第52回北海道算数数学教育研究(旭川)大会

― これまでの活動とその方向性を探る ―

札幌藻岩高等学校  菅 原  満

■■■ はじめに ■■■

  教育にコンピュータの導入の波が押し寄せてから10数年が経過した.新しい技術の導入期においては,その技術そのものの消化に力点が置かれるのが常である.教育現場も例外ではない.数学教育のどの教材で,何を,何のために,どのようにコンピュータを利用するか.ということが,"コンピュータ利用"という側から研究されてきた.その間,情報技術の進歩はさらに加速度を増し,現在コンピュータは道具としての役割に加え,"環境"としての役割を持つようになった.コンピュータが環境として自然な形で現場に取り入れられようとしているのが現在の波の形であろう.その波をより押し上げていくために,今こそ"継続性のある教材の研究"が求められている.



■■■ 1."数学教育実践研究会"について ■■■

  "数学教育実践研究会(略称:数実研)"は平成6年1月29日に北数教高校部会研究部として設立された.その背景としては,情報化や社会の変化にともない数学の必要性が増してきている反面,子供たちの数学離れが確実に進み,決して楽観視できない状況になってきた事や,新指導要領のカリキュラムの改編に伴う多様化する数学履修内容の現場サイドの対応への苦悩があげられる.

 この状況を打開,解決するためにの方策,また我々数学教師はどのようにそれを模索していくべきかを検討・研究していくための研究会設立の要望の声が高まり,数実研は発足した.

 設立当初は,「教材研究部門」,「コンピュータ部門」の2部門がそれぞれ平行して研究体制を組み,定期的にその研究成果を研究会で発表してきた.「教材開発部門」では新カリキュラムにおけるコアとオプションの有機的関連付けの分析を通し,いかに生徒たちに効果的に数学に取り組ませるかを実践し,また,「コンピュータ部門」では,関数ラボといったシミュレーションソフトを利用して,板書では限界のあるグラフの動きをいかに生徒に理解させるかを研究してきた.平成7年度に入り,「教材開発部門」では手作り教材の一つとしてのコンピュータグラフィックスの利用,「コンピュータ部門」では,ソフト作成のための教材のアイディアとして,お互いの必要性が生じ,以後,提携した形での研究会運営となり一本化された研究会として現在に至っている.北数教の研究部としての性格から,年度初めに石狩管内の各高校へ会員募集を行って活動を行っている.今年で3年目を迎え現在までに講習会6回,特設授業1回,研究レポート95本を数えるにいたっている.会員数も設立当初は32名でスタートし,平成6年度35名,平成7年度55名,平成8年度67名そして今年度は72名と増加してきている.

 しかしながら,その成果を広げていくには限界がある.これまでに,高教研でのレポート発表,CD−ROMによる情報配布,更に4月には全道の高校に研究成果の抜粋を冊子として配布するなどを行ってきた.そして今年度,札幌稲北高校の早苗先生の尽力によりインターネット上に「数学のいずみ」というホームページが開設された.これにより,全道,全国への研究成果の発信が可能となり,地区間の情報距離が一気に縮まっていくことが可能となった.また,こうした試みにより,北数教のみならず全国の数学教員もしくは数学に関心をもつ人たちとの連携を可能にし相互に研究・実践を進める環境が提供されたことになる.



■■■ 2.ネットワーク環境としてのコンピュータ ■■■

 これまでの,コンピュータの教育に関する位置づけ,即ち,「教具としてのコンピュータ」,単なる「情報提示機器としてのコンピュータ」などとは,一線を画した「ネットワーク環境を包含したコンピュータ」の波が今,我々にもたらされてきているのである.

 しかし,このような劇的変容を見せはじめたネットワーク環境も,そこに有用な情報ソースがなければ単なる環境としてのみで,衰退する可能性があることも否定できない.ある芸能人の言葉を借りれば「主体的に金を払い,足を運ぶ舞台には主役が存在するが,居ながらにして情報を享受できるテレビには主役は存在しない」.正に,インターネット上の数学教育情報発信においては,この舞台とテレビというメディアの特性等をを深慮した上での環境構築が不可欠である.「情報ソースが環境を改善するか」,「環境が情報ソースを改善するか」ではなく「環境と情報ソースが相互に影響しあい,新たな環境と良質な情報ソースを生み出す」.そこに,ネットワークが"人を相手とする教育"に対する価値が存在するものと思われる.

