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T.単位円の変換

 中心がαで半径1の円zは、中心Oで半径1の円を z1(|z1|=1)とすると、
    z=α+z1
と表される。この円zのベキ変換による像を考える。

 1.w=z2 の像

 z=r(cosθ+sinθ)とすれば、|w|=r2,arg w=2θ である。zが中心Oで半径1の円であれば、wも中心O、半径1の単位円であることは容易に予想されよう。では半径1の円を実軸、虚軸の方向に平行移動した円の像はどうなるか調べてみよう。
 A(α),Z(z)とすると、複素数α,zはベクトル と同一視できる。 とすると、これから、
   

ここで、r=|w|とすると、極方程式
   r=r12+1+2r1cos(θ-θ1)
は、心臓形(Cardioid)なる曲線を描く。この曲線が arg w により、さらに変形されるわけだが、概ねその外形は心臓形を反映したものだと考えてよいだろう。
 たとえば、A(1)とすると、zは、中心1半径1の円を表すが、このとき、
   r1=1, θ1=0
であるから、
   r=2+2cosθ
である。このとき、argz=θより、
   w=2(1+cosθ)e
となり、極方程式における心臓形の標準形をえる。

 では、A(1/2) とするとどうなるだろうか。
   |w|=(5+cosθ)/4
である。ここで z=1/2+cosθ+isinθより
   z2=(cos2θ+cosθ+1/4)+(sin2θ+sinθ)i
であるから、曲線は、
   x=cos2θ+cosθ+1/4
   y=sin2θ+sinθ
とparameter表示できる。
 これから w=z2=(5/4+cosθ)e を表すwの偏角θが求められる。この曲線を、エピサイクロイドというが、関数表示ソフト「Grapes」を使って表示したのが、右図である。

 このように、wの偏角が曲線カージオイドを加工して様子が分かるがそれを式として表現することは難しい。そこで、arg w=ψ(θ) として、
   w=(r12+1+2r1cosθ)eψ(θ)i
の軌跡を十進BASICを使って描画してみよう。
 右図は、A(t)として、単位円の中心を実軸上で変化させたときの曲線を描画したものである。
カージオイドからエピサイクロイドに変化していく様子が伺われる。
この図から、次のことが予想される。
  1. z=α+z1 とz=-α+z1 の軌跡は等しい(これは明らかなことである)
  2. |z|<1 のとき、エピサイクロイド
    |z|≧1 のとき、カージオイド

 なお、このことは、中心が実軸上にある点のみならず、複素数平面上のすべての点についていえることである。

ex) |z|=1であるとき、次の複素数wの軌跡を求めよ。
   (1) w=z2-2z   (2) w=z2+z

解) (1) w=(z-1)2-1
  zは中心-1半径1の円であるから、wは原点を通るカージオイドを実軸方向に−1平行移動したものである。
 (2) w=(z+1/2)2-1/4 より、中心 1/2 半径1の円 z+1/2 の像であるエピサイクロイドを実軸方向に -1/4 平行移動したものである(原点を通るエピサイクロイド)。

   

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