線と線,面と面が接続してできている図形において線や面を切ったり,つないだり,或は折り重ねたりすることをしないで,伸ばしたり縮めたりしてつながりの関係を不変に保ちながら図形を変形することを,連続的に変形するとか位相変換と呼んでいる。つまり伸び縮みが自由に可能な理想的なゴム膜の上に書かれた図形について考えていると思えばよい。
連続的に変形された図形と元の図形との間には,その図形を構成している点,線,面の間に常に1対1の対応がつけられる。このときそれらの図形は位相的に同値であるとか同相というのである。次に同相な図形の例をいくつかあげよう。
単純閉曲線は必ず平面を内部と外部の二つの領域に分ける。上の(6)図はいずれも単純閉曲線であり,(7)の図は単純閉曲線が連結したものであり,(8)の図は単純閉曲線ではない。
そこで単純閉曲線での内部の領域のことを今後[面]と呼ぶことにする。ではいくつかの図形において,点,線,面の数の間にどんな関係があるか調べてみよう。ここでは(7)のような単純閉曲線を連結させた図形を中心にして考察してみることにしたい。点の数をe,面の数をf,線の数をkとする。
(9)図では e+f−k=4+2−5=1 となる。
(10)図では e+f−k=4+2−6=1 となる。
(11)図では e+f−k=5+2−6=1 となる。
(12)図では e+f−k=9+3−11=1 となる。
このように考えると一般に
e+f−k=1
となることが予想される。このことを次の順で証明しよう。
〔問2〕単純閉曲線を連結させた図形について (点の数)+(面の数)−(線の数)=1 となることを次の順で証明せよ。 (1) 単純閉曲線を含まないリニア・グラフ(閉じた図形)では (点の数)−(線の数)=1が成り立つ。 (2) 単純閉曲線では (点の数)+(面の数)−(線の数)=1が成り立つ。 (3) 単純閉曲線を連結させた図形では (点の数)+(面の数)−(線の数)=1が成り立つ。 |
(解)
(1)線の数が1のときは点の数は2であるから(点の数)−(線の数)=1は成り立つ。次に線の数がkのときにも上式が成り立つと仮定する。
線の数をk+1にするとき,新たな1本の端点を今までの図の点のどこかに選ぶときは,増える点は1個と増える線も1本である。
故に(点の数)−(線の数)=1が成り立つ。
また新しく加える1本の線の端点を今までの図の線の途中に作るときは増える点は2個で,増える線も2本になる。故にこのときも(点の数)−(線の数)=1が成り立つ。以上で数学的帰納法による証明を終わる。
(2)単純閉曲線では(点の数)と(線の数)は等しくなる。これも数学的帰納法で証明できよう。
また面の数は1である。従って(点の数)+(面の数)−(線の数)=1となる。
(3)単純閉曲線を連結させるとき1つの単純閉曲線と他の単純閉曲線との境界は開いた図形である。従って境界をなしている開いた図形の点の数をα,線の数をβとすると,
α−β=1・・・@ である。
また1つの単純閉曲線の点の数,線の数をそれぞれe1,k1,これと連結している他の単純閉曲線の点の数,線の数をe2,k2とすると次が成り立つ。
e1+1−k1=1・・・A
e2+1−k2=1・・・B
2つの単純閉曲線を連結させた図形においては点の数,面の数,線の数はどうなるであろうか。
e1+e2の中には,境界の開いた図形の点を2度算えたものが含まれている。
従って連結図形の点の数はe1+e2−αである。同様にして連結図形の線の数はk1+k2−Bである。そこで連結図形の
(点の数)+(面の数)−(線の数)=1
は次のようになる。
(e1+e2−α)+(1+1)−(k1+k2−B)
=(e1+1−k1)+(e2+1−k2)−α+B
=1+1−1=1