=QRであることはすぐに分かる.

<まなぶ>えっ,どうして.

<先 生>点T(t,at2)における接線を求めてごらん.

<よしお> y'=2axですから,接線の方程式は,
   y=2at(x−t)+at2=2atx−at2
となります.

<先 生>求める2接線は,放物線y=ax2のy軸上の点P(0,−at2)から引いた接線に対応している.ここでy切片at2は,y=ax2の原点からのxの増分tに対するyの増分に等しいことからPQ=QRであることが分かる.

<まなぶ>なるほどね.それを聞いて先生が言いたいことがなんとなく読めてきたぞ.先生は,yの増分が分かれば,接点のx座標がこの性質を使うと求められるっていいたいんでしょう.

<先 生>さすが元ウィルス…

<まなぶ>分かったから話を進めてよ.

<先 生>それでは,放物線をf(x)=ax2+bx+c(a>0)とし,点P(p,q)から引いた接線を求めてみよう.まず,点Pを通るy軸に平行な直線x=pと放物線および2接線STを結ぶ線分との交点をそれぞれQ,Rとする.
Q(p,f(p))より線分PQの長さdは,d=f(p)−q.ここで,PQ=QRであることより,QR=d
次に点Qにおける接線で放物線をスケーリングをすると,放物線はy=ax2とみなせ,S,Tのy座標は,Rのy座標に等しくなる.すなわち,
   d=ax2
これから,
   
これが,点PからS,Tまでのxの増分になるわけだ.ということは,S,Tのx座標はどう表されるだろうか.

<よしお>もともとP(p,q)だったから,
   
となりますね.凄い,求まりました.接点のx座標がでればあとは簡単ですものね.

<まなぶ>ようし,では先生の企みを看破した小生がex3を解いて進ぜよう.
まず,y=f(x)とおくと,f(2)=3,よって,yの増分は,3−(−1)=4
これからxの増分は,.したがって接線のx座標は
   x=2±2=0,4
あとは,かず子にバトンタッチ.

<かず子>美味しいところばっかりつまみ食いするんだから.しょうがないわね.
y'=2x−2で,点(2,−1)を通る接線だから,
   x=0のとき,y=−2(x−2)−1=−2x+3
   x=4のとき,y=6(x−2)−1=6x−13
ほんと,あっという間にできてしまうんですね.

<まなぶ>放物線の絶対値の開きが同じってことは,2つの放物線は夫婦みたいなものなんだろうな.二人は赤い紐で結ばれていて,片方が動けば同じようにそれに従ってもう片方が動く.そしていつも頂点で歩調をとりあっているんだ.まあ,婦唱夫随ってことかな.

<かず子>やだあ,まなぶったら,いつもの先生のまとめ,奪っちゃってる.でも,まなぶ,普通,縁を結ぶのは,赤い紐でなく,赤い糸っていわない.

<先 生>2人を結んでいるのが赤い糸と紐では随分違うだろうな.ヒモだと,なんか男は女にくっついているグウタラ者のような印象を受けてしまう.もう一つ.まなぶは,「婦唱夫随」っていっていたけど,本当のことわざは,「夫唱婦随」,夫が唱えたことに妻がしたがうということだ.でもまなぶがいうと,赤いヒモも,婦唱夫随も言葉としては正しいのかもしれないけどな.

<まなぶ>ん……?


<あとがき>

 今回は開き(2次の項の係数)の絶対値が等しい放物線のグラフの共通接線を取り上げましたが,開きが違う場合はどうなるだろうか.頂点を結ぶ線分との関係について調べてみよう.

