方程式s・f(x,y)+t・g(x,y)=0の表す図形

愛知県立高浜高校  山崎 博司

1.f(x,y)=0,g(x,y)=0がともに直線の場合

  l1:f(x,y)=a1x+b1y+c1=0
  l2:g(x,y)=a2x+b2y+c2=0
に対して
  l:s・f(x,y)+t・g(x,y)=0
を考える。ただし、s+t≠0とする。

  1. f(x,y)=0,g(x,y)=0が交わる2直線の場合

    lは、l1とl2の交点をとおる直線を表し、その方向は次のようになっている。
      l1,l2,lの法線ベクトルをそれぞれ,,とすると
      =s+t
    である。

    [具体例1−(1)]
       l1:f(x,y)=2x-y-1=0
       l2:g(x,y)=x+y-1=0
     に対して
       l:f(x,y)+k・g(x,y)=0
     を図示する。

  2. f(x,y)=0,g(x,y)=0が平行な2直線の場合

     lはl1,l2に平行な直線を表し、a1=a2,b1=b2としておけば2直線l1,l2からの距離の比がt:sになるような位置にある。

    [具体例1−(2)]
       l1:f(x,y)=2x-y-1=0
       l2:g(x,y)=2x-y+2=0
     に対して
       l:f(x,y)+k・g(x,y)=0
     を図示する。

2.f(x,y)=0,g(x,y)=0がともに円の場合

  C1:f(x,y)=(x-a1)2+(y-b1)2-r12=0
  C2:g(x,y)= (x-a2)2+(y-b2)2-r22=0
に対して
  C:s・f(x,y)+t・g(x,y)=0
を考える。

  1. f(x,y)=0,g(x,y)=0が交わる2円の場合

    s+t≠0のとき

    Cは、2つの円C1,C2の交点をとおる円であり、その中心は次のようになっている。
    2つの円C1,C2の中心をそれぞれF,Gとすると、円Cの中心は、線分FGをt:sに分ける点になっている。
    (∵)Cを式変形すれば
      
    が得られる。
     だからCの表す図形は線分FGをt:sに分ける点を中心とする円、1点、虚円t(表す図形なし)のいずれかである。一方2つの円 C1,C2の交点をとおることから少なくとも2つの点をとおる。よって円を表す。

    s+t=0のとき

     Cは、2つの円の交点をとおる直線を表すが、(-1):1に分ける点を線分FG上の無限遠点と考えれば、半径が無限に大きい円の一部が見えているとみなすこともできる。
     そうすると、s,tの値によって場合分けせず、統一的に考えることができる。
     Cは、2つの円C1,C2の交点をとおる円であり、)その中心は線分FGをt:sに分ける点である。ただし、2つの円C1,C2の中心をそれぞれF,Gとする。

    [具体例2−(1)]
       C1:f(x,y)=x2+y2-4=0
       C2:g(x,y)=(x-3)2+y2-3=0
     に対して
       C:f(x,y)+k・g(x,y)=0
     を考える。

  2. f(x,y)=0,g(x,y)=0が接する2円の場合

     (1)より、次のようになることは明らかであろう。
     Cはもとの2円C1,C2の接点をとおる円を表し、その中心は(1)と同様である。
     とくにCの中心がC1,C2の接点と一致してしまうとき、Cは1点(半径ゼロの円)になる。またs+t=0のとき、直線(無限に大きい半径をもつ円)になる。

    [具体例2−(2)-a](外接)
       C1:f(x,y)=(x+1)2+y2-4=0
       C2:g(x,y)=(x-2)2+y2-1=0
     に対して
       C:f(x,y)+k・g(x,y)=0
     を考える。

    [具体例2−(2)-b](内接)
       C1:f(x,y)=(x2+y2-4=0
       C2:g(x,y)=(x-1)2+y2-1=0
     に対して
       C:f(x,y)+k・g(x,y)=0
     を考える。

  3. f(x,y)=0,g(x,y)=0が共有点をもたない2円の場合
     (ただし同心円の場合はのぞく)

     まず次の具体例を観察してみる。
    [具体例2−(3)]
       C1:f(x,y)=x2+y2-4=0
       C2:g(x,y)=(x-4)2+y2-3=0
     に対して
       C:f(x,y)+k・g(x,y)=0
     を考える。

    観察されること

 なぜこのような振る舞いをするのか、以下2通りの説明を示す。

[説明1]球面の切り口とみなす方法
 (岐阜県加納高校の前田仁先生に教えていただいたアイデアです)

上の[具体例2−(3)]の場合を例にとって説明する。
2つの円C1,C2に対して、交わる2つの球面
  S1:F(x,y)=x2+y2+z2-8=0
  S2:G(x,y)=(x-4)2+y2+z2-7=0
および
  S:F(x,y)+k・G(x,y)=0
を考える。
 すると、2−(1)で述べたことと同様のことがS1,S2, Sについても成り立つことは明らかであろう。
 だから
 Sは2つの球面S1,S2の共有部分をとおる球面であり、その中心は線分FGをk:1に分ける点である。ただし、2つの球面S1,S2の中心をそれぞれF,Gとする。

 さてこれら3つの球面S1,S2, Sの平面z=2による切り口を考えると、それぞれの切り口がちょうどC1,C2,Cに対応している。(S1,S2,Sにz=2を代入するとそれぞれ C1,C2,Cになる。)  したがって、kの値の変化によって球面SはS2,S2の共有部分を含みながら変化し、それにつれて平面z=2と交わったり、接したり、離れたりする。
 これらがそれぞれCが円である場合、1点である場合、表す図形なしである場合に対応している。

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[説明2]複素数で考える

 上の[具体例2−(3)]の場合を例にとって説明する。
 2つの円の方程式
  C1:f(x,y)=x2+y2-4=0
  C2:g(x,y)=(x-4)2+y2-3=0
および
  C:f(x,y)+k・g(x,y)=0
において変数x,yを次のように複素数におきかえる。
  x→x+x'i,y→y+y'i (x,x',y,y'は実数、iは虚数単位)
 C1,C2を連立方程式として解くと、解として
  
を得る。これが「共有点」であり、Cはこれらの共有点を通る。
 4次元では図示が困難なので、「x'=0における切り口」(3次元)のグラフを考える。
  x→x, y→y+y'i
をC1に代入すると
  x2+y2-y'2+2yy'i=4
虚部をみればy=0またはy'=0であり
  y'=0のとき、x2+y2=4 (つまり実数平面上では円)
  y=0のとき、x2-y'2=4 (つまりxy'平面上では双曲線)
同様にして、C2
  y'=0のとき、(x-4)2+y2=3 (つまり実数平面上では円)
  y=0のとき、(x-4)2-y'2=3 (つまりxy'平面上では双曲線)
となる。

 さて、Cについても同様に計算すると
  y'=0のとき、
  y=0のとき)、
ここで右辺の
  
は定数kの値によって、正・0・負と変化する。それにともなってCのグラフは、
 実数平面上(y'=0)では、円・1点・表す図形なしと変化し
 xy'平面上(y=0)では、双曲線・2直線・逆向きの双曲線
と変化する。

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(以上の内容は、1998年8月の日数教山口大会で発表したものです。)