 では,まず「環境としてのコンピュータ(ネットワーク)」について考えてみる.



■■■ 3.メディアとしてのテレビの特性と教育ネットワーク環境 ■■■

 "テレビ"というメディアの特性は何か.を考えてみる.まず第一に浮かぶのは,即時性であろう.世界各地で起こった出来事を,映像を通して受信者にリアルタイムで伝える.ただ,その情報を受信者が欲しているかは別問題である.受信者のその情報に対する価値は,その情報と受信者の関連の度合いにおいて規定される.無関心な場合は,聞き流し状態である.関連の度合いが深い場合は,情報の詳細を求め,チャンネルを替えてでも追加情報を欲する.

 しかし,テレビメディアの特性の他方には,情報が一方通行であるという点も見落とせない.いくら,視聴者参加番組,Faxによる意見受付といっても情報そのものの変更には至らない.しかしながら,FaxやTelをすることにより受信者の番組に対する関連度が高まることは確かであろう.

 これらテレビメディアの特性は,対象が不特定多数のマスであることに起因するのであろう.
 では,我々が試行する数学教育ネットワークは何を指向すべきであろうか.



■■■ 4.これからの研究会とネットワークの指向 ■■■

 ここでは,対象を"数学に興味のある人"と規定して良いであろう.また,不特定多数を対象とする必要もない.しかし,高校数学教員と対象を絞ってみても,その欲するところは多岐にわたる.さらに,既存の研究会との関連も考慮していかなければならない.現在のところ研究会でのレポートなどが情報ソースとして欠かせないものであることを忘れてはならない.第51回大会での旭川凌雲高校 奥村先生から100校プロジェクトの共同企画『高等学校における生徒の自律的意見交換に関する実践研究』についての報告があった.生徒たちの手によるメーリングリストの運営,コミュニケーションの状況などをみると教育への様々な可能性が見えてくるのを感じる,数学教育への実用段階への移行は近いと見るべきであろう.実際,matheduなど数学教育に関するメーリングリストでは活発なネットワーク上での情報交換が行われている.

 既存の研究会とネットワーク上での研究(メーリングリストなどによる情報・意見交換も含めて)が同質の内容を継続するだけでは,将来的にはわざわざ研究会へ足を運ぶ必要がなくなり研究会自体の衰退を推し進めることにもなる.そうなれば,必然的にネットワーク上での情報ソースの質の低下を招きかねない.



■■■ 5.研究会に求められるもの ■■■

 自らが足を運ぶ研究会は,舞台の特性に代表されるようなリアルタイムで実践を確認する場としての機能も持つ.北数教全道大会での公開授業などがこれに相当するであろう.また,理論物理と実験物理に見られるあたかも車の両輪のような互いに研究を補助し推進していく関係が望ましい.即ち,発表された理論レポートを実践・検証する形での授業が展開されれば,それこそ研究会独自の特性となりうる.レポート内容実践の生中継である.そこから,さらに新たな問題提起が起こることが望ましい.レポート発表された実践理論は,生徒に還元されて始めてその価値が生ずるものである.多くの実践授業を通してその適応範囲や内容が高められていく.また,研究会には人が集まる.ネットワーク上での情報収集とは別の人と人との生の関係がそこにある.数学を離れたところでの話題も出てくる.我々高校教員は,"数学者"ではなく"数学教育者"である.これは,"数学者+教育者"という意味である."数学"という学問を通して生徒を相手にしているのである.そこには,様々な人生経験と情報を必要とする.人との出会いによる付加価値も研究会参加の大切な要素である.

