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表彰式の様子・成績概評・まとめ

●はじめに

 昨年11月に気象衛星ひまわりを搭載したH2ロケットに続き今年2月にはエックス線天文衛星アストロEを搭載したM5ロケットも、打ち上げに失敗した。

 近年、人工衛星の打ち上げの失敗だけではなく、JCO事故、トンネル崩落事故、科学技術に関する多種多様の問題が報道される中、10年後、20年後・・・将来、はたして21世紀の日本の科学技術力は大丈夫なのだろうか?いささか不安になるのは私だけであろうか。


●北海道高等学校数学コンテストの歴史・概要

 毎年1月に、無料で実施されている「北海道高等学校数学コンテスト」は1983年1月からスタ−トし、今年で18回目を迎えることができました。
主催:北海道算数数学教育会高等学校部会研究部。
後援:北海道教育委員会、札幌市教育委員会、北海道高等学校校長会、北海道新聞社。
協賛:ベネッセコ−ポレ−ション
 そして多くの先生方のボランティアによって運営されております。

北海道高等学校数学コンテストの目標は

 問題を作成する上での趣旨として

以上から出題分野は

【1】基礎問題   【2】初等平面幾何問題
【3】代数的問題  【4】解析的問題  【5】応用的問題
からの5題とし各40点満点合計200点満点とした。


●第18回数学コンテスト

2000年1月11日(火)全道各地で実施された。参加校は 北嶺・札幌白石・札幌旭ヶ丘・札幌啓成・札幌第一・北海道工業・札幌北・北広島・札幌国際情報・札幌南・札幌平岡・札幌東・様似・札幌平岸・津別・苫小牧東・小樽潮陵・滝川・千歳北陽・旭川東・旭川北・釧路湖陵・北見北斗・函館中部・函館ラサ−ル・標茶 以上26校 から190名の生徒が3時間30分を数学コンテストに挑戦した。


●表彰式

 2月26日(土)15:00より 北海道大学大学院理学研究科数学科教授 上見練太郎
北海道算数数学教育会会長 北星学園大学経済学部教授 安藤 毅
北海道教育委員会学校教育課指導主事   中村 均
ベネッセコ−ポレ−ション北海道支社長 広田 京一
北海道算数数学教育会高等学校部会長 札幌南陵高等学校長 佐藤 忠雄
の諸先生を来賓として迎えベネッセコ−ポレ−ション北海道支社会議室で実施された。


●秋山仁先生からのメッセ−ジ

 みなさん、こんにちは東海大学の秋山です。え−このたびは第18回数学コンテストで優秀な成績を修め表彰された皆さん20名の方々、心からお祝い申し上げます。私も、問題を送っていただき拝見致しましたけれども、中には結構難しい問題もあって、皆さんは、よくぞこれだけ高い得点がとれたものです。大変な数学の力を持っていることに敬意を表するとともに、少し羨ましくも思います。私は、今 数学で飯を食っていますけれども、たいして高校や中学の時からできた訳じゃないんです。

  中略

 でも、数学の先生が余談で授業中いろいろな話しをしてくれて、これは面白かった。例えば「4色問題」、これは私が若い頃結構没頭することになった問題で、これも高校の時先生が教えてくれたものです。『白地図が与えられた時、隣り合った国を同じ色で塗ると識別がつかなくなっちゃう。だから違う色になる様に塗らなきゃならない。でもそうすると、ひょっとすると絵の具の色がたくさん必要になるかもしれない。だけど上手に塗っていくと、たった4色だけの絵の具で、必ず塗り分けられるのだよ。これを4色予想というんだ。君達も挑戦したらどうだい。』私も結構挑戦して、私の人生をだいなしにしてしまいましたけれども・・・。(笑)
 「フェルマ−の予想」これも何年か前にアメリカのプリンストン大学アンドリュ−・ワイルズ教授が解きましたけれども、これもそのころ教えてもらいました。
 「素数の分布」「リ−マン予想」等未解決の問題について先生がたくさん話してくれて「数学はすごいな。未知の世界がいっぱいあるんだな。」と、頭が悪く成績も良くなかったけれども、ワクワクするような魅力を感じましてね。私、以来40年も数学をやって、数学で飯を食っているのです。相変わらず頭は良くはなりませんが、皆さんだったら、こんなに素晴らしい成績を取れるんだから、頑張れば重要な結果を出せるかも知れませんよ。
 是非、是非 数学を将来研究して、素晴らしい発見をしてもらいたいと思います。
 いずれにせよ、北海道数学コンテストでの20位入賞、おめでとうございます。


●楽しい交流会

 表彰式の後、コ−ヒ−とケ−キを食べながら、受賞者20名が今回の問題に対する感想・意見・質問を述べ、出題・採点者が答え、来賓の先生からの提言という形で進められた。

◇出題意図に対する意見

◇来年の問題への要望

など生徒の熱心さが伝わって来る交流会であった。


●受賞者のコメント

 「北海道教育委員会教育長賞」を受賞した榎戸輝揚君(札幌南高校)に聞いてみました。

Q;昨年5位で今年最高点でしたが何か特別な事はしたか?
A;シュプリンガ−から出版されている、秋山仁先生の「数学発想ゼミナ−ル」を読んでみました。ある命題の中から規則性を発見する過程が書かれてあって、とても参考になった。普段からパズル系の本が好きで良く読んでいる。考える事への慣れが大切だと思う。
Q;数学コンテストに対しての感想?
A;2年間受けましたが本当に楽しかった。
Q;将来の進路については?
A;数学が好きで「大学への数学」を読んでいます。最近、技量がやっと追いついてきて、大学では理学部でしっかり勉強してから、コンピュ−タ−を使って、理学と工学の間の研究をしたいと思っている。

