平成13年度入学生における3カ年間の取り組み

数学科  平澤 淳一

はじめに

 この3年間、宮澤先生と一緒に平成13年度入学生の担任を持ってきました。数学科として教科指導では、他学年の先生方の協力もありましたが、宮澤・平澤の2人が中心となって3年間継続して教科指導を行ってきました。3年間の教科指導・進路指導の実践を各種データを用いてまとめてみたいと思います。

1.平成13年度入学生徒概要

 まず、入学試験における数学の平均点を比較してみました。入試(60点満点)での南陵高校受検者の平均点と全道平均を表にしてみると下記のようになります。

数学平均点 南陵平均 全道平均
12年度 26.6 29.8
13年度(現3年) 26.4 30
14年度(現2年) 20.3 25.2
15年度(現1年) 24.5 30.3

 本校受検生においては、例年全道平均(全日制全体)に比べ5点ほどの格差が生じています。平成13年度入学生においても同様のことが言えると思います。ほぼ例年通りのレベルの生徒が入ってきましたが、最高点49点・最低点2点ということで能力の差は大きいと考えられました。

2.本校の数学科教育課程について

 平成13年度入学生の教育課程(旧課程)は表のようになっています。

※○は選択科目
科目名 標準 1年 2年 3年
単位 (文) (理) (文) (理)
数学T 4 4       2
数学U 3   3 4    
数学V 3         4
数学A 2 1     A  
数学B 2     2    
数学C 2         A

 1年生は数学Tと数学Aを合わせて5単位自然学級。2年文型は3単位自然学級。3年文型は「文a・文b」の選択2単位で、2・3年理型の授業に関しては「習熟度別展開授業」ということで、2年次は2クラス2展開、3年次は2クラス3展開で行ってきました。

3.1,2年次の状況

 1年次では「数学A」が標準単位より少ないということで例年次年度以降に積み残しています。この学年は「数学A・数列」を3年次の最初に行うということを決めました。9クラスを5人の教科担任で担当するという体制でしたが、まめに連携をとりながらできました。
 2年次文型は、標準単位ですが最後の「積分法」に十分時間を当てることができなかったのが反省点です。 理型は2クラス2展開で行ってきました。途中で若干の入れ替えがあり、10月には平岸高校にて北数教全道大会の研究授業などもあり忙しい一年でした。反省としては「数学B・確率分布」を1年次の確率と絡めて数時間行いましたが、センター試験で選択できるほどのレベルではなかったため(平均や分散の内容をやらなかった)若干中途半端だったかもしれないと思いました。

4.今年度の授業内容(理型)

 2年次は2展開でしたが、3年では3展開でした。そして「数学V(4単位)」と「数学T(2単位)」を分離させるということを行い、3クラスの母集団は変わらないものの教科担任を変えて、生徒側に「複数の教員に数学を担当してもらう」という体制をとりました。3人の中に再任用の丸山先生が入っていることと、宮澤・平澤の2人が、金曜日の文型選択授業(文a・文b)を担当していることがあり、教務部には時間割の面でかなりのご迷惑をかけました。この場を借りてお詫びいたします。

5.今年度の授業内容(文型)

 例年、金曜日の文型選択授業ということで「数学T・A」の問題集で演習中心の授業を行っていました。今年度においては、まず1年次に残してしまった「数学A・数列」の授業を行い、その後問題演習に移るという計画を立てました。
 しかし、文型の生徒に「数列」という題材を2時間続けるということはなかなか大変であったため、途中から「数列1時間・演習1時間」のパターンに変更しました。
 6月の前期中間考査は「数列60点・演習40点」での試験を行いました。その後は2時間問題演習を続けていき、後期中間考査(12月)以降の授業は、ドリルのような形で、分数小数の計算に始まり式の計算・方程式などの計算プリントに取り組む授業を行いました。生徒の反応は思っていたよりも良く、基本的に熱心に取り組んでいました。なお、毎回プリントの提出を求め、その代わり学年末考査は行いませんでした。