 数実研では,毎年8月に"夏季セミナー"と題して泊を伴った研修会を企画しており今年で3回目を数えている.第1部のレポート発表が終わり,第2部の懇親会を含めた研修会では,第1部のレポートについてばかりでなく,様々な話題が出る.和気藹々のなかにも日々の実践上の問題点,疑問点など話題は尽きない.私もこの夏季セミナーに毎回参加しているが,色々な先生たちから触発される事が大である.第2回のときは,「2円 f(x,y)=0,g(x,y)=0の交点を通る直線を求める際の解法で,2円が交点を持たない場合でも出てくるf(x,y)−g(x,y)=0なる1次方程式は,何を表しているのか」という私の疑問に新川高校の中村先生が,その後"Shadow Line"という虚円を導入することによるイメージ化を試みたレポートを通して解答を与えてくれるなど,新たな展開を生む可能性も秘めている.



■■■ 6.理論と実践 ■■■

 理論物理学において出されたアイディアは,すぐに実験可能なものばかりではない.実験を可能とするには,更なる実験機器の開発など新たなアイディアや工夫を必要とする.理論だけでは学問は進んでは行かない.教育においても同様であると考える.ことに高校の現場では生徒が異なりすべてに適用できる理論などはわずかであろう.しかし,個々の実践報告だけでは,適応・拡張性に乏しい.教材開発についてのアイディアが発表され,それを受けて自校の生徒にあわせて工夫を施した授業実践が展開されるような両輪関係を推進していく研究会でなければならない.

 北数教では,同じような内容の発表が繰り返し行われることがある.これは,生徒が変わる限りやむを得ない事ではある.しかしながら,発表されたものが蓄積されていかない事には問題が残る.単なる情報のくり返しでは研究が深まる可能性は少なく,研究会への参加意欲,研究に対する意欲も半減する.これは,過去の理論・実践報告の閲覧調査が非常に困難である事に原因がある.

 開かれたネットワークとしてのコンピュータには,これをサポートする可能性がある.



■■■ 7.環境としてのコンピュータに求められるもの ■■■

 インターネット上には,数々の情報が存在する.教育関係はほんの一部である.数学関係のホームページを探しても現場の数学教師が期待するような内容はまだ少数であろう.今年開設された数実研のホームページ「数学のいずみ」には,これまでの数実研の研究成果が全てではないが公開されている.現在は1月の高教研で配布したCD-ROMの内容に,その後の研究会での発表などが追加された情報が載っている.インターネットに接続できさえすれば,これらの情報は全て容易に取り込む事ができる.研究成果のデータベースである.これらの,情報をいかに自分の学校の生徒に還元していくかは,それぞれの教師の力量であろう.こうして,情報が蓄積公開されていけば,それを改良し実践を深めていくことが可能となる.第一に環境としてのコンピュータには,この機能を期待したい.可能性は,こればかりではないネットワーク上での討論(メーリングリストなど)に参加すれば,ネットワーク上でもインタラクティブに研究を進める事が可能である.

 現在の各校の状況では,実現困難な事もある.しかし,確実にこれまで述べてきた環境の変化の波は我々に向かって押し寄せている.道立高校の全てにインターネットの接続を可能とする企画も進められている.接続可能となってからその利用を考えていたのでは,これまで導入されたコンピュータが埃をかぶった状況を再び繰り返すことになってしまうだろう.待ち焦がれて自分の学校に導入されたときに,すぐ利用できる準備と研修を積む必要がある.



■■■ 8.いかにして生徒の力を引き出すか ■■■

 "研究会","環境としてのコンピュータ"などは,「"わかる""できる"授業の実践を通して,生徒の力を最大限に引き出す」という目標を持っている事を忘れてはいけない.これなくしては,研究会そのものの存在意味がない.

 上記の2つが相互に活用・発展していくためには我々の日々の教材研究が重要な柱となる.数実研の活動においても,その目的として「高校数学で扱う教材およびそれらの関連性を分析し,いかにして効率よくその教材の持つ本質的意味を理解させるか」を上げている.メディアがどう変わろうと,授業形態がどう変わろうと教材に対する深い造詣なくしては良い授業は存在しない.教材に対する深い理解があれば,あとは生徒に最も近い担当教師の工夫と力量に授業の善し悪しが委ねられる.「どんな教材を,いつ,どのように生徒に提示すべきか」その点の工夫こそ教師の力量が示される事となる. 北数教の活動の活性化も"研究成果の生徒への還元"を忘れずに進めていかなければならない.今年度,事務局から提案された地方の研究活動の活性化と支援を生徒に還元させるべく有効に活用していきたいものである.



