北海道札幌稲北高校 早苗 雅史
高等学校の現行課程においては,「各科目を通じてコンピュータ等の教育機器を活用して指導の効果を高める」よう配慮することになっている。また,「数の計算に当たっては,必要に応じて電卓,コンピュータ等を使用させて学習の効果を高める」ことが求められている。
更に科目「数学A」「数学B」,「数学C」それぞれに,コンピュータを中心とする単元が置かれている。科目「数学A」の「計算とコンピュータ」では,流れ図とプログラム,コンピュータによる計算を扱う。「数学B」の「算法とコンピュータ」では,アルゴリズムといろいろな算法を扱う。「数学C」の「いろいろな曲線」ではコンピュータを活用することで色々な曲線を観察,考察し,簡単な図形については実際に描けるようにする。
このように現行課程では選択科目の中で,コンピュータに関する単元が設定されている。ここでプログラミングに用いる言語としては,特に指定されていないが,センター試験においては,BASIC,C,PASCALの3つの中から選択することになっている。
当初はWindows上でDOS-BASICを用いての実践であった。この実践記録については,次のページにまとめてあるので参照されたい。
⇒「数学Aにおける『コンピュータの基礎』」
http://www.nikonet.or.jp/spring/mathA/mathA_0.htm
しかし,いちいちDOS画面上で操作する不便さや,エディタ機能が十分に備わっていない,グラフィックスの座標系が不便である,など多くの不満な点があった。内容面を教える以前に,その操作性に慣れるのに時間がかかってしまうのである。
最近はVisualBasicやDelphiなどの言語を用いている人も多く見受けられるが,台数分の版権を手に入れるとなると,財政的にとても手が出ない状態である。そんな中,札幌近郊の数学の先生方で組織する「数学教育実践研究会」の例会で,十進BASICの紹介があった。そのとき,非常に手軽で使いやすいことから興味を持ち,いつか授業で使ってみようと考えていた。詳しくは中村文則先生の次のレポートをご覧頂きたい。
⇒「やすい!はやい!うまい!グラフィックス調理法」
http://www.nikonet.or.jp/spring/10basic/10basic.html
特に十進Basicを授業で使うときの利点としては,次の点が挙げられる。
さて,十進BASICを用いた授業実践の内容に触れていきたい。対象は3年次の「数学A」で実施した。コンピュータ教室は,Windows95のPC機が24台とHOST機が1台設置されている。生徒は2人で1台の使用となる。各クライアント機はLANで結ばれていて,インターネットにもダイアルアップ接続が可能である。
テキストは全てオリジナルのものを作成して行った。実施時間は8時間で,内容は次の通りである。
@変数と式 A代入文・入力文
B繰り返し処理 C条件判断
Dグラフィックスの基礎 E曲線の描画
F図形の変換 G例外処理
また,テキストの最後に,参考としてよく用いられるコマンドなどの説明を載せた。
・よく用いられる命令コマンド ・よく用いられるグラフィックスコマンド
・よく用いられるステートメント ・おもな組込み関数
前半にプログラミングの基本的な内容を学習し,後半に簡単なグラフィックスを行った。各時間とも例題を説明したあと,生徒の実習という形をとった。
前半の基本的なプログラミングでは,文字列・数値列の表示,代入文・入力文,組み込み関数のほか,繰り返し処理や条件判断などの制御構造についても取り扱った。
後半のグラフィックスは,座標系の設定,点・線の描画,関数の定義と曲線の描画などを扱った。曲線は様々な関数のグラフの描画を行ったが,十進BASIC固有の絵定義を用いた図形の変換についても実施した。PICTUREの作成のために,生徒に目盛りの入ったグラフ用紙を配布し,オリジナルの作品を作成させた。
内容としては,かなり余裕のあるものになるように心がけた。DOS-BASICを用いた授業のときの反省点をふまえ,今回は次の点を考慮に入れた。
授業実践後の全体的な感想としては,次のようなことが挙げられる。
更に,細かな点での反省点を挙げてみる。
最後の時間に,授業の感想を校内メールを用いてHOST機に送信してもらった。集まってきた感想文のいくつかを,一斉送信を用いて生徒にも紹介した。生徒の感想を集約するには,メールはとても便利な方法といえる。次に生徒の感想と作成した作品例のいくつかを紹介したい。
菅谷さん・柴田さんの作品 (題名:キリン) | 小磯さん・小野寺さんの作品 (題名:ツリー) |
十進BASICを用いた最初の実践は'97年で,その年の暮れにWeb上での公開となった。そのWebページを参考に,岐阜県立岐山高等学校の小野島邦宏先生が同じように実践された。右はそのときの実践をまとめた「理数科だより」である。
Web上で公開することにより,更に実践の和が広がっていく。そのつながりを大切にして,これからも充実した実践・研究を積み重ねていく必要があろう。