メーリングリスト「mathedu」 その実例から
★1★ メーリングリストとは
〜「教師のためのMULTIMEDIA LEARNING KID」(NTT)より
- メーリングリストとは
メーリングリストは、特定のトピックについての公共または私的な公開討論の場で、完全にそのメンバーの投稿だけからなるニュースや会報といったものです。メンバーは、独自のメッセージをメーリングリストに投稿したり、他のメンバーが投稿した記事を読むことができます。自分がある意見をメーリングリストに投稿すれば、自動的にメンバー全員にそのメッセージが送られます。
このような討論のリストつまりバーチャル・コンファレンス(仮想会議)が、考えられるあらゆるトピックに関して存在しています。自分が存在しているリストからは会報、定期刊行物、報告書などいろいろな情報が自分あてに電子メールで届けられるのです。一般に公開されているものもあれば、特定の組織や個人だけが利用できる非公開のものもあります。
このようなメーリングリスト、つまり電子メールを元にしたメッセージセンターは、教育者にとっても情報を見つけたり共有するための優れた手段となります。
- メーリングリストに参加するには
メーリングリストの参加方法にはいろいろありますが、ほとんどの場合には、簡単な要求内容と自分の電子メール・アドレスおよび名前を記した電子メールをリストの所有者か、またはメーリングリスト・サーバーに送信するだけですみます。それぞれのメーリングリストによって登録の方法はリストの所有者や管理者に電子メールで問い合わせるか、ホームページ上にリストへの登録の方法が掲載されている場合は参照することができます。
- 「管理者がいるリスト」と「いないリスト」の違い
管理者がいるリストは、誰か(通常はリストの所有者)がリストでのコミュニケーションを制御しています。この人物は、メッセージが他のメンバーに配布される前に、そのメッセージを受け取ります。適切でない、攻撃的な、あるいは無関係な内容が含まれているデータは、除外されます。
それに対して、管理されていないメーリングリストでは、投稿されるものはほとんどなんでも、優れたものでも、そうでないものでも、不愉快なものであっても配布されます。
- メーリングリストのネチケット
- 投稿内容がトピックに沿っていること
- 個人あてのメッセージは投稿しない
- 読むことのできる量以上のメッセージは投稿しない
- メーリングリストの転送には大量のコンピュータ処理能力が費やされるため、過度の負荷を負わせない
- 目的に合った正しい電子メールを利用する(投稿のアドレスかリスト運営に関わるアドレスか)
- 電子メールとしてのネチケットを守る
★2★ 教育関係のメーリングリスト
〜「日本における教育関係メーリングリストの例」(成田雅博 山梨大学教育学部)より
- ネットワーク,コンピュータと教育に関する一般的な題材のML
- Teacher Net (tea-net) 教育におけるパソコン通信活用研究会
- 100校プロジェクト情報メーリングリスト(aimiteno)
- 地域に根ざしたML
- スクールネット研究会
- 中国・四国インターネット教育利用研究会(school@csi)
- 北海道の教育メーリングリスト(Hokkaido Educational Mailing List(HEML))
- 教科教育・特定の学習対象等に関するML
- food (食に関する教育のメーリングリスト)
- mathedu (数学教育に関するメーリングリスト)
- 理科教育メーリングリスト
- ArtEdu (美術教育オープンメーリングリスト)
- 日本の英語教育のためのメーリングリスト EFLJ
- English(英語教育メーリングリスト)
- 環境教育・学習メーリングリスト(ees)
- 社会科メーリングリスト(愛称:シンシア)
- 新・国語科教育メーリングリスト
- 小・中・高校生が交流するML
- KIDCAFE-JAPANESE(キッドカフェ ジャパニーズ)
- キッズリンク(全国小学生の輪)
- 特定校種ごとの教職員等のML
- 情報処理教育担当者メーリングリスト(高校の情報処理教育担当者メーリングリスト)
- その他特定のテーマ等に関するML
- わかなメーリングリスト(小中高校用インターネット利用モデル・ガイドラインの作成の議論のためのメーリングリスト)
- スクールテック・メーリングリスト(コンピュータ・ネットワーク学校教育利用技術メーリングリスト)
- 日本人学校プロジェクト(仮称)メーリングリスト
- 参加資格が会員のみのML
- ACEメーリングリスト
- AGENE(国際ネットワーキング教育学会)メーリングリスト
- Mathematicaユーザ会メーリングリスト
★3★ メーリングリスト「mathedu」
〜「算数・数学教育メーリングリスト mathedu へのお誘い」より
- 作成者
成田雅博(電子メール:narita@kkb.yamanashi.ac.jp)山梨大学教育学部
ホームページ http://www.cer.yamanashi.ac.jp/mathedu/ml/mlann.html
- 作成日
1996年5月23日作成
1996年10月2日改訂
1997年6月27日改訂
- 序文