■■■ 9.おわりに ■■■

 現在,北数教の研究部としては「数学教育代数解析研究会」と「数学教育実践研究会」の2つが存在する.そして,全道組織としての「北海道算数数学教育会」がある.本来の研究組織としての機能をより活性化する意味でも研究会の存在意義は大きい.高校部会事務局から地方の研究の活性化に対する補助金の提案があったが,これも一つの方向性を示している.すでに都市部と地方の情報距離はなくなりつつある,情報交換もその気になればリアルタイムで可能であろう.数年前までは,小規模校においては数学教師が1人しかおらず,本を片手に授業研究をする姿が見られた(今でもそうだが).しかし,これからは実践資料を居ながらにして情報を得て自分の授業を改良していく事が可能になってきた.また,広い北海道ではそのような情報交換のシステムを確立する必要性が是非とも必要である.このことは北海道のみならず全国における情報交換の可能性も示している.情報の受け手であるばかりではなく,理論・実践者として情報を発信する側にもなり,相互に研究を進めていく事が大切である.



数学教育実践研究会
基調報告

 これまでのレポート発表などを分野別にまとめて活動内容の概要をまとめ,今後の研究の方向性を探ってみたい.なお,レポート内容が多岐に渡るため,あくまでも事務局としての私的な分類となってしまった事を発表者の方々に予めここでお詫びをしたい.(以下,文中の敬称を省略させていただくことをご了承願いたい)

【数学T・A】

「和関数としての2次関数のグラフ」(札新川中村)は2次関数 を , の和として と考える事により,曲線の概形を容易に掴み得るだけでなく各次数持つ意味を分かりやすく説明している.なお,このレポートは,更に3次関数にも拡張され等比分割性などの考察も行われ第51回大会でもその成果が報告されている.その他,2次関数については,切片形 の形からの導入・展開や,極線と極線とで囲まれた面積からの考察など別視点からの分析も見られた(札藻岩 菅原).また,札東 大山により関数の機能をブラックボックスを用いて合成・逆関数など基本的概念の分析説明を図るなかなか定着しがたい関数概念を説明するシェーマの工夫が紹介された.離散系では,札新川 中村より「重複組み合わせ」の旧来からの指導事例をまとめるなど,実際の授業への研究が報告されている.また,コンピュータを利用してのシミュレーションに関しては,札稲北 早苗によりVisual Basicを用いて最大最小問題,不等式の解などを具体的問題に対して数多くの教材例が紹介された.どれもテーマが絞られており授業における教材のイメージ化に有効であると思われる.また,IBM"関数ラボ"を使ってのグラフの指導例などが野幌 細野,札新川 中村,苫東 矢嶋より報告されている.Windows95などが浸透してきてはいるが旧来の機械をもつ学校においては,今後も重要なソフトウェアとなる事が予想される.数学Aに関しては,数列における指導例として"ハノイの塔"を実際に生徒に試行させる事により等比数列のメカニズムを体感させる指導例が小樽桜陽 岡部から,また,「数学Aにおけるコンピュータの基礎」の指導案とその実践記録が札稲北 早苗により報告されている.

【数学U・B】

 数教協にも所属する石狩南高 清水により積分の積分の導入に関して,数学史的考察および区分求積を用いての演習などを通しての授業実践例が紹介された.また,この実践例をうけて札厚別 川崎よりその授業展開を自校においても工夫実践した報告があった.緻密な指導案と授業後の生徒の反応などのレポートもあり,授業の様子が伝わってくる.このような,同一テーマに対する研究の深化が今後も望まれるところである.図形と式・軌跡・領域に関しては,Visual Basicによるシミュレーション,関数ラボを用いて線形計画法の授業実践例など生徒の興味関心を高める工夫が見られるが報告されている. 数学Bに関しては,平成9年度は新課程で導入された複素(数)平面をテーマとして設定した.札東 大山による複素数を変換作用素として展開していく報告,石狩南 清水による極形式の導入実践例などこの分野に関しては今後のより一層の展開が期待されるところである.確率分布に関する報告は見られなかった.

