1 pLaTeX2eとは
1.1 はじめに
数学のプリントを作成するときに,これまでは数学記号の扱いで面倒な作業を強いられてきました.DOSの時代には「P1 EXE(ARUGA)」や「一太郎」のVAFなどを用いて作成していた人も多いのではないでしょうか.最近は「Word」の数式エディタなどが主流となっていると思います.数実研では数式処理システム「MathCad」なども紹介されました.またMathematicaなどをワープロ代りに用いる方法もあります.
しかし,どれをとっても一長一短があるといえます.みんなに共通で,なおかつ軽く,汎用的なものが今のところ見当たりません.個人的にはHTMLの様式に数式記号が標準で組み込まれることを望んでいるのですが...
そんな中でも,現在最も共通で作成できる環境にあるのが「TeX」ではないかと思います.フリーのソフトで,数式をテキストで作成していけるという点で,今のところでは最も共通の土台を持っているのではないかと思います.
ただインストールや各種設定が困難であったり,コマンドを用いた文書作成など,超えなければならない壁があるのも事実です.将来Web上での標準のマークアップ言語となることを期待して,データを蓄積していきたいと思います.
1.2 TeXとは
TeX(テック,テフ)とは世界中で広く使われている組版ソフトをいいます.組版とは書籍や新聞などの様々な活字を組んで印刷するときの過程をいいます.TeX はテキストファイルと文章に埋め込まれたコマンド(マークアップ)を解釈して組版を行います.ワープロソフトと目的は同じですが,処理方式が少し違うといえます.
TeXはその後,使い勝手を良くしたLaTeX,AMS-LaTeX等が登場しました.LaTeX2e とは,TeX のバージョンアップに伴い登場した新しい LaTeX です. 現在,単に LaTeX といえば LaTeX2e を指し, 古い LaTeX は LaTeX 2.09 とよぶことになっているようです.
pTeX とは, 株式会社アスキーが日本語化した TeX です. また, pLaTeX2e は 同社が日本語化した LaTeX2e です.TeXといってもいろいろなものがあって少し混乱してしまいます.
1.3 TeX の特徴
TeX の特徴としては,次のようなものがあります.
- フリーである
- UNIX・DOS/Windows・MacOSなど様々なOSや機種で使う事が出来る
- テキストファイルなので文書の機種依存がない
- 数式がきれいである
- 書籍編集に優れている
- 様々なマクロを継承できる
一方, 短所としては,
- コマンドの習得が大変
- WYSIWYG(What you see is what you get)でない
- インストールや各種の環境設定が難しい
などがあります.また何といってもWebに対応していない,というのが最も大きな欠点ではないかと個人的には思います.
1.4 角藤版 pTeX2.1.8
pTeXにもOSの種類やバージョンによって様々なものが存在します.このレポートで紹介するのはWin32 版(角藤版 pTeX2.1.8)です.近畿大学の角藤亮(かくとうあきら)氏により Win32 に移植されたもので,
http://www.fsci.fuk.kindai.ac.jp/~kakuto/win32-ptex/
から, 入手できます.インストール方法などは後ほど紹介します.