T.上に凸と下に凸の2つの放物線の共通接線

 2つの放物線の方程式を
   f(x)=ax2,g(x)=−b(x−p)2  (a>0,b>0,p>0)
とおくと,この放物線の共通接線の一つはx軸(y=0)となる.
 2つの放物線f(x),g(x)の接点をそれぞれS(s,f(s)),T(t,g(t))とすると,2接線の交点Aは,x軸上にある.また,S,Tからx軸に下ろした垂線の足をそれぞれSx,Txとすると,曲線外から引いた2接線の性質より,
   OA=ASx,TxA=AP.
よって,s/2=(p+t)/2
   ∴ p=s−t
また,
   f'(s)=g'(t)
であることより,
   as+bt=bp
2式よりs,tを求めると,
   s=2b/(a+b)・p,s=(b−a)/(a+b)・p
以上より,A(b/(a+b)・p,0)
 次に,f(x),g(x)のx軸でない共通接線をy=mxとし,これを2つの放物線の値に加え,y=f(x)+mx,y=g(x)+mxを作る(いわゆる和関数を考える).
 このとき,もともとの接線であったx軸がy=mxになり,この変換により,2接線の交点Aはのx座標は変わらずA'に移される.また,放物線の頂点はm>0であれば左方向にずれていく.
 y=f(x)+mxの頂点Qのx座標を求めよう.
   
より,頂点Qのx座標はx=−m/2a
 同様にy=g(x)+mxの頂点Rのx座標は,x=p+m/2bであることは明らか.
 さて,ここで,もともと2つの放物線f(x),g(x)において,x軸は,共通接線であると同時に,2頂点を通る直線だから,2接線の交点である点Aをy=mxにより変換した点A'は,頂点を結ぶ線分QR上の点になる.点A'はQRをどのような比に分けるだろうか.
 A'のx座標は,x=b/(a+b)・pであることより,
   
 y=mxの代わりにy=mx+nを考えてもこの一般性は失わない.
 以上より次の結論を得る.

2つの放物線の2次の項の係数をa,−b (a>0,b>0)とするとき,
共通接線の交点は,1つの接線に対する2つの放物線のそれぞれの接点を結ぶ線分をb:aの比に内分する点である.

 また,上述の証明過程において,
   
 これから

2つの放物線f(x),g(x)の2次の項の係数をa,−b (a>0,b>0)とするとき,
共通接線の交点は,2つの放物線f(x),g(x)の頂点を結ぶ線分をb:aの比に内分する点である.

ex1)次の2つの放物線の共通接線の方程式を求めよ.
   f(x)=x2−2x+2,g(x)=−3x2+2x−2

解)
f(x)=(x−1)2+1より,頂点A(1,1)
g(x)=−3(x−1/3)2−5/3より,頂点B(1/3,−5/3)
よって,線分ABを3:1の比に内分する点は,P(1/2,−1)
f(1/2)−(−1)=9/4より,接点のx座標は,x=1/2±3/2=2,−1
f'(x)=2x−2であるから,接線の方程式は,
   y=2x−2,y=−4x+1

U.2つの上に凸(下に凸)である放物線の共通接線

 2つの放物線の方程式を
  f(x)=ax2,g(x)=b(x−p)2 (a>0,b>0,a≠b,p>0)
とおくと,Tと同様に考えることができる.
y=mxを加えて作られる2つの放物線
   y=f(x)+mx,y=g(x)+mx
のそれぞれの頂点をQ,Rとすると,
   
であり,線分QRとy=mxとの交点は,QRをb:aの比に外分する点であることが証明できる.
証明は割愛するが,外分する点A(x,y)がy=mx上にあることだけを確認してみよう.
   
   
また,線分QRとy=mxとの交点は,2接点を結ぶ線分をb:aの比に外分する点であることも示される.
以上より,

2つの放物線の2次の項の係数をa,b(a>0,b>0,a≠b)とするとき,
2頂点を結ぶ線分および2接点を結ぶ線分をb:aの比に外分する点は一致する.

