「七五三」三角形から円に内接する四角形へ

札幌東高等学校  佐藤 清

 下の三角形を七五三〈753)三角形と呼び、覚えてしまうと様々な問題解法に役に立つ。マークなら計算不要、記述式なら余弦定理の最初の式を書いてごまかす。時間短縮にはもってこいである。
 似たようなものに「名古屋」(758)三角形があり、円に内接する四角形の間題等で七五三三角形とともによく登場する。まぎらわしいのが「名みゃ」(738〉三角形で、名古屋に似ているので名古屋弁風に生徒に言ったが完壁にはずしてしまった。

1 「七五三」と「名古屋」と「名みゃ」の関係

 七五三三角形の辺に正三角形を張り合わせると名古屋と名みゃができる。これを部分的に折り返すと頻出の内接四角形(等脚台形になるものも含む)も現れる。

 また、1辺の長さが7の正3角形を張り合わぜることもできる。(98センター追試)

2 頂角が60°または120°で、3辺とも,整数の三角形について

A=120°のとき余弦定理より
    a2=b2+c2+bc
ここで、c=2 とおくと、
    a2−b2−2b=4 ⇔ a2−(b+1)2=3 ⇔ (a+b+1)(a−b−1)=3
a+b+1=n …@ とおくと a−b−1=3/n …A、 @Aをa,bについて解くと
    a=(n2+3)/2n,b=(n2−2n−3)/2n
となるから   a:b:c=(n2+3):(n2−2n−3):4n
たとえぱ、
a:b:c=19:5:16(n=4)
 =7:3:5(n=5)
 =13:7:8(n=6)
 =49:45:32(n=8)

A=60°のとき同様に  a:b:c=(n2+3):(n2+2n−3):4n

a:b:c=7:5:8(n=2)
 =19:21:16(n=4)
 =13:15:8(n=6)
 =13:15:7(n=7)
 =69:77:32(n=8)
 =7:8:3(n=9)

(飛岡正治著『ハッとする数学』東京図書より)

 よって、次のような円に内接する四角形を作ることができる。

 ここで頂角が60°の方の三角形を等脚台形になるように張り合わせたが、考えてみれば

の形の等脚台形はそもそも円に内接するし、対角線で.二つの三角形に分けて、その片方を左右対称にひっくり返せぱ、いくらでも4辺が整数の内按四角形(60°120°)を作ることができそうである。ここで考えたのは、対角線の一つが整数になる特殊な場合であった。

3 整数辺の等脚台形と円に内接する四角形

 対角線の長さが整数の場合でなくても、60°、120°の等脚台形になる場合は、下図のように、辺の長さに法則性がみられる。
 つまり、円に内接する三角形で120°をはさむ2辺の長さが (m,k) のとき、反対側に頂角が60°の三角形を張り合わせて内接四角形を作るとき、その辺の長さの組み合わせ(もちろん無数にあるが)のうち、等脚台形になる (m+k,k) の場合と、(m,m+k) の場合については、七五三三角形同様マークなら暗算で処理してしまいたくなる。実際は余弦定理で確認するだろうが、答がわかっているのは安心だ。
 調べてみると、このパターンで作成された間題が予想以上にある。

 余弦定理によっても、次のように確認できる。
    m2+k2−2mkcos120°=m2+mk+k2
    (m+k)2+k2−2(m+k)kcos60°=m2+mk+k2
    m2+(m+k)2−2m(m+k)cos60°=m2+mk+k2

4 おわりに

 今回考えたのは、整数辺と60°120°の角を含む三角形や円に内接する四角形についての簡略な解法であって汎用性には乏しい。60°であっても整数辺でない場合や、整数辺でも角度が簡単でない場合については、普通の解法の方が簡単である。(99年センター本試もそうだった。)
 したがって、下級学年での利用には慎重に考えたほうがよさそうだ。三角比の標準間題がすらすらいく生徒や、受験対策やセンター対策で、すこしずつ小出しにする程度が適当なのかも知れない。  なお、研究会の席上で、名みゃは「はなみ」、7,8,3のものを「やなとうさん」とも言うと教えられました。


5 問題の実際 〜答えだけはすぐに求まります〜

 円に内接する四角形ABCDは、AB=5,CD=AD=3,A=120°を満たしている。このとき
(1)BDの長さを求めよ。  (2)BCの長さを求めよ.

〔暗算解〕
 (1)七五三三角形だから、BD=7
 (2)120°をはさむ辺の長さが(3,5)のとき、60°をはさむ辺の長さは
      (3,3+5)または(5,3+5)
   である.この場合は前者だから、BC=8
〔普通の解法〕
 (1)余弦定理から BD=7を導き、
 (2)BC=xとおいて余弦定理をもとに2次方程式を解いて BC=8

 四角形ABCDが円に内接し,
    AB=3,BC=1,CD=3,DA=4
であるとき,∠Aの大きさを求めよ.

〔暗算解〕
  円に内接する等脚台形であるから,∠A=60°
〔普通の解法〕
  ∠A=θとおいて、余弦定理と補角の定理を用いて角度を求める。