平成10年度2年生の「数学B」を3年ぶりに担当して4か月経ちました。
新学期は「第1章 ベクトル」から授業を開始。ベクトルの「内積の定義」が,生徒にとっては難しく感じられ「定義」がスーッと頭に入っていかないようでした。
生徒にとって「内積の定義」をわかりやすく導入するには,どうしたらよいかその方法を考えてみました。来年(平成11年)度の「数学B」の教科書を10冊参考にしました。
2つのベクトル,に対して をとの内積といい記号でと書く。
内積の定義 ,のとき |
これを内積の定義とする導入方法は,唐突な感じをうけ生徒にとってチンプンカンプンと思われる。・・・以下次のように続く。
・ベクトルのなす角
でない2つのベクトル,に対して1点Oを定め,,である点A,Bをとる。このとき∠AOBの大きさθを,のなす角という。ただし,0°≦θ≦180°
でない2つのベクトル,に対し,2点A(a1,a2),B(b1,b2)をとれば,,である。
,のなす角が0°≦θ≦180°のとき△OABに余弦定理を適用すると
AB2=OA2+OB2−2OA×OB cosθ
(b1−a1)2+(b2−a2)2=(a12+a22)+(b12+b22)−2OA・OBcosθ
−2(a1b1+a2b2)=−2OA・OBcosθ
ここで ,OA=,OB=である。
ベクトルの内積 とのなす角をθとすると |
でない2つのベクトル,に対して1点Oを定め,,とする。
このとき∠AOB=θを ,のなす角という。ただし0°≦θ≦180°
このときを,との内積といい,記号で表す。
内積の定義 とのなす角をθとすると |
・内積の成分表示
でない2つのベクトル,を,とし,原点Oを始点として,,である点A,Bをとる。
,のなす角をθとすると
△OABに余弦定理を用いると AB2=OA2+OB2−2OA×OB cosθ
ゆえに
この等式はまたはのときも成立。
内積と成分 とのなす角をθとすると |
余弦定理からへと進む。
でない2つのベクトル,に対して,点Oを定め,であるように点A,Bをとる。
このとき∠AOBの大きさθを,のなす角という。ただし 0°≦θ≦180°とする。
△OABにおいては,余弦定理により BA2=OA2+OB2−2OA×OB cosθ
・・・ @
これは θが0°または180°のときも成り立つ。
このように,2つのベクトル,に対して を考えることは図形的にも意味がある。 を,との内積といい 記号でと表す。
ベクトルの内積 定義1. 定義2.,のとき |
をの上への正射影として扱う。
2つのベクトルについて,加法・減法以外の演算を考えてみよう。
でない2つのベクトル,について1点Oを定めて,とするとき∠AOB=θを,のなす角という。ただし 0°≦θ≦180°
このとき をとの内積といい と表す。
内積の定義 |
内積の定義から内積と成分へは,導入その2と同様な形式で進む。
,のとき |
は を表す記号であることを力説してイメージとして2辺きょう角がうかぶようにさせる。
は,との内積である。記号でと表す。 |
は,平行四辺形の面積である。面積は記号でSと表す。 |
スカラー積のことを,内積(inner product)という。
スカラー積の代数的表示 , のとき |
実数実数=実数, 複素数複素数=複素数 であるが,ベクトルのスカラー積は ベクトルにならないので,スカラー積はふつうの意味の積ではない。
しかし,ふつうの積に似た性質(1)(2)(3)があるため,便宜上積とよぶ。
交換法則 (1)
分配法則 (2)
結合法則 ただしαは実数 (3)
2つのベクトル,によってつくられる平行四辺形の面積を,この面に直角の方向をもったベクトル,のベクトル積といい,で表す。
ベクトル積のことを外積(outer product)という。
べクトル積の大きさは,2つのベクトルのなす角がθのとき
とする。ただし,その向きはからへ180°の角度でまわるとき右ねじの進む向きとする。