― 対象を明確にするために ―

札幌藻岩高等学校  菅 原   満

「分かりやすい授業」と「分かったつもりになる授業」

 「分かりやすさ」は授業にとって大切な要素である.しかし,単なる「丁寧な説明」だけでは我々の目的は達成されない.教材を分析しその配列,展開の順序,例題の提示順,演習の時間設定などを教師の側がしっかりと把握していなければ真の意味での「分かりやすさは」与えられない.また,単なる「分かりやすさ」だけを追い求めると生徒は,「分かったつもり」でおわり教材に対する興味・関心を持つことなく彼らの学習も授業時間のみでストップしてしまう.我々の目指す「分かりやすい授業」とは,生徒に問題の対象を明確に提示することで,教材に対する見通しをよくし,興味や関心を喚起し,やる気を起こさせ,その後の家庭学習へとつなげるものでなければならない.これこそが「わかる」から「できる」へとつなげる鍵となる.

 本校では,1年次“数学T(4)”と“数学A(2)”で必修とし,2年次で“数学U(3)”と“数学B(2)”が必修となっている(コース制はとっていない).3年次でいわゆる“理系”,“文系”へと分かれ3年次では数学を必要とせず“数学履修0”という生徒もいる.2年次ではそれらが混沌とした状態で一斉授業を実施しているのが現状である.課題としては,成績中位の生徒をいかに落ちこぼさず,理系へ進む生徒をいかに伸ばすかという点である.

対象を明確にするために

 “軌跡”分野を扱うと生徒から「何をやったらいいのか全然分からない」「答えが出るけど何だか分からない」という声を聴く.これに関しては,以下の点に問題があると感じる.
(1)“軌跡”の概念自体が分かっていない〜“軌跡”問題における解決対象への理解不足
(2)“直線”,“円”などの図形と式に関する習熟度不足
(3)動点Pに与えられた性質の分析ができていない〜“直接型”,“間接型”,“定義域制限型”

 これらに対処するために,教科書(数研)・問題集(数研サクシード)の問題を再構成しプリントに補題をつけながら授業で使用している.また,特に(1)については,これまでゴムひもを使っての実験などを試みてきた..

 平成7年度の理振でノートパソコンを1台購入し(本校には,パソコン教室はない)教室への運搬が可能であることから,思い切ってシミュレーション教材を作成し生徒に問題の対象をシミュレーションしてみることにした.プログラム作成と実施に当たって注意した点は以下の点である.
(1)“連動点の軌跡”,“媒介変数を用いた軌跡”を中心に据える
(2)プリントの問題と連動させる
(3)定点通過の直線を提示し,作図の際の重要性を認識させる

 また,運用に当たっては,
(4)画面が小さいため,演習時間を利用して短時間に問題対象を把握できるようにする
   ※クラスを2分割して説明した
(5)提示の時間をできる限り短くし,演習の時間を確保する

授業を終えて

 実際に授業で使ってみた感想は以下のようである
・何といっても画面が小さく後ろの者が見ずらい.しかし見えた生徒は,解決すべき対象が理解できたようである.実際は,演習の時,パソコンを持ち歩き質問に答える形をとった.提示方法が貧弱なため今後の改良が必要である.
   ※しかしながら,“わかる”と“できる”は別の問題である
・本校の現状施設では,これが精一杯であるが個別の質問に対する有効な手段とはなり得るようである