模型を使うことの有効性について

札幌月寒高等学校  長谷川 責

 問題を考えるとき,グラフを利用するとか図に描いてみる方法はとても大切です。今回も,条件として与えられたものを,数式を変形して解こうとしたところ,イメージが浮かばなくて同じところを堂々巡りしていました。ところが,グラフを描いたところ,何処が分かりにくかったかよく分かりました。その点についてまとめます。

【問】a,b,cは実数でa≧0,b≧0とする。
   p(x)=ax2+bx+c,q(x)=cx2+bx+a
とおく。−1≦x≦1をみたすすべてのxに対して|p(x)|≦1が成り立つとき,−1≦x≦1をみたすすべてのxに対して|q(x)|≦2が成り立つことを示せ。
(1995年,京都大学・理系学部・後期日程)

 この問題は条件が多すぎるため本質を見落としてしまう受験生が多かったと思われます。ここで大切なことは,
   −1≦p(1)≦1,−1≦p(0)≦1,−1≦p(−1)≦1
より
   −1≦a+b+c≦1,−1≦c≦1,−1≦a−b+c≦1
という条件が作られます。たったこれだけで証明ができます。
 q(x)=cx2+bx+aを微分してq'(x)=2cx+b=0から軸はx=−b/2c。これをx1とおく。

(@)x1≦−1またはx1≧1のとき

q(x)は−1≦x≦1で単調増加または単調減少より−1≦x≦1をみたすすべてのxに対して|q(x)|≦1が成り立つから−1≦x≦1をみたすすべてのxに対して|q(x)|≦2が成り立つ。(図より明らか)
(A)−1<x1<1のとき
 頂点を(x1,y1)とおく。このときmin{|1−x1|,|x1−1|}≦1より
   min{|x1−(a+b+c)|,|x1−(a−b+c)|}≦|c|≦1
また,max{|a+b+c|,|a−b+c|}≦1より
   max{|c|+|a+b+c|,|c|+|a−b+c|}≦2
 よって−1≦x≦1をみたすすべてのxに対して|q(x)|≦2が成り立つ。
 この問題のポイントは,
   −1≦p(−1)=q(−1)≦1,−1≦p(1)=q(1)≦1,−1≦c≦1
 つまり右の図のように,幅が2で隙間(図では点線の部分)があって,上と下に柵がある領域を考えます。ここに,y=cx2(−1≦c≦1)の形をした針金を置くとき,両端が引っかかるため,放物線がいくら背伸びをしても頭の高さが1しかないので,どう頑張っても高さは2のところまでしか行かないし,いくら頑張って下に潜っても頭の高さが1しかないので,深さは2つまり−2よりは下には行かないと言うことです。
 これによつて,問題はすべて解決しました。あとは,このことを式でまとめるだけです。このことはモデルをみれば納得がいくでしょう。

 具体的に道具を用いて考えをまとめる。これも日常生活で良く遊ぶゲームが大学入試も課題になった例です。何事も具体的な方が考えやすいと言うことです。

【問】AとBの2人が次のようなゲームを行う。nを自然数とし,Aはそれぞれ0,1,2,・・・,nと書かれた(n+1)枚の札を持っている。Bはそれぞれ1,2,・・・,nと書かれたn枚の札を持っているとする。第1回目にBがAの持札から1枚の札をとり,もし番号が一致する札があればその2枚の札をその場に捨てる。番号が一致しない札はそのまま持ち続ける。次にBに持ち札があればAがBの持札から1枚の札をとり,Bと同じことをする。こうして先に札のなくなったほうを勝ちとする。Aが勝つ確率をpn,Bが勝つ確率をqnとする。ただし,相手の札をとるとき,どの札も等しい確率でとるものとする。
(1) p1,p2,q1,q2を求めよ。
(2) pn+qn=1,(n+2)pn−npn−2=1(n=3,4,5,・・・)であることを示せ。
(3) pnを求めよ。

 この問題は二人でばば抜きをするとき,どちらがどれだけ有利であるかという問題であります。よく考えれば二人でばば抜きをしても面白くも何でもありません。出来ればばば抜きは人数が多いから面白さもあるというものです。しかし,大学入試程度ではせいぜい二人で十分です。これがたった3人になっただけですごく面倒になってきます。といっても私もまだ考えたことがありません。しかし,考えてみる価値はあるような気がします。
 この問題ですが,カードを実際に使って漸化式の考え方を説明します。

@ Bが0を引いたとき次の図になる。

A Bが0以外を引いたとき次の図になる。たとえば8とする。

次にAが1枚Bから引くと次のようになる。たとえば9とする。

これらをまとめると次の関係式ができる。
   
後はこれを解くだけで全ておしまいである。