6.新課程についての課題

 平成15年度入学生(現1年生)以降については、新課程ということで下の表のようになっています。

※○は選択科目
科目名 標準単位 1年 2年 3年
(文) (理)
数学T 3 3      
数学U 4   4    
数学V 3       3
数学A 2 2      
数学B 2   1 2 2
数学C 2       A

 本校における数学科カリキュラムの旧課程との大きな違いは、

  1. 2年生での全員5単位必修
  2. 3年生での全員必修(文2、理5〜7単位)

 この2点が旧課程に比べて大きく異なっています。これから教科指導を進めていく上で、現時点の課題として

  1. 2年次「数学B」で標準単位より少ない分について進め方をどうするか?(次年度への持ち越しを考慮)
  2. 文型2単位の授業内容。(2年次にできなかった分野をやるのか、問題演習にするのか?)

 こればかりは生徒の実態に沿って検討しながら進めていくしかないのではないかと思います。
 平成18年度センター試験からは、「数学T・A」の試験において選択問題が姿を消します。すなわち「数学T・数学A」の教科書の全範囲から出題されるわけですが、「数学A」にある中学から移行されてきた幾何分野(証明問題)がどのような形で出題されるのか予想が難しいのが現状です。

7.講習における3年間の歩み

(1)1年次の平常講習
 前期平常講習では、30人前後の人数でクラスを分けて行っていましたが、後期平常講習からは約60人を一クラスに集め、宮澤・平澤がTTで講習を行いました。場所は旧講義室(現保健室)で2階の廊下や進路室から見えるところだったので、その光景を見かけた先生方は「集中して頑張ってるな」という印象を持たれたそうです。

(2)2年次の平常講習
 2年次も引き続き講習希望者を一クラスに集め、TTで行いました。理型と文型で「数学U」の単位数が違うため、進度の差が出ていました。ゆえに「数学U」を講習で扱う時にはなかなか厳しいものがありました。「数学B」については文型で履修していないため、センター試験で不可欠な科目でありますが、講習では扱わず、基礎科目である「数学T・数学A」を中心に行いました。夏季・冬季講習もこの形で実施しました。

(3)2年次合宿勉強会
 冬休み、JR研修センターにて2泊3日で実施しました。テキストは「センター試験対策過去問題集」(数研出版)を用いて行いました。今回は講義形式をとらず、各自にどんどん問題を解かせて、それを巡視するという形を取りました。解答集も作り、膨大な量の宿題を与え、深夜には談話室にて質問を受け付けて対応しました。生徒は寝る時間を惜しんで真剣に取り組んでいたと思います。

(4)2年終了時春季講習
 例年実施されていない講習ですが、なんとか3日間確保して実施しました。3年生のスタートダッシュとして短期間ながら生徒の意識付けはできたのではないかと思います。

(5)3年次平常講習
 3年次は、進路別に「センター数学(担当:宮澤)」「私大数学(担当:平澤)」「看護数学(担当:丸山)」と3講座が開講されました。「センター数学」では数学U・Bにも力を入れ、「私大数学」では基礎である数学T・Aに力を入れ、「看護数学」では看護受験用問題集にて1年間(夏季・冬季含む)行ってきました。人数も「センター数学」「私大数学」は約30人、「看護数学」は約10人と効率的な人数配分で行えたことも幸いでした。前期・夏季・後期・冬期と分けて募集しましたが、ほとんどの生徒は通年で同じ講習を受講していました。

(6)3年夏季合宿勉強会
 これも例年にない試みであり、学年団での企画運営で行いました。校舎改修工事の影響で、全学年の夏季講習を「NTT北海道セミナーセンタ」にて6日間行いましたが、その後半3日間の7/31〜8/2の2泊3日を「合宿勉強会」としました。夏季講習は9時から16時までの5コマ、その後夕食・入浴時間を挟みつつ4コマの特別講義を行ってきました。深夜まで自習に臨む生徒も数多くいる中、各自受験勉強に対する動機付けが十分できたのではないかと思います。