【数学V・C】

 数学Vについては札北 長木による極限計算おけるロピタルの定理を使った指導例,また,分数関数の逆関数の求め方に関する札新川 中村の考察などがあった.本研究会が比較的,会員の共通関心事項として必修科目の教材研究が多いためこの分野の報告は少ないようである.新課程になり微分方程式がなくなりはしたが,分数関数・無理関数などを含み,結果としてこれまでに分数式の計算がおろそかになり,ややもすると計算力が未熟なままで数学Vを履修するといった事による弊害が起こりうる.この点を,教育課程の面からも研究する必要が出てきているように思われる. 数学Cに関しては,「いろいろな曲線」に関するレポートが数本あった.いずれも何らかの形でコンピュータを利用するものであり,今後授業への実用実践例の研究が展開される事を望む.また,苫東 矢嶋から「資料の整理」についての授業試案が報告された.各学校の実状では,数学Cは,「行列」「いろいろな曲線」の2分野を履修させるところが多いようではあるが,数学Bの確率分布との関連では選択肢の一つと一考してみる必要もある.

【実践報告】

 札稲雲 大河内より教科通信を通して生徒の数学的興味関心を喚起する実践例が報告された.教師の側の情熱が伝わってくる実にボリュームのある報告であった.また,苫東 矢嶋からは,課外活動でのパソコンの導入から授業へと模索していく苦労が報告され,今後新たにパソコン利用を考える時の指針となる資料となっていた.

 「まず教材研究ありき」ではあるが,やや授業での実践報告が少ないようである.共通テーマに対する共同研究の形で,これまで報告されたレポートを受けて実践報告などをするという研究体制を推進していく必要性を痛感する.

【教育課程】
新カリキュラムは,すでに5年目を迎えている.戸惑い混乱する時期に「数学T・A」「数学U・B」の指導計画についての分析が報告された.このレポートは,北数教全道大会でも紹介された.現在の履修形態に大いに影響を与えたものと思う.

【コンピュータおよびトピックス】

 コンピュータに関する報告は,内容が多岐に渡り分類が非常に難しい.単なるコンピュータに関するものばかりではなく,数学教材をコンピュータを使って視覚的に解説しているものなど多数ある.そのため,上記の分類とも重複する部分がかなりある事もご了承願いたい.

(1) パソコンを利用しての教材開発

 開発環境は,Basic( Quick Basic ,N88-Basic,Visual Basic ,十進Basic),Java,関数ラボ,LOGO,VRMLなどがあった.導入されている機械でWindows環境が利用できるかが分かれ目である.コンピュータ教室での利用に限定した場合は,導入されている機械により制約が出てくる.プロジェクターなどを使って普通教室でOHP的に利用する場合には選択肢は増える.しかし,これらの利用法はコンピュータを使わなくても適切な教具を工夫すれば代用が可能であれば,コンピュータを持ち込まないでも手軽な教具の方が授業効率も良い.選択のポイントは,開発の手軽さであろう.また,問題解決型で生徒に利用させながら発見的にコンピュータを利用する報告(「新フーリエの冒険」〜札稲北 早苗)もあった.他にもフラクタル,カオスなどを題材として「実験数学」を指向した発表が多数ある.これらは,ほとんど「数学のいずみ」でも実際に体験できる(javaで記述されているため).逆に,Windows環境の中でもN88-Basicなどプログラムの利用が可能な「十進Basic〜札新川 中村」の利用報告などもあり興味を引いた.wwwのプラウザ上で利用するVRMLというほんの数行の記述で立体シミュレーションを可能にする報告もあり驚かされた.今後の展開を期待したい.いずれも,これらの発表から,実際に「授業などで生徒にどう利用していくか」が今後のテーマとして残っている.この部分の研究が今後待たれるところでもある.