「数学科での中高連携」その3

北海道上川高等学校
若林 理一郎

1 はじめに

 本校で道内初の連携型中高一貫教育が導入されて、2 年が経ようとしている。
 総合的な学習の時間「大雪基礎」における「地域・環境学習」の実践、特に「石狩川水質調査」を題材とした研究発表で、女子生徒4 名がクロアチアでのGLOBE 世界大会に出場したことは、新聞やテレビでの報道により多く紹介されている。
 ここでは、数学科における教科指導の中高連携、特に今年度の実践を中心に報告していく。

2 今年度の上川高校の現状

 昨年度の入試においては、一昨年度(34 名) を大幅に上回る50 名が入学した。
 これは、中高一貫教育における実践が町内生に評価されたこと、連携の柱になっている「地域・環境学習」が町外生にも評価されたことなどが主な原因と考えられる。そして、上川中学校から上川高校への進学率は、数年前の55% 前後から70% 程度にまで上昇した。
 ところで、数学科の教員は、中学校2 名、高校3 名の5 名による体制で行っている。高校では、以前から2 クラス3 展開の習熟度別授業を行っているが、中学校でも、今年度の増員を契機に中1, 2 ではティーム・ティーチング、中3 では、1 クラス2 展開による少人数指導を実施している。このことにより、個に応じたきめ細やかな指導の実現をめざしている。

3 数学科における連携の実践内容

 私が上川高校に転勤してきて3 年が経ようとしている。赴任して最初の年(平成13 年)の9 月に北数教釧路大会で発表した「数学科での中高連携」において、中高一貫教育に関わる次のような実践を行っていることを報告した。
  1. FS(基礎学習)における高校教員の中学校への協力
  2. ティーム・ティーチングにおける相互協力
  3. 数学検定の合同実施
  4. 定期的な教科会議の開催
 そして、これらの実践がその後どのように行われ、また、内容・方法的にどのように深化・発展させてきたかを次に述べる。

3.1 FS における高校教員の中学校への協力

 FS(Fundamental Study) は、中学校の選択授業の1 つとして実施されている。これまでFS1〜3 であったものを今年度はFS1〜5 に拡大し、1 週間を1 サイクル(各25 分)として実施している。主要5 教科で基礎から応用までの内容を設定し、生徒が希望に応じて受講している。数学科では、中学1 年生(FS 数学基礎)と2, 3 年生(FS 数学)に分け、さらにFS 数学の場合は、1〜5 を次のように振り分けている。
● FS1(計算基礎)  ● FS2(計算)  ● FS3(計算)  ● FS4(計算)  ● FS5(応用)
 実際の25 分の授業においては、10 分程度で設定された問題に取り組む。問題の内容について、計算領域では基本問題や誤答が多い問題を、それ以外では、標準的な問題から文章題までの幅広い内容を出題している。
 その後、各自が自習したり、教員が補充問題を出題する。中学校教員がメインで、高校教員は空き時間を利用して指導援助を行っている。
 また、中学校の平常の授業では、1, 2 年生では、ティーム・ティーチング、3 年生では、1 クラス2 展開の少人数授業を実施している。

3.2 TTにおける相互協力

 高校教員の中学校への支援に関しては、先のFS 以外で中高の学習内容を関連づけた発展学習について実践的研究を行い、今までに以下のとおり行った。  授業後は簡単なアンケートを実施したが、いずれの授業も「普段とは違った感じの授業で楽しかった」など、中学生の興味・関心が得られたとともに、「数学的な見方・考え方」を深めることができたのではないかと考えられる。
 中学校教員の高校への支援は、授業公開週間も含めて年に数回、問題演習における指導援助を行っている。今年度は、数学Uの「対数関数」などで実施した。このことにより、中高教員が双方の生徒理解だけでなく、学習内容や指導方法についても研修を深めることができた。

3.3 数学検定の合同実施

 漢字検定や英語検定に比べ受検者数は少ないが、数学に対して興味・関心の高い生徒が、より上級の合格を目指して中高で継続して受けている。今年度は2 回目までに高校生は4 名が受検し、準2 級および3 級においてそれぞれ1 名ずつが合格した。今後は、小学生や地域も含めて参加できるような体制等について検討していきたい。

3.4 定期的な教科会議の開催

 平常の授業や放課後の課外活動、校務が重なり、定例会議を持つことが困難となった。しかし、FS での支援の際に短時間ながら打合せを持ち、ティーム・ティーチングの授業内容についての検討、上川の中高生の現状をふまえた指導重点項目についての検討など を行っている。

4 私見−上川での中高連携における数学科の今後

 上川中学校と上川高校では、24 年間という長い歴史を持つ「中高交流会」が毎年11 月中旬に行われている。また、年度当初には「中高一貫教育合同推進会議」を持っている。 会議終了後は、「懇親会」を開催し、相互の親睦を深めている。
 中高の数学科教員は、日付が変わるまで親睦を深めていた。
 その中では、中高連携教材の開発継続やお互いになかなかいくことのできない日常的なティーム・ティーチングの実践への思いなど・ ・ ・ 。
 次年度の数学科における連携強化を確信する中で、小学校や近隣大学との連携も検討していきたいと考えている。
 また、本校の生徒に対する指導については、習熟度別授業の展開や評価の在り方等についてさらに研究を進めていきたい。
 次年度は中高一貫教育が導入されて初めて入学した生徒が3 年生となる。進路の決定状況によって、ある意味ではその真価が問われる。
 従って、進路面での更なる指導強化も必要である。様々な課題も山積しているが、地域を担う優秀な人材を地域の学校から育てるという観点から、今後も中高で連携した実践に意欲的に取組んでいきたいと考える。