−「ホームページ作りはホントに簡単だった」の巻−

北海道苫小牧東高等学校  矢 嶋 裕 之

はじめに

 2学期の最初の日、「室蘭工業大学でインターネットの研修があるけど行くかい」といわれて、高額な受講料に「行きたいけど受講料がちょっと高くない?」と返事をした私。研修部が学校側とうまく話をつけてくれて大変幸いなことに経費学校負担で出張させてもらえた。インターネットの研修は過去に数回受けているが、たいていは多くの機能の説明やデモンストレーション中心で、よくて会場に数台置かれたパソコンでの体験がせいぜいだった。したがって、インターネットでのホームページが簡単に作れるらしいことは知っていたが、自分で作ったことがなく、今回の室工大で一人一人を占有しての実習付きの研修は、私としては大変魅力的であった。

 本稿は、その研修体験記を中心にまとめたものである。今回の研修を通し、プロバイダーに加入していなくてもインターネットの開設時に使うホームページ作りは実習できることも確かめられ、今後の生徒の実習範囲も大幅に広がったように思える。現実的にはいつの時点から本校でもインターネットの利用ができるかわからないが、教える側の研鑽はさらに進めておきたいと考える次第である。

第1章 「室蘭工業大学 高度技術研修」講義ノートより

 今回の室工大での研修ではインターネットだけに限らず、関連するイントラネット関係の講義や講演などもあったが、本稿ではインターネットに関する基礎知識部分とホームページ作成に関する基本部分だけを扱うことにした。本章はその講義ノートである。

第1講 インターネット利用の基礎(情報工学科 杉岡一郎 教授)

1.インターネットの歴史の概要

1.1 海外におけるコンピュータネットワークの歴史

(1)ARPANET(Advanced Research Project Agency NETwork)(1969年)

(2)BITNET(Because It's Time NETwork)(1981年)

(3)NSFNET(National Science Foundation NETwork:全米科学財団)(1984年)

1.2 我が国におけるコンピュータネットワークの歴史

(1)N1ネット(1981年)

(2)JUNET(1984年)

(3)学術情報センターネットワーク(1987年)

2 インターネットの利用

2.1 インターネットとパソコン通信との区別

2.2 インターネット利用の日向の部分

2.3 インターネット利用の日陰の部分

2.4インターネットの使い道

2.5 WWWの利用

プロバイダの種類は次の通りである。

@一次プロバイダ
Wide Projectが管理しているコンピュータに接続している大手プロバイダ
  <特徴>・通信速度が速い
      ・通信回線容量が多い
      ・料金が比較的高い
A二次プロバイダ
一次プロバイダに接続している中小のプロバイダ
  <特徴>・通信速度は千差万別
      ・通信回線容量と繋がり易さもまちまちなので注意する必要あり
      ・料金が比較的安い

2.6 ホームページの持ち方

ホームページの持ち方にも何通りかある。

@契約したプロバイダに接続した自分のコンピュータに持つ方法
  ⇒事実上不可能
A契約したプロバイダのコンピュータの中に持つ方法(共有サーバ方式)
  ⇒プロバイダのホームページから自分のホームページに分岐する形態になる
Bプロバイダからコンピュータを借りて、そこにホームページを作る方法(専用サーバ方式
  ⇒ユーザのホームページに直接リンクする形態になる
Cユーザのコンピュータを預かり、管理してホームページを作らせるプロバイダもある

第2講 WWW利用技術(前編) (情報工学科  田中和之 助教授)

1 WWWの歴史としくみ

<キーワード>

2 HTMLの基本文法

<例1>単に「HELLO」と一行表示するだけ。
ファイル名:mypage0.html

<HTML>
<BODY>Hello</BODY>
</HTML>

<例2>上の例にNetscapeの画面の一番上にタイトル「My Home Page 1」をつける
ファイル名:mypage1.html

<HTML>
<TITLE>My Home Page2</TITLE>
<BODY>Hello</BODY>
</HTML>

<例3>改行・段落分けなど
ファイル名:mypage2.html

<HTML>
<TITLE>My Home Page 1</TITLE>
<BODY>Hello.<P>
This is my home page.<BR>
How are you?<P>
if you read this page,would you please reply me?</BODY>
</HTML>

【解説】

<例4>文字の大きさ各種
ファイル名:mypage3.html

<HTML>
<TITLE>My Home Page 3</TITLE>
<BODY>
<H1>Muroran Institute of Technology</H1>
<H2>Muroran Institute of Technology</H2>
<H3>Muroran Institute of Technology</H3>
<H4>Muroran Institute of Technology</H4>
<H5>Muroran Institute of Technology</H5>
<H6>Muroran Institute of Technology</H6>
</BODY>
</HTML>

