白樺学園高校 氏家 英夫
(数学教育協議会会員)
この報告は 積分を微分より先に独立に面積と結びつけて指導し、その後に微分を落下運動の分析から指導した授業の実践報告である。
微積分の指導の目標のひとつは、微積分学の基本定理がなんらかの感動をともなった形でわかるということにあるだろう。積分法は古代より求積法として微分法とは独立に発展してきたものであり、それが力学の成立の過程で微分法の逆の演算であることが意識されてきた。積分法と微分法とをある程度独立に指導してはじめてその相互の関連が問題となる。
全体の授業プランの内容は概略次のように設定した。
- 面積とはなにか定義するという文脈で積分を展開する。
- 無限小dxを積極的に位置付ける。
- 落下運動の解析をもとに微分を展開する。
「面積と積分」
- 直線図形の面積についてそれが「たちあわせ」と呼ばれる有限回の操作で比較可能な量であること。
- 長方形に面積測度を与えることおよび縦×横=面積の意味
- 曲線図形の面積とリーマン和Σf(x)・Δx
- 無限リーマン和としての定積分の定義
- 多項式の定積分
「落下運動と微分」
- 落下運動の実験とガリレオの斜面の実験
- 平均速度
- 瞬間速度を求める。微分係数の定義。
- 瞬間速度を表わす関数としての導関数を求める。
- 速度から距離を求める。微積分学の基本定理。
主な参考文献- キースラー『無限小解析の基礎』(東京図書)
- 小杉肇『無限小数学の系譜』(槙書店)
- 田村二郎『量と数の理論』(日本評論社)
- 板倉聖宣『ぼくらはガリレオ』(岩波書店)
- 大田邦朗「2次関数と微積分」北大教育学部紀要
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