電子メールやWWWをはじめ,ネットワークが教育の場に普及しつつあります。ネットワークを活用するにはいろいろな方法がありますが,自分に関心のある領域,題材のメーリングリストは,情報収集,情報交換には非常に役立つものです。メーリングリストとは,ファクスなどにある同報通信機能の電子メール版にあたるものです。メーリングリスト用のアドレスに電子メールを出すと,登録されているアドレス全部に同じメールが届くようになっています。
数学教育については1995年9月から,matheduという名前のメーリングリストが動いています。matheduでは,研究会などの催しもの情報,コンピュータを使った算数・数学の授業に関する話題,数学に関連するWWWのページの紹介などの情報がやりとりされています。matheduには,電子メールを使うことのできる方ならどなたでも参加できます。小中高校の先生,大学の数学教育の研究者,数学のソフトウェア作成にかかわってる方,数学教育に興味をもっている方などの参加を歓迎します。
- 目的
算数・数学教育に関する情報交換や議論をする場を提供することにより,算数・数学教育研究や実践を推進します。matheduのようなメーリングリストの場合,インターネットに直接つながっているコンピュータを使う人も,どのパソコン通信を使う人も,いっしょに情報を共有する場となります。
- 参加者数(登録されているアドレス数)
1996年(平成8年)4月21日現在で,53
1996年(平成8年)9月30日現在で,128
1997年(平成9年)6月25日現在で,288
- 配送されているメールの数
1996年(平成8年)3月の1か月間で,61通
1996年(平成8年)4月の1か月間で,16通
1997年(平成8年)9月の1か月間で,200通
1997年(平成9年)4月の1か月間で,104通
- 参加料
参加料は無料です。活動や報告の義務はありません。ただし,電子メールのメールボックスの大きさに制限のある方は,メールボックスをあふれさせないように気をつけてください。
- 参加のために必要なもの
インターネットの電子メールが使える環境(パソコン通信のNIFTY-Serve, PC-VAN, people等もO.K.です)だけです。
- 参加の方法
- 参加の方法(1)--- 手動登録の方法
以下の項目を書いた電子メールを,成田雅博(narita@kkb.yamanashi.ac.jp)あてに送ってください。こちらで,手動でメーリングリストに登録します。
(項目)氏名,所属(ナシ,でもかまいません),電子メールアドレス,ファクス番号か電話番号
- 参加の方法(2)--- 自動登録の方法
mathedu@peach.kjb.yamanashi.ac.jpあてに,Subject(題名)に cmd join と書いたメールを送ります。本文には何も書く必要がありませんし,何を書いても結果に影響がありません。うまくmatheduへの登録が成功すると,メールが通常数分以内に届きます。
- オプションコマンドについて
もしサブジェクトの最初の単語が "cmd" で始まっている場合、そのメールはオプションコマンド要求として処理します. オプションコマンドには、以下の種類があります.
- cmd help この使用説明を返送します.
- cmd address 登録されているアドレスのリストを返送します.
- cmd join あなたのアドレスを登録します.
- cmd remove あなたのアドレスを削除します.
- cmd list ドキュメントリストを返送します.
- cmd get num 既に投稿済みのドキュメントを返送します.
★4★ メーリングリストのメリット・デメリット
- メリット
- 従来のメディアでは知り合うことのできなかった人達との交流
メーリングリストを通して、ネットでの人間関係というのは明らかに広がります。世の中、いろいろな考えや能力を持った人達がいることを改めて知ると同時に、それは自分の見識をも広めてくれます。
- 「時間や場所による制約」の解消
多忙な日常の公務の中では、なかなか教材研究の時間などとれません。自分の都合のつく場所と時間で参加することができます。
- 「地域依存」から「研究テーマ依存」の研究グループとしての可能性
研究会はどうしてもその地域にいる人にしか門戸が開かれていません。地方にいてはせっかく教育熱に燃えているにも関わらず、それを発揮する場が少ないことも事実です。また、地域限定ではなかなか広がりを持たせるということも難しいといえます。
- 定期的なコミュニケーションから日常的なコミュニケーションへ
研究会は定期的に開催され、時間も制限があります。都合が悪くて参加できない場合も生じます。そうした定期的な開催から、日常的に意見交換をすることにより、より深い研究や理解というものが可能となります。限られた時間の中では消化できない、聞き足りないことも多いわけですから、そうしたものの補完としての役割もあります。
- 自分の興味・関心のあるテーマにのみの関与
これがメリットなのか、それともデメリットなのかは良く分かりませんが...。定期的な研究会においては、自分にあまり関心のない、または不得意としている発表でも参加していなくてはなりません。そうしたものをメーリングリストの場合は、極端に言えば、無視しても良いことになります。しかし、多くの人のいろいろな考えを聞くことは必要ですよね。
- 新たなテーマの創出
先ほど述べたような日常的なコミュニケーションの中では、派生する新たなテーマというものが生まれてくる可能性があります。
