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第5章 フーリエ級数

 「全身を真綿でくるみ、さらにホウタイでぐるぐる巻きにして、真夏でも閉めきった部屋の中で思索した」(フーリエ自伝より)。若くして「フーリエ級数」を発表したフーリエは、数学者であると同時に、エジプト文明の研究に熱中した考古学者でもありました。猛暑の中で研究すると、スムースに研究がはかどるという彼の奇人ぶりはとても徹底していたようです。さて、そんな彼が発見した「同じ周期を持つ波はどんなに複雑なものでも単純な波の合成である」という事柄を簡単に見ていきましょう。

5_1 波の合成

 この単純な波とはsin波とcos波のことです。時間tを横軸にとってグラフを描くと,同じ形をした波が何度も繰り返し描かれます。このように同じ形を何度も繰り返すことを「周期性がある」といいます。ここでいくつか言葉について整理しておきます。

 sin波,cos波の1つの波が現れる角度(周期といいます)は360°ですから
   角速度=周波数×360°
が成り立ちます。次の例では(1)は周波数が3,角速度1080°,振幅1のsin波,(2)は周波数4,角速度1440°,振幅2のcos波を表しています。周波数k,振幅aのsin波(cos波)はy=a sin kωt(y=a cos kωt)で表されます。(ω=360°)

(1) y=sin 1080°t=sin 3ωt(2) y=2 cos 1440°t=2 cos 4ωt

 振幅は横軸からの波の振れ具合が1である波を合わせたものと考えることができます。

 それでは違った種類の振幅と周波数を持つsin波とcos波をいくつも合成して新しい波を作ることを考えます。次のような振幅を持つ波の合成をしてみましょう。

 周波数1周波数2周波数3
sin312
cos123

 6つの波を合成すると,かなり複雑な波ができあがりましたね。この波の合成具合をわかりやすくする方法があります。それが「スペクトル」と呼ばれるものです。波を合成する際の周波数と振幅を次のような棒グラフにするのです。左がsin波,右がcos波を表しています。

5_2 波のかけ算

 三角関数sin kωt,cos kωtのグラフどうしをかけ合わせることを考えてみましょう。かけ合わせるとは,同じtの値におけるsin kωt,cos kωtの値をかけて値をとることをいいます。簡単のために1秒間に描かれる波を考えます。

(1) sin波×cos波

 ここで面積に注目してみましょう。右の図を見てみましょう。横軸より上の面積を+,下の面積を−だと考えるます。すると,上に上げたグラフはすべて1秒間に描かれる波の面積が0になっているのです。
(2) sin波×sin波,cos波×cos波

 先ほどと同じように面積に注目してみると,周波数が違うときは面積が0になりますが,同じときは同じ値にはなりません。いったいいくらになるでしょう。次の図のように足りない部分を補ってやると,長方形になります。これより面積は1/2になるのが分かります。cos波についても同様の事がいえます。

 これまでのことをまとめると,次のようになります。
   @ sin波×cos波の面積=0
   A sin波×sin波,cos波×cos波の面積は,周波数が同じ時1/2,周波数が違うとき0
 同じ周波数をもつ波をかけないと面積が0になってしまうのです。ここがポイントです。

5_3 波の分解

 それではいよいよ本題の波の分解に入りましょう。簡単にするため次の6つの波を合成し下図左のようになったとします。
  sin ωt,sin 2ωt,sin 3ωt,cos ωt,cos 2ωt,cos 3ωt  (ω=360°)
 逆にこの波が,これら6種類の波を何個ずつ使って合成されているか,を求めれば良いわけです。そのために波のかけ算を使います。

 図左のように合成された波にsin ωtをかけて,図右になったとします。先ほど見たようにsin ωtをかけた時に面積が0にならないのは同じ周期を持つsin ωtだけでしたから,この面積はsin ωtから作られるものしかありません。sin ωt×sin ωtから作られる面積は1/2でしたからグラフの面積をSとすると
   S÷1/2=2S
sin ωtは2S個使われていることになりました。他の波の場合も同様です。つまり6種類の波が何個ずつ使われているかを求めるには,
   「合成された波に,違った周波数を持つ波をかけ,その面積の2倍がその周波数を持つ波の個数」
になることがいえます。
 それでは波の面積はどうやって求めればよいでしょう。「細かく分けて足す」ことが基本でしたね。
 次の図は10等分,30等分,50等分していったものです。どんどん波の面積に近づいていきますね。これを「区分求積法」といいます。

 こうして遂に,複雑な波を形成している波を,違った周波数を持つ単純な波に分解する方法を手に入れたのです。

 これを最後に数式を使って表してみましょう。
 異なった周波数を持つsin波,cos波を
  sin ωt,sin 2ωt,sin 3ωt,…,cos ωt,cos 2ωt,cos 3ωt,…  (ω=360°)
として,これらを合成した波を次のように表します。
   
 これを「フーリエ級数式」といいます。このときsin波,cos波の振幅をan,bnとすると
   
で表されます。この式を「フーリエ展開」といいます。
 これまでは話しを簡単にするため,合成された波が1秒間に1回現れるように進めてきました。しかし,実際には1秒間にもっと多くの回数の波が現れます。また,簡単な波をsin波,cos波としてきましたが,もう一つ定数波(時間では変化しない波)を付け加える必要があります。更に詳しい話しを知りたい人は,是非調べてみてください。

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