【解説】
・<H1>最も大きい文字
 <H4>標準状態
 <H6>最も小さい字
*<Hn>と</Hn>で囲まれた部分の前後は必ず改行される。

<例5>リンクについて
 ここでは、2つのファイルhyper1.htmlとhyper2.htmlの相互のリンクを設定するものとした。すなわち、hyper1.htmlをWWWブラウザで表示させ、キーワード「ここをクリック」部分をクリックするとhyper2.htmlが表示される。また、逆にhyper2.htmlを表示させ、キーワード「表示する」部分をクリックするとhyper1.htmlが表示されるものである。リンクについての文法は、
  <A HREF=”リンク先のページ(URL)”>キーワード</A>
である。

 ファイル名:hyper1.html

<HTML>
<TITLE>hyper1.html</TITLE>
<BODY>
<H1>ハイパーリンクのテスト</H1>
<A HREF="./hyper2.html">ここをクリック</A>すると、ファイルhyper2.htmlの内容が表示されます。
</BODY>
</HTML>

ファイル名:hyper2.html

<HTML>
<TITLE>hyper2.html</TITLE>
<BODY>
<H1>このファイルはhyper2.htmlです。</H1>
ファイルhyper1.htmlの内容を<A HREF="./hyper1.html">表示する。</A>
</BODY>
</HTML>

<例6>画像データの貼り付けについて
 行の途中に画像データを入れることができるので、「インラインイメージ(In-Line Image)」と呼ばれている。タグは下のように設定する。なお、イメージを貼り付けた時、イメージはその行の中の文字と同等の扱いとなる。つまり、イメージと文字が続いて表示される。このことにも注意が必要であろう。

<IMG SRC=”イメージファイルのURL”>

ファイル名:inline.html

<HTML>
<TITLE>inline.html</TITLE>
<BODY>
ここに<IMG SRC="./lenna256.gif">イメージを入れる。
</BODY>
</HTML>

*イメージファイルには様々なファイルフォーマット(ファイル形式)があるが、GIF形式あるいはJPEG形式が現在最も多く使われている。ちなみにGIF形式は使える色数が最大256色で、もともとパソコン通信でイメージを送るために開発された形式である。

*その他にも表の作成や音声データの入れ方などいろいろ応用的な事項もあるが、ページ数の関係もあり本稿では省略した。しかし、これらのことも使用環境さえ整っていれば簡単であることが実際の体験からわかった。

第3講 WWW利用技術(応用)  (情報工学科  堀 勝博 助手)

1 人に優しいホームページの作り方

 アクセスしやすいホームページの制作を目指すことが大切である。

◎作り方のポイントとして次の4点があげられる。

@構成の指針

●必須項目

●留意点

Aインデックス関連
●ハイパーテキスト

●インデックス

Bイメージ関連
●画像データはテキストに比べ非常にデータ量が大きいので、必要最小限に押さえることが大事
●画像データ圧縮

●画像取り込み・画像制作

C間違いのないHTMLを
 HTML文書を書くのは非常に易しいが、その分、タイプミスや記述の誤りなどが起こりやすいのも事実である。
・引用符による記述ミス
 URLを記述する際に、引用符で囲むが、その引用符を忘れたり、付けすぎると表示がおかしくなる。
(例)<A HREF="http://www.foo.co.jp/>Foo Homepage</A>
                       ↑
                  クォートがない
   <IMG SRC="foo NAME="bar">
                ↑
           クォートがない
・終了タグを間違える
 よく起こるミスとして、見出しタグにおいて、開始タグと異なるタグを書いてしまうことがあげられる。
(例)<H2>はじまり</H3>
                ↑
           終了タグが違う
また、終了タグのスラッシュ(/)を忘れてしまう場合もある。
(例)<PRE>
   これは整形テキストです。
   <PRE>
    ↑
   スラッシュがない
・タグの入れ子のミス
 タグを入れ子にした場合、終了タグの位置を間違えると表示がおかしくなる。また、アンカータグ(<A>)のように入れ子にしてはいけないタグを入れ子にしたりするミスもある。
(例)<STRONG>This is <EM>WRONG</STRONG>text</EM>                             ↑       ↑
                           入れ子ミス
   <A HREF="/">This is <A HREF="~yaj/">Yaj</A>'s homepage</A>
               ↑             ↑
             終了タグの位置が違う    終了タグの位置が違う
・その他
 その他、ブラウザによっては、段落タグの取り扱いが期待通りにならない場合があるなど、いろいろな誤記入の例について説明があったが、本稿では上記基本的なもののみの説明で終了したい。

