関数についての概念は、自然や社会における現象の中で、いくつかの関連して変化する量の間の法則性に着目することから形成されてきた。
概念の歴史
関数(function)の語を用い始めたのはLeibnitzである。彼はこの語を明確に定義はしなかったが、0や1のような定数に対し、変動する量(変量または変数)xを考え、変数xとともに変動する変数(例 x2、logx、sin x など)をxの函数と呼び、xの関数を一般的に表す記号として f(x),φ(x)などを用いた。
Eulerは函数を定義して“変数と定数から組み立てられた解析的な式”といっている。(1748年)
Cauchyは“多くの変数の間に或る関係があり、そのうちの1つの値とともに他のものの値が定まるときは、通常その1つの変数によって他のものを表して考える。そのとき、この1つのものを独立変数と呼び、他のものはその函数であるという。”と述べている。(1823年)
Dirichletは“yが全区間において同一の法則に従ってxに関係することを要しないのみならず、その関係が数学的算法に表される必要もない”といい、函数は結局対応に他ならないことを明らかにした。今日、函数は対応の別名と考えられている。(以上、岩波数学辞典)
関数の数学的な定義
2つの集合M,Nがあって、Mの任意の元xに対してNの1つの元yが確定するとき、このxからyへの対応の規則fをMからNへの写像あるいは関数といって、
f; x∈M → y=f(x)∈N
あるいは
f; M → N
と表す。
このとき、Mを関数fの定義域、Nをfの値域という。また、xを独立変数、yを従属変数という。x、yは数でなくても、数の組、ベクトル、その他何らかの集合の元であればよい。
関数には
@ 連続的変数による関数
A 離散的変数による関数
があるが、集合から集合への写像という点では同じである。関数とはきわめて広い内容をもった概念であり、対応、写像、変換、操作という名で置き換えられる豊富な内容をもっている。最初に“関数とは何か”を述べるときに、関数のさまざまな意味の拡張に適応できるような形でまとめておかなければならない。関数fのもつ働きや、対応のさせ方が容易に思い浮かべられるようなシェーマを工夫することが必要である。
このようなシェーマとして適当と考えられるのがブラック・ボックス(暗箱)である。ブラック・ボックスは、内部のからくりがどうなっているかは別問題として、とにかく何らかの仕掛けによって一定の操作を行う装置である。入ってくるもの(入力)に加工を施したもの(出力)を外部に送り出す働きをもっている。ブラック・ボックスはノイマンが好んで用いたシェーマで、彼はオートマンの理論展開でしばしばこれを利用している。
ブラック・ボックスと関数
右の図の意味は入力xがfの操作を経て出力がyとなって出てきたということである。これを式では y=f(x) と書ける。f(x)の( )は入力の入り口と考えることができる。
関数の和の例として
f(x)=3x2,g(x)=48x のとき f(x)+g(x)=3x2+48x 等となる。
逆関数f−1は、もとの関数fと逆の操作を行う関数であるから、これはブラック・ボックスの入力と出力を逆転して考えればよい。普通の装置では一般に可逆でないが、思考の上では逆転して考えることができる。
合成関数は2つのブラック・ボックスを直列につなぐとよい。fの出力がgの入力になっている場合には、2つのブラック・ボックスf、gを1つのまとまったブラック・ボックスとみればこの新しいブラック・ボックスがfとgの合成となる。