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V.おわりに

 本稿の後半は、座標の基底となる格子の変換についてまとめているが、実はこの手法は結果だけを追求するのであれば、ずいぶん回り道をしている。例えば、w=z2 の変換については、もっと簡単に示せば、
   z=x+yi,w=u+vi
とおいて、二式の関係を求めるだけのことで簡単にできる。実際、
   u+vi=w=z2=(x+yi)2=(x2-y2)+2xyi
であるから、実部と虚部を比較して、
   u=x2-y2
   v=2xy
をえる。ここで、実軸に平行な直線の場合は、y=cとみなして、上記の式に代入し、xを消去すると、
   u2=4c2(u+c2)
これから共有点放物線族が得られる。
 それを本稿のように、極形式で変換を試みたのは、「メービウスのしっぽ」が「メービウスのわだち」を引き継ぐという観点から作成されたことによる。メーピウス変換を Complex operator として話しを進めた以上その路線を変更したくはなかったのである。複素数は、大きさと偏角で決まるものであり、この大きさはある意味では極方程式とみることもできる。それが偏角によって微妙な影響を受け、像が生成していく過程を重要視したかったのである。
 そのためには、関数描画ソフト「Grapes」や、言語処理システム「十進BASIC」は最高のパートナーとしての役割を担った。とりわけ今回は十進BASICに助けられることが多かった。それはこのFull Basicは複素数演算が可能だからである。
  OPTION ARITHMETIC COMPLEX
とプログラムの序文に宣誓すると、種種の複素数計算が簡単に実行できるようになる。
  Let i=sqr(-1)
とすれば、虚数単位が定義され、複素数の四則演算が実行される。したがい、図形の変換も従来の Basic のようにいちいち parameter 表示に直してから変換する必要もない。z=complex(x,y) でもととなる複素数を考えて、w=f(z) を定義するだけで変換後の図形がえがかれるのである。複素数が高校現場から消滅するまでの貴重なときのなかで、このソフトがどんなに重宝するか分からない。
 なお、最後に本稿で扱ったベキ変換はすべて等角写像であった。このことの証明についても、なるべく図形の性質を考えながらひひとつひとつ解説していったが複素関数論には次の定理がある。
複素数平面Z上の二曲線 L1,L2の 交点 z0 における交角の大きさは、f'(z0)≠0 であれば保存される。
したがって、 f(z)=z2 の場合、f'(z0)=2z0 であるから、fは原点以外では等角写像であることがわかるのである。

H11.12.03

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