 「北海道新聞社賞」を受賞した高橋岳志君(北見北斗)は
「特別な事はしていませんが、毎日の積み重ねが大切だと思う。将来はコンピュ−タ−を使って数学の研究をしたい。」と問題5の立体モデルを手にしながら話していた。


●先輩からのメッセ−ジ

 佐藤昭宏君(札幌国際情報高校出身)から数学コンテストにメッセ−ジを寄せてくれました。

 私が筑波大学の社会工学類を志望したきっかけが「数学コンテスト」でした。もともと経営学を学びたいと思って情報システム科に居た私にとって『数学』は数値計算という意味で不可欠なものでした。しかし、普段の教科書的な数学の力はあっても、それが発展性を持つためには何かが欠けているものがあると常々感じていました。
 昨年、数学の先生に誘われて数学コンテストに参加しました。コンテストを受験して実感したのは、「ひらめきと思考力を土台にした数学の世界の広大さでした。数学コンテストが私の狭い数学的視野を拡大してくれたのでした。その後、工学的数理現象に興味を持って、筑波大学の社会工学類を受験し合格しました。大学においては、単に問題を機械的に解く数学としてではなく、問題を発見し、問題解決に至る道筋を見いだすための数学を社会問題に応用していく研究をしたいと思っています。


●問題作成者より

問題1
出典は「日本の幾何―何題解けますか?」(深川英俊・ダンペド―共著、森北出版)にあります。江戸時代の数学は「塵劫記」が出版されて以来、一般庶民の間に広まりました。特に、巻末にやや程度の高い問題を解答なしで載せた部分「遺題」は多くの向学心に燃えた数学好きの若者達を刺激しました。特に、幾何の問題は「この時代によくここまで…」と感心する深い内容のものを含んでいます。少しでも昔の人の苦労が分かっていただければ幸いです。

札幌新川高校 教諭 佐々木光憲

問題2
高校入試のような作図とトレミ―の定理の特別な場合。相似比が利用できるかがポイントになる。

札幌平岸高校 教諭 古川政春

問題3
有理数の扱いについての問題である。@文字a,b,c,dに、一般性が失われない限り条件をつけても構わない。Aその場合文字に範囲が存在しその範囲が比較的に狭いものであること。日常の生活の中で物事をどの様に考えて行けば良いのかという指針になると思う。

南富良野高校 教諭 山崎昌典

問題4
1秒につき4通りの選択があるのでn秒後には4n通りの道がある。行き着く点への道の数には、規則性がある。その規則性に気が付いて欲しい。

札幌白石高校 教諭 山田耕市

問題5
理論的・抽象的である数学を目に見える模型やCGで表現して考える事ができ、しかも数学的な美しさと感動を感じて欲しいと思いました。「算数100の難問・奇問3」(講談社ブル−バックス)の中で解説されている灘中学の入試問題をヒントに又CGは滋賀県立河瀬高校 高橋英和先生が考案したMathematica3.0で作動するパッケ−ジKnifeを利用させていただき、3次元フラクタル図形を切断し、その切断面積の形状と面積の変化についての問題を作成しました。

札幌平岡高校 教諭 松本睦郎


●まとめ

 米スペ−スシャトル「エンデバ−」に毛利衛さん(北海道余市町出身)がNASAの搭乗運用技術者(ミッション・スペシャリストMS)として乗り組み、2度目の宇宙飛行に挑戦した。地元紙によると、「自分よりも一回りも、ふた回りも若い宇宙飛行士の卵に混じって、超音速ジェット機の操縦席に座る。パラシュ−トをつけて海に飛び込む等、20代・30代なら軽く出来た事に、3倍くらいの時間をかけて、MSの資格を取った。週末の外出もせず、予習と復習に明け暮れる姿は、家族から見れば、まるで予備校生みたいだったそうだ。」(北海道新聞社説「五十代の輝き」を見た。より)そして、打ち上げ前には「常に新しいものに挑戦していくのが私の生きがい、北海道スピリッツだ。」と話していた。
 子供の頃誰もが抱いていた「もっと知りたい。」「もっと考えたい。」という気持ちを育て、高校生の時代には「科学する心」「不思議を感じとる感性。」を磨き、「考える力」を育成する事が人間の英知であると感じる。 そして、クリエ−ティブな大人として輝いてもらいたい。
 北海道算数数学教育会高等学校部会研究部は「幅広い創造性を育てることが、我々の使命である。」と考えている。 尚、数学コンテスト解答はホ−ムペ−ジでご覧ください。

「数学のいずみ」http://www.nikonet.or.jp/spring/

北海道高等学校数学コンテスト事務局
北海道岩見沢東高校 教諭 松本睦郎
e-mail mutsuo@a1.mbn.or.jp


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