インターネット・イントラネット環境の整備

平成8年度教材開発委員会第3部会工業班
北海道滝川工業高等学校電気科  萩原 菊男

1.はじめに

 今年度の教材開発委員会第3部会工業班では、「インターネット・イントラネット環境の整備」のテーマで教材の開発を進めることとした。現状のプロバイダとの契約形態のもとで多人数の生徒の活用を考えると、校内のLANからダイアルアップによってインターネットに接続することが望まれるため、その具体的な方法の開発を行っている。

 

2.校内LANとインターネットの接続の方法

 インターネットは本来、LANなどネットワークの相互接続が基本であり、それぞれのパソコンなどに公式のIPアドレスが与えられ、校内のLANと専用通信回線を経由して接続されるのが本来の姿である。しかし、現状では専用線接続の予算措置の目途はなく、必要な時だけ接続するダイアルアップによるのが当面の接続形態である。この形態は本来1台の端末をインターネットに接続することを想定しており、LANに接続するためには工夫が必要である。それには次の2つの方法がある。

アドレス変換機能を持ったダイアルアップルータを使う

 LANにこの機能を持ったダイアルアップルータを接続することで、LANからインターネットに自動的に接続することができる。アドレス変換機能にはNAT(Network Address Translation)といわれる方法が一般的であるが、同時にインターネットにアクセスできるクライアント数が限られるなどの制約もあり、IP Masqueradeというアドレス変換方法も使われ始めている。(YAMAHA RT-102iなど)専用のダイアルアップルータでなくても、パソコンやワークステーションに適当なソフトウエアをインストールしてダイアルアップルータの機能を持たせることもできる。

プロキシー・サーバによる方法

 1台のプロキシー(代理)サーバをインターネットに接続し、LANに接続されたクライアントの代理としてインターネットにアクセスする方法である。この方法では、利用できるサービスに制約はあるが、サービスを制限することでセキュリティ対策として活用することもできる。企業などでもプロキシーサーバは外部の不当なアクセスから内部情報を保護する「ファイヤーウオール」として使われている。データのキャッシュ機能を持つものがあり、多人数の同時利用で、同じデータへのアクセスが多い場合にはレスポンスが非常に高速になる。
 プロキシーサーバのソフトウエアには、UNIX上で動作するもの、Windows 95/NT上で動作するものなどがある。滝川工業高校ではPC互換機(DOS/V機)にPC UNIXの一つであるLinuxとProxy機能を持ったWWWサーバソフトウエアであるCern3.0AインストールしてLANとインターネットとの中継を行うインターネットサーバとして使っている。室蘭工業高校ではWindows NT4.0 ServerとProxy95による組み合わせでLANとインターネットとの接続を実現している。

 

3.滝川工業高校のインターネット接続環境

 滝川工業高校のインターネット接続環境は上図のような構成である。ISDNによるダイアルアップ接続により、Proxy serverを通してインターネットプロバイダに接続している。昨年9月に導入された2セット目のパソコンシステムのIBM Aptiva 22台から同時にインターネットへのアクセスが可能である。特記すべき点として次のようなことが挙げられる。

電話回線の確保

 この時点では新たに電話回線を増設するのは困難であったため、既設の電話回線の1本をISDN回線に切り替えることにより、同時に使える2つの回線交換チャネルを生み出し、1チャネルは従来どおり校内電話の外線接続に使用し、1チャネルをデータ通信に使用している。デジタル通信で使用した料金は請求書の明細で分かるようになっている。

インターネットサーバ

 次のような機能を持ったインターネットサーバによりインターネットと第2パソコン室のLANを中継している。
    1. プロバイダーへのダイアル接続とログイン
    2. LANに接続されたパソコンの代理として、プロバイダーを通じてインターネットへのアクセスと、一度ダウンロードしたデータのキャッシュ
    3. DNSなどのTCP/IPをコントロールする機能
 インターネットサーバとして最も実績のあるオペレーティングシステムはUNIXである。現在では、パーソナルコンピュータ用のUNIXが無料または低価格で利用できるため、高価なEWSでなくても、自作のAT互換機(DOS/V機)にUNIXを導入してインターネットサーバーとして使いうことができる。正式なIPアドレスと専用線接続による24時間運用という条件が満たされれば、この自作AT互換機によるサーバから直接インターネットへの情報の発信や受信も可能である。参考までにインターネットサーバとして使っているハードウエアの仕様は次のようなものである。

CPU:

i486DX2 66MHz

マザーボード:

ASUS

Video Card:

S3-805 1MB DRAM

RAM:

16MB

HDD:

1.2GB
540MBをWindows95とDOSで使用。残りをLinuxで使用

CD-ROM:

IDE2倍速

Ethernet card:

NE2000互換

 

