無限等比級数の収束を見る

札幌藻岩高等学校 中村文則
 初項、公比の無限等比級数は正方形の面積を利用することで図のように1に収束することを見ることができます。同様に、収束する無限等比数列の和を三角形を分割した面積の和とみて視覚的に表現することを考えて見ましょう。

 

(1) 公比の無限等比級数
   
△ABCにおいて、BCの中点をM1とすると、
   
△ABM1において、ABの中点をM2とすると、
   
以下同様に、右図のように中点をとっていくと、
   
   

(2) 公比の無限等比級数
   
三角形ABCの重心をG1とすると、
   
次に△G1BCの重心をG2とすると、
   
以下同様に、中線AM上に重心をとっていくと、
   
   

(3) 公比の無限等比級数
   
三角形ABCの各辺AB,BC,CAの中点をそれぞれP1,Q1,R1とします。
   
△P1BQ1の各辺P1B,BQ1,Q1P1の中点をそれぞれP2,Q2,R2とすると、
   
となります。
以下同様にPn,Qn,Rnをとっていくと、
   
よって、
   
ここで、
   Tn=四角形Pn-1PnQnQn-1の面積 (n∈N,A=P0,C=Q0
とおくと、
   Tn:△PnQnRn=3:1
   ∴ 

(4) 公比の無限等比級数
   
三角形ABCの辺AB,CB上にそれぞれ、となる点P1,Q1をとり、さらに辺CB上に、Q1B=Q1B1なる点B1をとると、
   △P1Q1B1=△P1BQ1=r△ABC=r
 次に△P1BQ1の辺P1B,Q1B上にそれぞれ、となる点P2,Q2をとり、辺BQ1上に、Q2B=Q2B2なる点B2をとると、
  △P2Q2B2=△P2BQ2=r△P1BQ1=r2
 以下、同様に△PnQnBnを作ると、
   △PnQnBn=rn
よって、
   
となります。
 ここで、
   △Pn-1BQn-1:△PnQnBn=1:r  (n∈N,A=P0,C=Q0
ですから、
   Tn=四角形Pn-1PnQnQn-1の面積
とおくと、
   Tn:△PnQnBn=1-r:r
 よって、
   
(1),(2),(3),(4)より、公比について、無限等比数列の和を見ることができました。

(5) 公比の無限等比級数
   
 三角形ABCにおいて、辺BCの中点をM1とすると、
   
 よって
   
次に辺ABの中点をP1とすると、
   
さらに辺BM1の中点をM2とすると、
   
以下同様の操作を続けていくと、
   
ここで、
   Tn=四角形Pn-1PnMnMn-1の面積
とおくと、
   Tn:△Mn-1Pn-1Mn=3:2
ですから、
   

(6) 公比r(-1<r<0)の無限等比級数

   S=1+r+r2+r3+・・・
   R=-s(0<s<1)
とすると、
   S=1-s+s2-s3+s4+・・・
三角形ABCにおいて、辺BCをs:1-sの比に内分する点をP1とすると、
   △P1AB=s,△P1CA=1-s
辺BAをs:1-sの比に内分する点をQ1とすると、
   △P1Q1B=s△P1AB=s2
辺BP1をs:1-sの比に内分する点をP2とすると、
   △P1Q1P2=(1-s)P1Q1B=(1-s)s2=s2-s3
以下同様の操作を続けていくと、
   △Pn-1Qn-1Pn=s2n-2-s2n-1(P0=C,Q0=A,n∈N)
 またTn=四角形Qn-1QnPnPn-1の面積とおくと、
   Tn:△Pn-1Qn-1Pn=1+s:1
   
    したがって
   

(7) 公比r(-1<r<1)の無限等比級数

(1)〜(6)までで、公比の場合についてその収束をみることができました。
さらに、(4)の無限等比級数の証明はである実数rについても成立するのは明らかですから(6)とあわせて、および、で無限等比級数はその収束を三角形の面積として見ることができます。
では、なる実数rを公比とする場合はどうかというと、無限等比数列の和はで与えられ、
   
となりますから、面積1の三角形を分割して表現することは難しくなります。
 そこで、座標平面上の直線を利用することで、三角形の面積を切り出すことを考えてみましょう。
 等比数列の公比をr(0<r<1)とし、直線
   y=(r-1)x+1
を考えます。この直線とx軸との交点は、
   
ですから、直線の傾きr-1から無限等比級数の収束、発散が分かります。
ここで、xに順次、
   1,r+1,r2+r+1,r3+r2+r+1,・・・
を代入すると、
  r,r2,r3,r4,・・・
これから右図のように正方形を作っていくと、等比数列の無限個の和を見ることができます。
 次に、直線y=(r-1)x+1をy軸方向に2倍に拡大した直線
   y=2(r-1)x+2
を考えてみます。
このとき、に対応した直線上の点Qnは、となります。
したがって、
   Sn=△Qn-1Pn-1Qnの面積,Tn=Pn-1QnPnの面積 (P0=0,Q0=A)
とすると
   
   
 これから
   
となります。また、
   
極限は線分の長さと、三角形の面積の両方でみることができます。
 以上より、公比0<r<1の場合もその収束を三角形の面積として表現できますから、-1<r<1のすべての収束が目で見ることができるようになりました。