が成立する.

ex2)次の2つの放物線の共通接線の方程式を求めよ.
   f(x)=4x2+8x−16,g(x)=x2−4x+20

解)
f(x)=4(x+1)2−20より頂点Q(−1,−20)
g(x)=(x−2)2+16より頂点R(2,16)
線分QRを1:4の比に外分する点A(x,y)は,
   x=(−4−2)/(−1+4)=−2,y=(−80−16)/(−1+4)=−32
よって,A(−2,−32)
f(−2)−(−32)=16=4・22であるから,
接点のx座標は,
   x=−2±2
より接点は,(0,−16),(−4,16)
以上より,共通接線は,y=8x−16,y=−24x−80

V.定点と放物線上の点を結ぶ線分の分点の軌跡

 頂点を結ぶ直線と接点を結ぶ直線の交点がそれぞれの線分を一定の比に分けることから,他の2点でも同様に一定の比に分けることはできないか調べてみよう.
 定点A(p,q)と放物線y=ax2(a>0)上の点Q(x1,y1)をa:a−bの比に分ける点の軌跡P(x,y)の方程式を求める.
より
   
点Q(x1,y1)はy=ax2上の点より,
   
   ∴ 
よって,その軌跡は,
   グラフの開き(x2の項の係数)−b,頂点である放物線
である.したがって,分点の軌跡を逆にみることで,次の結果が得られる.

2つの放物線
   y=ax2+mx+n,y=bx2+m'x+n'
の2頂点,及び共通接線の2接点を結ぶ線分を−b:aの比に分ける点は一致する.

  

W.上に(下に)凸である2つの放物線の交点

 2つの放物線
   y=ax2+mx+n,y=bx2+m'x+n' (ab>0))
の交点との2接点の間には次の関係が成立している.

2つの放物線
   y=ax2+mx+n,y=bx2+m'x+n (a>0,b>0))
の交点のx座標は,それぞれの放物線の接点を結ぶ線分のx座標を
   √b:√aの比に内分・外分
する座標である.

証明)
放物線から共通接線を引いて,接点が頂点となるようにする.
さらに,頂点が原点にくるように平行移動すると,放物線は
   y=ax2,y=bx2
となる.このとき,y座標が一定値y=dとなるときのそれぞれのx座標の増分の比が求めるx座標の比となる.
y=ax2,y=bx2のx座標の増分をx=s,x=tとする.
   as2=bt2=d
より,
   
よって,
   
である.
 これを利用して共通接線の問題を解いてみよう.

ex3)次の2つの放物線の共通接線を求めよ.
   f(x)=4x2+8x−16,g(x)=x2−4x+20

解)
この2つの放物線の交点のx座標は,
   4x2+8x−16=x2−4x+20
より,x2+4x−12=0
   (x+6)(x−2)=0
   ∴ x=−6,2
このx座標が2接点を1:2の比に内分する点である.
接点間の交点のx座標がx=2のとき,
2接点のx座標は,x=2−s,2+2sとおける.
f'(2−s)=g'(2+2s)より,8(2−s)+8=2(2+2s)−4
これを解いて,s=2
よって,2接点のx座標は,x=0,6より,
共通接線の方程式は,y=8x−16
同様に,交点のx座標がx=−6のとき,
2接点の 座標は,x=−6−t,−6+2tとおける.
f'(−6−t)=g'(−6+2t)より,8(−6−t)+8=2(−6+2t)−4
これを解いて,t=−2
よって,2接点のx座標は,x=−4,−10
共通接線の方程式は,y=−24x−80

X.2円の共通接線

 放物線を2次曲線のひとつと考えると,その仲間である円の共通接線との類似性を見出すことができる.
 大小2円の共通接線は,その位置関係から次のように引くことができる.

 ひとつの接線により平面は2つの領域に分けられる.2円が同じ領域にありその接線に接している場合,その接線を共通外接線,異なる領域に2円があって接する場合を共通内接線という.
 これらの共通接線は,2円の半径r,R(r<R)と2円の中心C1,C2の座標から求めることができる.
 下図のように2つの円の接点をそれぞれA,Bとし,2接線の交点をPとする.
ここで,△PAC1∽△PBC2であるから,
   PC1:PC2=r:R
よって,点Pは,線分C1C2をr:Rの比に分ける点(共通外接線の場合は外分点,共通内接線の場合は内分点)である.したがって,その共通接線は,この点Pから,2円のどちらか一方を選んで,その円に引いた接線を求める問題(円外から引いた接線問題)に帰着することになる.