4.インターネットの活用

ホームページの閲覧

電子情報技術などの教科でインターネットの体験として取り扱っている。世界中のホームページは、地歴・公民や英語などの教科では教材の宝庫ではないだろうか。

ホームページの制作

滝川工業高校のホームページは、生徒の自主活動で制作した。ホームページの制作に必要なHTML(Hyper Text Markup Language)の文法、デジタルカメラやスキャナーなどの操作と、それによって取り込んだファイルの加工方法など新しい技術を雑誌や参考書、機器の説明書などにより生徒自らが学んだことは有意義な体験であろう。
 電気科の課題研究でもホームページの制作を取り扱った。それぞれJAVAなど新しい技術の取り入れたりして、内容や表現に工夫のあるものを制作していた。ホームページの制作は、研究成果の発表など表現能力の開発に有用であろう。
 大学の推薦入学に際して、工業高校で学んだ事柄についての事前に小論文の提出が求められたため、この経験を発展させてJava Scriptなどを駆使した自分のホームページを作り、そのことを小論文にして推薦入学の面接試験に臨み、合格を果たした生徒も出ている。

FTP

 インターネットからFTPによってソフトウエアをダウンロードしている生徒もいる。
 本校のホームページは東京にあるプロバイダのコンピュータにおかれている。ホームページの内容の更新は業者に依頼するのではなく、本校からFTPによる一種の遠隔操作によって行っている。

メールとニュース

 現在は学校に一つのメールアカウントしかないが、ホームページを見たという卒業生などのメールが全国から寄せられている。
 生徒によるニュースの利用は現在のところ行っていないが、将来的には全道・全国の学校などとの交流としてニュース、あるいは同じような目的に利用するメーリングリストの活用が必要であろう。

イントラネット

 インターネット技術を身につけることが求められているが、当初はメール相手を見つけるのも難しく、ネット・ニュースにしても生徒がすぐ参加できる条件があるとは言い難い。そこで、校内のネットワーク内でインターネットと同じような形で、メールの交換、ニュースの配信、ホームページの開設を行うことが考えられる。これは『イントラネット』と呼ばれている。通信料も不要で、誤った操作で外部の人に迷惑をかけることもなく自由にインターネットの理解に必要な実習を行うことができる。
 室蘭工業高校、滝川工業高校ともWindows NT Serverによるイントラネットの研究中である。滝川工業高校のLinuxによるインターネットサーバを使って、校内ホームページの開設やメールの交換も可能である。

プログラミングの学習

 Windowsの時代になってBASICなど手軽な言語によるプログラミングの指導が困難になりつつある。そこでプログラミングの指導の一つとして、インターネットのホームページを作成するHTML言語などによるプログラミングの指導も考慮の余地がある。ホームページの作成はJAVAなど技術的にも奥行きの深いものがあり言語教育の教材として有望である。また、C言語の学習環境としてはWindowsよりUNIXが向いているので、本格的にC言語の学習を志す生徒のためにEWSやPCによるUNIXの環境を整えることも必要であろう。

 

5.問題点と課題

通信料と接続料

 LANを通した利用のため高速アクセスが必要なため、札幌のアクセスポイントに接続しており、ISDNの通信料が22.5秒で10円かかり費用負担が大変である。NTTによるOCN(Open Computer Network)というサービスが始まっており、そのダイアルアップのサービスによって通信料の問題は解決の方向に向うものと考えられるが、プロバイダに対する接続料の支払いも必要で、全道的に公的な対応が望まれるところである。

メールアカウント

 現状では生徒のメールアカウントを得るためにプロバイダに依頼しなければならなず、1クラスの生徒数でも、費用は莫大なものになる。この問題は専用線接続などによって学校のサーバを24時間運用し、そのサーバの中に生徒数分のメールアカウントを作れば解決できる。最近OCNによる比較的安い料金でインターネットへの常時接続サービスが始まっている。これにより全てのインターネットサービスの運用ができることになるので、各学校においてインターネットへの常時接続の実現が望まれるところである。
 情報処理教育センターに常時接続によるインターネット接続が実現するということなので、当面のメールアカウントの解決方法として、センターサーバに必要な生徒のメールアカウントを設けることも検討すべきであろう。

 

6.マルチメディア時代の校内ネットワークを検討

 インターネット/イントラネットはパソコン教室などの一実習室内だけではなく、校内全体のLANと接続することにより更に効果的な指導が期待できる。
 校内LANでは、従来10BASE-5(イエローケーブル)による基幹ネットワークの構築が行われてきたが、データ信号速度が10 Mbit/秒の制約があり、加えて多くのトラフィックが同一伝送路上を流れるために信号の衝突が起こり易く実効的な伝送速度を大きくすることができないことから、本格的なマルチメディア対応の基幹ネットワークには適さない。また、校内ネットワークを成績処理など校務処理に利用する場合は、生徒が使う実習用のコンピュータからの不正アクセスを防止する厳重なセキュリティー対策が必要である。以上の点を念頭に、高度なマルチメディアに対応できる実用的な校内ネットワークあり方を検討した。

 

 

 

 現在、滝川工業高校は新校舎の建設工事中であり、LANについては、将来施設できるようにケーブルラック、配管などが施設されている。そこで、それらの配管等を利用して、インターネットにも接続できる次のような全校的なネットワークを検討している。