折り紙による作図

加 藤 渾 一
北海道岩見沢西高等学校

1.定規やコンパスを使ってできる作図とは

(1) 与えられた2点を通る直線を引くこと.
(2) 与えられた1点を中心に,与えられた半径の円を画くこと.

そして,(1)と(2)により描かれた直線や円から,

(3) 2直線の交点を求めること.
(4) 直線と円との交点を求めること
(5) 2つの円の交点を求めること

を有限回適用することによって,次々と点や直線や円を描き,条件に適する図形が得られるとき,この図形は定規とコンパスで作図できる,という.


2.折り紙による作図

定規を用いなければ2点を結ぶ直線は引くことができないが,イタリヤ人マスケロニーは,上述の(1)に対して「直線はその上の任意の2点で与えられる」という仮定のもとで

  Mascheroniの定理
  「定規とコンパスで可能なすべての作図はコンパスだけで求めることができる」

ことを導いている.
この手法を折り紙に適用する.

折り紙による作図では,円を画くことはできないが,(2)に対して,「円は一つの定点から与えられた長さに等しい距離にある任意の点で与えられる」という仮定のもとで
  「コンパスと定規で可能な全ての作図は折り紙で求めることができる.」
ことを示すことができる.
(1)と(3)は明らかに可能である.
(4),(5)について可能であることを示す.

(4)について
直線lと定点C,長さrが与えられたとき,点Cから距離rである点をl上に取ることが可能である.(点Cを支点として点Pが直線lに重なるように折る)


図1:直線と円の交点

(5)について
crRを正数として,二つの円CC’の方程式をそれぞれ
  (x-c)2+y2=r2  …@, (x+c)2+y2=R2  …A
とすると,この二つの円の交点のx座標は,である.この値は次のようにして求めることができる.
2点P(cR),Q(-cr)をとることができ,線分PQの垂直2等分線を折ると,x切片が求める値となる.そこで,この点でx軸の垂線lを折り,点Cを支点として距離がrである点を垂線l上にとると,この点が二つの円の交点である.

図2:2つの円の交点

従って,コンパスと定規で可能な基礎的作図は折り紙で求めることができる.