1次変換の性質

 を平面上のベクトル,Pを2行2列の行列とする。このときとなると表わす。

   である。

 このときの写像 f については,が成り立つ。

 f を1次変換と呼び,行列Pは1次変換f を表わす行列である。

 f によって原点は原点に移る。今,点A,Bはf によってそれぞれA',B'に移るとしよう。

 直線AB上の任意の点Xについては, (tは実数) が成り立つ。f によってXはX'に移るとすると,よりとなる。

 従って,f によって2点A,Bを通る直線はA',B'を通る直線に移る。更に点C,DはそれぞれC',D'に移るとし,とする。

   

 また,

   

   ∴ 

 よって平行な関係にあるベクトルは,f によって移ったあとでも,それぞれまた平行な関係を保つベクトルとなっている。ここから発展して平行な関係にある線分の長さの比はf によって変わらないことがわかる。

 また,同一直線上の2つの線分の比も変わらない。

 を2辺とする三角形の周上及び内部の点Xについてはとなる。

 このとき,となり,であるからX'は△OA'B'の周上及び内部に存在する。

 一般にf によって領域は領域へと移されていく。

 △OABの面積をS,△OA'B'の面積をS'とし,f を表わす行列はとする。

 このとき,が成り立つ。

 この理論を推し進めてゆくと図形W,Vがそれぞれ図形W',V'に移るときWとVの面積の比は,W'とV'の面積の比に等しい。このことからf によって面積の比は変わらないといえる。

 次にが成り立つとき,f によってにそれぞれ移るとする。

 ,によりとなる。

 f によってベクトルを表わす1次式は変わらないことがわかる。3つの点O,A,Bは一直線上にはないものとし,座標はO(0,0),A(a1a2),B(b1b2)とする。f によってAは(1,0)に,Bは(0,1)に移るとき,f を表わす行列Pはどのような形のものであろうか。

 より

 より

 よって・・・@

 O,A,Bは同一直線上にないので,a1b2a2b1≠0,故にには逆行列が存在するので@の両辺に右からをかける。 ∴ 

 よって同一直線上にない3点O,A、B(Oは原点)をO,(1,0),(0,1)に移す f が存在する。

 以上より1次変換 f の重要性質をまとめてみよう。

(1)1次変換で変わらないもの

 @平行な2つの線分の比

 A同一直線上の2つの線分の比

 B2つの図形の面積比

 C2直線が平行である性質及び交わる性質

 Dベクトルを表わす1次式

(2)1次変換で変わるもの

 @線分の長さ

 A図形の面積

 B2直線のなす角度

 C点の座標

(3)Oを原点とすると,同一直線上にない3点O,A,BをO,(1,0),(0,1)に移す1次変換f が存在する。