2 マルチメディア技術
ヘルパーアプリケーションとプラグイン
@ヘルパーアプリケーション=ブラウザ外部
Aプラグイン       =ブラウザ内部
  ⇒代表的Netscapeプラグイン
    ・QuickTime
    ・MIDPLUG
    ・ShockWave
    ・Live3D
 これらの事項についてもていねいな説明があったが、内容的にはかなり高度な内容を含むため、本稿では見出し程度にとどめておくこととする。

第2章 ホームページ作成体験の感想について

 大切ではあるもののやや内容が多めな講義が続いた2日目午後、待望の実習となった。私が最初に作ったのは、第1章の第2講の中で例示のあった例1〜例6迄の基本例であったが、これはすぐに終わってしまった。実はこれらの例に限らず、HTMLの文法に従って記述していくことは非常に簡単なのだが、その入り口となるUNIXによるエディタの起動や保存の仕方などの部分がいつも使っている機械ではないのでやや手こずってしまった。何度も何度も間違え、その都度アシスタントで補助してくれた院生や学部生の人に助けてもらうのは何とも恥ずかしかった(でも、教員になって以来大型計算機を使って仕事をすることは皆無になってしまったから仕方のないことか・・・)。加えて、自分でインターネットを使っていないせいもあり、Netscape Navigatorの操作法もすぐには修得できず、日頃からインターネットを使っている方がスイスイと進めていく横で悪戦苦闘していた私でした。基本例を終えてもかなり時間があったので、HTMLの文法書に従ってどんどんと作っていったが、時間がなおも余るので後半はホームページ作りから離れてインターネットに入って(と言っても覗くだけだが)いろいろな所のホームページを見たり、山梨大学に代表される教育におけるインターネットの利用実践の進めているところの論文などを見ていた。こうした利用を通して、研究を進めて行くためにはインターネットは大変便利な道具であることが実感できたのも今回の一つの収穫のように思えます。

 このようにして初めてホームページ作成を体験しましたが、ホントに簡単でした。しかし、作り方が簡単な分だけ実はホームページの見た目の評価は材料になる画像の鮮明度や見やすい構造といった点にあることもよく実感できました。極論すると作成するときに使う素材次第でホームページの見栄えが決まると言ってもよいように思います。

おわりに

 学校祭の後片付けの終了後、それまでの半月あまりなかなか落ち着いてワープロに向かえなかったことの反動のように一気にこの原稿を書き上げてしまった。本当は室工大で研修を受けていた時点から書き出せばよかったのだろうが、現実には研修中は時間さえあればインターネットを使ってあちこちにアクセスし、たくさんの情報をながめることに専念していたため、原稿をまとめる余裕まではなかった。ただ、そうした「遊び」のなかで山梨大学にいる友人が講師から助教授に昇任していたことやNTTが進めている「コネットプラン」についての実践報告がどこにあるかもわかり、これからの研究には大いに役立った。国立大学で自由にインターネットが使えることは「大学」だから当然といえば当然だが、情報教育の研究を進めている私にとってはうらやましい限りであった。

 本稿は一気に書き上げたためもあり第1章がページ数全体のほとんどを占め、レポートの構成の仕方としては全く落第なものとなってしまった。第2章をカットして第1章の内容だけを小分けにした方が良かったような気もするが、やや多忙な時期ゆえご勘弁願いたい。なお、本稿は8月21日〜23日の室蘭工業大学における「平成8年度 高度技術研修」のうち、インターネットの基礎部分だけでまとめたものだが、今後は過去に受けたインターネット関係の研修のノートも参考にしてホームページのインタラクティブ化に関するものなど本稿で割愛した部分も加えてまとめてみたいと思っている。加えて、本校でもインターネットが利用できる状況が出てきた際には、数学の授業でのインターネットの利用についても模索してみたいと考えている。数学におけるインターネットの利用については、すでに実践されている方もおられると思うので、体験談などをお聞かせ願えれば大変幸いである。

1996.9.4 pm9:30 自宅書斎にて

【参考文献】
・入門HTMLホームページ作りのすすめ (富田憲範 著) ジャストシステム社
・平成8年度 室蘭工業大学 高度技術研修 講義用各種プリント