- デメリット
- 希薄な人間関係
「ネットワークでのやりとりというのは,一定の距離を持ったつきあい方であり,また,『興味・関心』で成立している集団というのは,ある意味では,利害や地域で成立する集団よりも強力ですが,やはりある意味では希薄な人間関係である」(飯島)といえます。
- テキストベースでの伝達の困難性
ネット上でのやり取りは、たとえ画像やデータを添付したとしても、基本的にはテキストベースでのやりとりだといえます。自分の意図をしっかりと伝えなければ、文字だけが一人歩きする危険性があります。。
- 趣旨に沿わない情報の管理
特にオープンなメーリングリストの場合、趣旨に沿わない内容のものとか、不愉快な内容のものまで送られてきたりすることがあります。また、オプションコマンド送付ミスなどのトラブル等も考えられます。
★5★ メーリングリスト「mathedu」への参加を通して
今回、以前に新川高校の中村先生が発表されたレポート「Shadow Line その存在性をめぐって」の中から「2円の交点を通る直線の問題について」をテーマに、メーリングリスト「mathedu」へ提案してみました。その具体的なやり取りを資料として載せてありますので参考にしてみてください。
メーリングリスト「mathedu」は以前から札教大数学教室の大久保先生や旭凌雲高校の奥村先生から紹介があり、その存在は知っていましたが、参加したのはごく最近です。「数学のいずみ」を公開してから、そのPRとして初めて利用させてもらいました。そのときも、すぐに次のようなメールが届きました。
**@筑波大です。
以前から存在は伺っていたのですが、また、これまでも部分的にはみせていただいたような気がしますがが、改めて開いて内容の豊かさに驚いてしまいました。
すごいですね。早速、学生にも紹介しようと思いました。
旧来、小中学校では、教材は図書を媒介に共有されたようですが、高校では適切な図書がほとんど存在せず、先生方の数学的教養のみで支えられてきたような印象を受けました/昭和30年代まではあったようですが、40年代の現代化以降なくなったかの印象を受けます。近年、ようやく森北からディスク付きの本にはじまり、各社から電卓関係の図書、東京電機大学から新数学とコンピュータシリーズ(東京の先生方編纂されたようです)、みずうみ書房からCreate Mathe高等学校指導資料(文部省と県のセンターの先生方が編纂されたようです)などが出版されるようになり、状況の変化を感じていたところですが、こういった豊かなデータベースが増えますと、状況が一変することを改めて実感してしまいました。
追伸
札幌時代にお世話になった、会の顧問の上谷先生、柏木先生等のお名前、なつかしく拝見しました。
ところで、会名、数実研は、数学教育学会の旧称と同じですね。
この中にあるように「数実研」という名前は既に存在していたようです。その後も個別にメールが届き、「数教協」から別れた民間組織として現在も活動しているそうです。また、最後にある文章からこのメールの差出人は北海道出身か、在住していた人のようです。柏木先生は知っているのでしょうか?(今度メールで聞いてみましょう)。
「2円の交点を通る直線の問題について」のネット上でのやり取りを通した素直な感想は次のようです。
- 最初は何気なく提案したのに、いつのまにか自分自身理解するのに時間がかかる内容となってしまいました。そして、自分が理解しようとしているうちに、または中村先生や菅原先生に相談して助けを求めているうちに、もう次のメールが届いてしまうという状況が生まれました。なかなか自分の中で消化できない、そんな感じです。
- 実際のやり取りの中では、ただメールのやり取りをするよりも、ホームページ上でたたき台になるようなものが公開されていれば、より具体的な理解を助けるという効果があるようです。Webの公開というのはそうした点では大きいといえます。公開されているからこそ得られる、そういった利点が存在します。
- 途中から話しが受験数学のことへと転嫁されて、最初の意図と違った議論が生まれてしまいました。人に自分の意図をきちんと伝えるのは大変なことなんですね。
- しかし、今回のことを通して、前向きに努力されている人達が数多くいるといるんだな、ということをしみじみ思いました。同時に自分自身の小ささも改めて感じることとなり、次の投げかけはある程度準備と覚悟が必要かな?と思いました。それとも自然体のほうがいいのかな?
- また、このテーマ以外に届いてくるメールのやり取りを見て、案外同じような人が投稿してくるんだなという印象を受けました。多分このメーリングリストの初期のころはそうした人達(モデレータと呼ぶのでしょうか)の役割は大きかったのだと思います。
- 全体的に中学校の先生や教育学部関連の人達の参加が多いようで、高校の関係者は目に付きませんね。もっとすそ野を広げていくことも大事なのではないでしょうか。
私自身にとっては、また新たな可能性を開いてくれると思わせる、貴重な経験でした。数実研でも地方の人達と、こうした日常的なやり取りができたらいいでしょうね。研究会の限られた時間の中では、あまり質問等もできません。あとでじっくりレポートを見て、質問したいこともあります。そんなやり取りをこのメーリングリストは可能にしてくれます。
ただ、オフラインとしての研究会の魅力をいかに引き出していくかも大きな課題といえます。
97.9.30 M.Sanae
<RESORCE>