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解 答 5
古来から多く語られている『最大値・最小値問題』から出発して、近年、アメリカでの子供向けのテレビ番組「TheMathChat」(FrankMorgan製作)で話題になった2個の石鹸膜の境界線角度が120度であるといわれている『Double Bubble問題』を意識しながら、『幾何学的測度論』へのアプローチ的な問題を出題しました。
子供の頃、誰もが遊んだ「シャボン玉」には実は、多くの神秘的な数理現象を見ることができます。「シャボン玉の数理」には宇宙の神秘が隠されている気がします
(1)どんな変形を実施しても面積一定であるので、初期の円を半径1の円として考えると円の面積S=π,円の周囲L=2π
(@)この円が正方形に変形するとき
右図のように、正方形の1辺の長さをxとすると正方形の面積=円の面積より
x2=π
正方形の周囲をAとすると
A2=16π …@
(A)この円が直角二等辺三角形に変形するとき右図のように、各辺をの比に従って、とすると
直角二等辺三角形の面積=y2/2=π
直角二等辺三角形の周囲をBとすると
…A
(B)この円が正六角形に変形するとき右図のように、正六角形の1辺の長さをzとすると
正六角形の面積=
正六角形の周囲をCとすると
…B
@ABより、π=3,として、おおよその値を求めると
L2=36,A2=48,B2=69.9,C2=41.6
従ってL<C<A<Bの大小の順番となり
円の周囲<正六角形<正方形<直角二等辺三角形
(2)右図のように横y,縦xの長方形について考える。
長方形の面積=x×y=k(定数)
長方形の周囲の長さ=2(x+y)=2x+2y
2x>0、2y>0より、『相加平均 相乗平均』より
変形によって面積は不変なので、x×y=kより、
等号成立は2x=2yのとき、x=yのとき正方形のとき周囲の長さは最小となる。
縦:横=1:1
(3)右図の様に縦x 、横yの2つの隣接した長方形がある。この隣接する2個の長方形の周囲と境界の和Lとすると、
L=3x+4y
3x>0、4y>0より『相加平均≧相乗平均』から
長方形の面積は変形によって変化しないので、xy=k(定数)
等号成立は3x=4yつまり、x:y=4:3のとき
隣接する2個の長方形の周囲と境界の和Lは最小となり最小値は
縦と横の比は4:3
(4)変形前のそれぞれの円の半径を1とする。右図のように、1つの弓型図形の半径をr(θ)とおく
1つの弓型の面積= …@
この1つの弓型図形の面積は変形によって変化しないので、初期の円の半径は1より、
面積はπ…A
@Aより
…B
Bへ90°,120°,180°を代入すると
…C
…D
…E
下図のように隣接する2つの弓型の図形の境界線をとする。余弦定理より
…H
2つの隣接する中心角θの弓型図形の周囲と境界線の和をL(θ)とすると
…I
Iへ90°,120°,180°を代入すると
π≒3として両辺を2乗して大小を比較すると
となりθ=120°のときが周囲と境界線の和が最小となる。
(1)10点 (2)10点 (3)10点 (4)10点
(1) 各図形の周囲が求めてあれば、各2点
答えのみの正解は2点
(2) 長方形の周囲の長さが求めてあれば3点
「相加平均≧相乗平均」に気がついていれば、5点
答えのみの正解は2点
(3)周囲と境界の長さの和が求めてあれば3点
「相加平均≧相乗平均」に気がついていれば、5点
答えのみの正解は2点
(4)答えのみの正解は2点
方針が合致していれば3点
幼いころ誰もが一度遊んだことのあるシャボン玉の性質を出題しました。
(1)は中学校に学習した「等積変形」に関する問題から、円が最も周囲が最小になり、面積が最大になる性質を出題しました。
(2)(3)は高校1年の不等式で学習した「相加平均>相乗平均」に気がつきを活用して欲しいと思い(4)は接近する2つの面積一定の円の半径が変化することに気がついて欲しかった。この120°は神秘的な角度で、三叉接合構造と言い、自然現象が落ち着くバランス点であります。亀の甲羅、蜂の巣、人間の脳のしわ、魚のうろこバナナやとうもろこしの接合等は、この120°です。
多種多様な現象を分析するためには、【規則性の発見】【情報の視覚化】【有効な場合分け】等が大切です。まずは、鉛筆とコンパスと定規を手に持って自分で作図して下さい。
札幌国際情報高校2年佐藤敬恒君、旭川東高校2年小林道治君、札幌南高校2年花田博幸君は、非常に完成度の高い答案を作成していました。
数学を武器として、シャボン玉の不思議に取り組み、将来は宇宙の神秘を解明して欲しいと思います。
北海道岩見沢東高校 教諭 松本睦郎
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