本時は、求積の公式の生まれ出た発想を知ることを主眼においている。
円の面積、すい体、球など、さまざまな求積公式が中学校段階までの教科書に現れる。だが、今、上記したものについて、生徒の中で「どうしてそのようにして求められるのか」ということを答えられるものは、それほどいないだろう。そして、すい体や球で「どうして1/3、4/3という係数がつくのか」ということを疑問に持つ生徒も、少なからずいると考えられる。
そこで、本時はその近似的解決を通して、「取り尽くし法」についての理解を深めていきたい。まず、すい体の公式はなぜ柱の1/3なのか、という問題提起から、自由にその方法を発想させる。その後、ユードクソスによる求積法を紹介し、それにより代数的な計算で1/3という係数が現われることを追体験していきたい。
現実の公式にたどり着くには、高校の極限・積分まで待たねばならないが、原理と、公式の確実性は本時で示す方法で十分理解できるのではないかと期待している。そして、その発想が今後現れる求積公式の理解・体得に、大いに役立つことになればよいと願うものである。
本研究は、数学史の授業への活用の方策を中心に、数学史を用いた授業の創造を目指している。数学の歴史をたどると、記号や概念、原理、定理、法則に至るまで、非常に多用、かつ、大切な発想が見られる。本時は、その中の一つにある「分割と統合」の概念、具体的には、区分求積法までの求積の流れに基づいて構成している。
図形だけに限れば、紀元前4世紀のユードクソスのすい体の求積、紀元前3世紀のアルキメデスの円・球に関する研究、17世紀ころのニュートン、ライプニッツによって確立される積分に至るまで、実に2千年以上の流れで同様の発想が見られる。
このように「分析と総合」という発想は、重要な概念として用いられているといえる。そして、これも含めて、数学の歴史に見られる発想は、生徒の疑問を解決し、内容の理解を助け、自ら主体的に活用していく指針となり得るものである。本時は、その実現を狙ったものである。
過程 | 生徒の活動・反応 | 教師の活動・留意点 |
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導入 15分 |
・本時の内容を確認する。 | ・本時は,すい体の公式について考えていくことを知らせる。 |
Q.すい体の公式はどんな公式だったろうか。 V=(底面積)×(高さ)×1/3 ・すい体の1/3になることを確認する。 |
・板書する。 | |
Q.どうして柱の1/3になるのだろうか。 ・水の入る量で計測する。 ・柱を切断する方法。 ・わからない。 ・ユードクソスの求積法を知る。 |
・柱を切断する方法が出てきたら,模型演示する。 ・ユードクソスの求積法を紹介。 ・板書する。 |
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課題 25分
解決 |
<課題>ユードクソスの方法で,四角すいの体積がどうなるか調べてみよう。 |
・OHPで図1を示す。 ・底面が1辺10cmの正方形,高さ10cmのすいを,平板で10,20分割で内・外接をさせて,それぞれの面積の平均値を取らせるという方法で行う。 |
・方法を理解する。 ・図に書き込み,数値を予測しながら,模型の体積を求めていく。 ・自分達が,他の人と同様の結果になったことを確認する。 |
・ワークシートの配布。 ・生徒の活動の援助。 ・早くできた人にOHPシートでデータを発表してもらう。 |
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まとめ 10分 |
Q.今の結果からどんなことが言えるだろうか。 ・「20分割の方がもとの体積に近い(柱の1/3に値が近づく)。」 ・細かい分割になれば,さらに柱の1/3に近づくことを理解する。 ・求積公式の原理を理解する。 |
・より細かい分割で近似したものが,より近い体積になることを確認させる。 ・10,20分割の模型と,さらに細かい分割のデータを紹介する。 ・本時の内容をまとめる。 ・事後プリントの配布。 |