このfによる像wを一次分数関数あるいは(複素)一次変換という。この一次変換は係数行列
が正則であるときに存在する。ここで、
なる分解が可能であることから、一次変換は次の3つの変換の合成とみることができる。
@ f1 : z → αz
A f2 : z → z+β
B f3 : z →
この3つの変換が、作用素として図形に与える性質について以下調べてみよう。
○相似(伸縮)と回転変換
f1 : z → αz |
, とすると、 であるから、複素数αは、点P(z)を原点の回りにθ1回転させ、さらに原点からの距離をr1倍する作用素である。
したがって、f1は原点を中心とする伸縮、回転を表す一次変換である。
○平行移動変換
f2 : z → z+β |
z=x+yi,β=u+vi とすると、z+β=(x+u)+(y+v)i より、wはzを実軸方向にu、虚軸方向にvだけ値を増減した点である。
すなわち、f2は平行移動(ベクトル量とみて)を表す一次変換である。
ex) P(z)が点1+iを中心とする半径1の円周上を動くとき、 w=2iz+3-2i を満たす点Q(w)の軌跡を求めよ。 |
解) 2iの大きさは2,偏角は90°より、2izは、中心-2+2i半径2の円である。
この円を3-2i平行移動すると、
wは、中心1 半径2の円周上の点である。
○相似・実軸対称変換
f3 : z → |
であるから、f3は点P(z)に対して、OPを 倍して、さらに実軸に関して対称移動した変換である。
すなわち、 となる。
以上、一次変換を表す3つの変換についてみてきたが、そのそれぞれはさらに2つの変換に分解できることが分かるだろう。
@f1 は回転+伸縮
Af2 は実軸方向移動+虚軸方向移動
Bf3 は伸縮+実軸対処移動
である。この中で、Bの伸縮変換は他の変換と大きく異なっている(もちろん@の伸縮変換とも)。それは他の変換が、点P(z)に他の複素作用素を施したものであるのに対し、点Bはそれ自身が作用素であるためにそれぞれの点の伸縮率が独立していることである。それがこの変換の図的イメージの障害となる。
次にこの伸縮変換を初等幾何の「反転」の考え方から分析してみよう。