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変換としての複素数

小樽双葉高校  大 山  斉

〔1〕ばじめに

 x2=−4の解はx=2iとx=−2iであることは今日では誰も異論をさしはさまないであろう。

 しかし、x2=−4となるxは、実数の範囲内では存在しないのであるから、実数の解のみが方程式の解であると意識されている場合には“この方程式には解がない”といってもよい訳である。

 従って√−4とか2iなどを書いても、これはあくまでも仮空の数であって只形式的に計算する記号に過ぎないとも言えるのである。2次方程式を解くという立場だけで考えるならば虚数を新しい数と見なす必然性はないともいえる。ところが、3次方程式の解法の研究が進むにつれて奇妙な事実が判ってきた。

 x3+ax=bの型の3次方程式は
   
を解にもつことが16世紀初頭に発見された。

 今x3−18x=8にこの公式を適用してみよう。
   
となり√−200を合む記号で表わされる数である。

 ところでこの方程式を因数分解法で解いてみよう。
 x3−18x=8よりx3−18x−8=0
   ∴ (x+4)(x2−4x−2)=0
となり
   x=−4、2±√6
となる。

 x=−4、2+√6、2−√6はいずれも実数であるからは実数であると認めなければならないであろう。

 つまり“れっきとした”実数が“仮空”の√−200等を媒介として表現されているのである。

 このような研究が進むにつれて、18世紀頃には虚数は新しい数として認知されていた。仮空の数が、新しい数としての市民権を獲得していたのである。

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