8.模擬試験の歩み

 南陵高校での模擬試験実施状況は次の通りです。 1年次:6・11・2月実施(全統模試)
2年次:6・8・11・2月実施(全統模試、2月は全統マーク模試)
3年次:マーク模試4回(センタープレ含む)、記述模試2回、私大模試2回実施(公務員・看護模試を除く)
となっています。
 1年次の模試(数学のみ)を12年度と比べて見てみると、

平成13年度 1回目 2回目 3回目
受験者数 69人 62人 52人
偏差値平均 39.7 41.6 42.9
偏差値50以上 1人 5人 6人
偏差値45〜50 9人 8人 10人

平成12年度 1回目 2回目 3回目
受験者数 104人 55人 39人
偏差値平均 42.1 44.6 44.4
偏差値50以上 12人 7人 6人
偏差値45〜50 17人 16人 13人

 単純比較はしづらいのですが、回数を重ねるにつれて徐々に偏差値の上昇が見えてきたところに期待を持ちました。
 2年次は次のようになります。(1回目〜3回目)

平成13年度 1回目 2回目 3回目
受験者数 86人 58人 43人
偏差値平均 43.1 42.4 45.7
偏差値50以上 14人 8人 13人
偏差値45〜50 14人 7人 5人

平成12年度 1回目 2回目 3回目
受験者数 47人 45人 40人
偏差値平均 46.6 46.8 46.2
偏差値50以上 12人 14人 11人
偏差値45〜50 14人 12人 10人

 第4回目となる2月の「全統高2マーク模試」では、「数学A」において「数列」をまだ履修していない状態だったため、模試では「数学T・A」ではなく「数学T」で受験するようにと指導し、同様に「数学U・B」ではなく「数学U」で受験させました。  したがって、例年と比較できませんが、表にしてみると

(※平均点、偏差値50以上は全国平均の数字です)
  受験人数 平均点 偏差値
50以上
その割合
数学T 56人 26,7 27人 48%
数学U 56人 35,4 32人 57%

 ほぼ半数の者が平均点を取り、そのほとんどは今まで講習へ積極的に参加していた者です。また「土曜講習」の影響も大きいと思います。土曜講習に関しては、昨年度の「南陵の教育」にて宮澤先生が執筆されているので、そちらを参考にしていただければと思います。
 なお、5−6型において全国偏差値が50を超えた者は全部で4人いました。その後の進路先は

(○合格、△補欠合格、×不合格)
※Cさんは岩見沢市立看護においても一次合格している
  5−6型 進路先
全国偏差値
A君 61,8 北大×、室蘭工○、北海学園○
B君 52,9 小樽商大(推薦)○、北星学園○
Cさん 52,7 国立西看護△、勤医協△
D君 52,0 公立はこだて未来○、北海学園○

 その他の者も含めて、おもな国公立合格者は

 合計13人が国公立関係に合格という結果になっています。(H16.3.22現在)

各種合格者人数(卒業生:327人) ※H16.3.22現在、大学は短大も含む
国公立大学 13人
私立大学 125人
公務員 自衛隊  12人
国家V種   1人
看護学校   8人
専門学校  98人

 なお、3年次の模擬試験については割愛します。

9.終わりに

 私事ですが、新採用でこの南陵高校にお世話になり4年間いろいろ学ばせていただきました。
 数学という教科に限っていえば、途中で教育課程が変わり、指導内容の変化があった4年間でしたが、小学校時代の基礎学力・計算能力が十分備わっていない生徒もいるなか、国公立大を始めとしてこれだけの進学者を出すことができたのも他教科・学年団の協力があったからこそだと思います。
 教育課程が替わりまだ1年ですが、「総合的な学習の時間」を始めとして、3年進級時での文理分け、また国際理解教育、朝読書と南陵高校での教育環境は年々変化しています。その中で様々な発展を目指し、数学科としてもあらゆる面でのサポートができればと思っています。