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問 題 5

問題文

 f(x)はすべての実数で定義された関数で,任意の実数x,yに対して,
   
を満たしている。
 このとき,次の各問に答えよ。

(1) f(0)の値を求めよ。

(2) x>0のとき,f(-x)<f(0)<f(x)を示せ。

(3)  任意の実数xに対して,f(x)>0を示せ。

(4)  x<yのとき,f(x)<f(y)を示せ。

着眼点

 @が不等式ではなくて,f(x+y)=f(x)f(y)であれば,これは,指数関数の満たす関数方程式なので,f(x)は指数関数のもつ性質をいくつか受けつぐことになります。ところが,本問は,不等式で表わされているので,少しやっかいです。関数方程式に関する問題を解いたことがない人にとっては,難しかったかもしれません。
 (1)では,f(0)の値を求めたいので,与えられた式@,Aから,f(0)を作り出せばよい。そこで,x=y=0としてみます。手を動かしてみれば,答えが出てくるでしょう。
 (2)は,Aからf(x)>1(=f(0))がすぐにわかります。残りは,f(0)=f(x+(−x))≧f(x)f(−x)を利用することに気づけば難しくありません。
 @の式のxとyに,同じ値aを代入すると,
   f(2a)≧{f(a)}2
と,2乗の形が出てきます。ですから,例えば,@のxとyのところに,x/2をあてはめれば,
   f(x)=f(x/2+x/2)≧{f(x/2)}2≧0
となり,f(x)≧0がわかります。ところが,(3)で証明したいのは,f(x)>0ですから,f(x)≠0を示さなければなりません。
 ところで,x>-1のときは,Aよりf(x)>0であり,したがって,f(x0)=0となる実数x0があればx0≦−1となるはずです。このようなx0が存在すると仮定して,@とAから矛盾を導くなど,うまく証明してください。
 (4)は,「fは単調増加関数であることを示せ。」という問題で,(3)までの問題がヒントになっています。
 この関数のモデルは,f(x)=eです。この指数関数は,数学Vで登場する関数で,eは,e=2.71828…という無理数です。余力のある人は,以下の問(5),(6)にも挑戦してみてください。
 ただし,(6)は数学Vの知識が必要です。
(5)h>0のとき,任意の実数xに関して,
   
が成り立つことを示せ。
(6)関数fが連続であるとき,次の(ア),(イ),(ウ)を証明せよ。
 (ア) fは微分可能で,f'(x)=f(x)
 (イ)
 (ウ) f(x)=e

解答例

(1) @にx=y=0を代入して, f(0)≧{f(0)}2
よって 0≦f(0)≦1
Aにx=0を代入して,f(0)≧1
ゆえに f(0)=1   (答)f(0)=1
(2) x>0のとき,Aより
   f(x)≧x+1>1=f(0)
また,@より,
   1=f(0)=f(x+(−x))≧f(x)f(−x)
f(x)>1であったから
   f(−x)≦1/f(x)<1=f(0)
ゆえに f(-x)<f(0)<f(x)  (証明終)
(3) @より,
   f(x)=f(x/2+x/2)≧{f(x/2)}2≧0
なので,f(x)≠0を示せばよい。
 背理法で証明する。
f(x0)=0なる実数x0が存在すると仮定すると,f(x0)≧{f(x0/2)}2より,f(x0/2)=0
同様にして,
   f(x0/2)≧{f(x0/4)}2より,f(x0/4)=0
これを繰り返していけば,
   f(x0/2)=0 ……B
が任意の自然数nに対して成り立つことがわかる。
一方,Aから,
   f(x0/2)≧x0/2+1
であるから,(2>|x0|となるような)十分大きい自然数nに対しては,
   f(x0/2)>0
これは,Bに矛盾する。したがって,任意の実数xに対して,
   f(x)>0
が成り立つ。   (証明終)
(4) x<yのとき,1<f(y−x)であるから,辺々にf(x)>0をかけて,
   f(x)<f(y−x)f(x)≦f(y−x+x)=f(y)
ゆえに,f(x)<f(y)   (証明終)
<(5)と(6)の解答例>
(5) h>0のとき
   f(x+h)≧f(x)f(h)≧f(x)(h+1)  (∵(3))
             =hf(x)+f(x)
したがって,
   
また,f(x)=f(x+h−h)
     ≧f(x+h)f(−h)
     ≧f(x+h)(−h+1)  (∵(3))
     =−hf(x+h)+f(x+h)
したがって,
   
ゆえに,
      (証明終)
(6) (ア)(5)のxをx−hに置き換えることにより,
   
 したがって,fが連続であれば,(5)とはさみうちの原理から,
   
 がわかる。すなわち,fは微分可能で,
   f'(x)=f(x)
 が成り立つ。   (証明終)
(イ)   (証明終)
(ウ)(イ)より,log f(x)=x+C(Cは積分定数)
 x=0を代入すると,log f(0)=C.よってC=0となり,
   log f(x)=x  ∴f(x)=e   (証明終)

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