2つの円の半径をr,R,中心をC1,C2とする. 2円の共通内接線(外接線)は,線分C1C2をr:Rの比に内分(外分)する点から,2円のどちらかに引いた接線である.

ex4)次の2つの円の共通接線を求めよ.
   x2+y2=1,(x−2)2+y2=4

解)
2円は交わるから求める接線は2本の共通外接線である.
2円の半径はそれぞれ1,2より,中心C1(0,0),C2(2,0)を1:2の比に外分する点P(−2,0)から円x2+y2=1に引いた接線を求めればよい.
接線はy軸に平行ではないから傾きをmとすると,y=m(x+2).
この直線と円x2+y2=1の中心C1(0,0)との距離が円の半径1に等しければよいから,
   
これを解いて .
   
以上より共通接線は,
   

Y.二次曲線の共通接線

 放物線,円どちらもその共通接線は,2つの共通接線の交点から2つの曲線のうちの1つを選び,その曲線に引いた接線であることが分かる(曲線外の点から曲線に引いた接線).
 視点を変えると,曲線外の1点Pから曲線に接線を引き,その接線に沿って,曲線を拡大,縮小すると,もう一つの曲線が得られると解釈すればよい.すなわち,点Pは2つの曲線の相似の中心ということである.
 その相似比は,2曲線の対応する2点と相似の中心との距離の比である.
 円の場合は,中心をその対応点としてその比を求めればよい.放物線の場合は,頂点との比を考えるが,2次曲線とみればもちろん焦点の比を考えてもよいことになる.
 したがって,その相似比と,放物線のグラフの開きや円の半径との関係が分かれば,開きや半径から相似の中心が求められることになる.このことを考えてみよう.
   f(x,y)=ax2+by2+cx+dy+e (a2+b2≠0)
とする.
 原点を相似の中心とし,2次曲線f(x,y)=0をm:nの比に拡縮した軌跡の方程式を求める.
 原点Oと,2次曲線f(x,y)=0上の点A(x1,y1)を結ぶ線分をm:nの比に分ける点をB(X,Y)とする.
 点Aは,線分OBをm:n−mの比に分ける点であるから,
   
同様に,y1=m/n・Y.これから,
   
よって,点Bの軌跡の方程式は,
   
である.
 2つの二次曲線f(x,y)=0,g(x,y)=0の原点を相似の中心とする相似比が,図形上のどんな性質に反映されるか調べる.
 例えば,a=b≠0のとき,2次曲線は円を表す.相似比は,その拡縮から2円の半径比に等しいことは明らかであろう.
 同様に,楕円(ab>0,ab≠0)のときは,長軸の長さの比,双曲線(ab<0)のときは,主軸の長さの比が相似比になることを利用すればよい.
 b=0,d≠0のとき,2次曲線は軸がy軸に平行である放物線を表す.
 放物線のグラフの開きの比を求めると,
   
である.したがって,放物線のグラフの開きの逆比が相似比に等しいことになる.
 このことは,放物線y=ax2を原点を相似の中心としてm倍した点の軌跡(X,Y)を考えると分かり易い.
   X=mx,Y=my
より,Y/m=a(X/m)2から,Y=1/m・ax2
すなわち,m>1のとき,グラフ全体が拡大すると,その開きは1/m倍されることにより小さくなるのである.
しかし,これを二次曲線とみて,標準形(x−β)2=4p(y−α)で考え,4pの比を求めると,
   
である.これは,a=0,c≠0の場合の標準形(y−β)2=4p(x−α)でも同じ結論が得られる.
 放物線も二次曲線とみて,共通接線を求めたほうが見通しがよいということになる.