■第4章■ 数学教育におけるアプローチ
インターネットにおける、電子メールをはじめとするWWW(World Wide
Web)などは、世界中のたくさんの人が情報を共有するための仕組みである。このような環境においては、社会的な共同作業(Collaboration)がどのように行われ、個人の認知プロセスにどのような影響を及ぼすか、そして学習の意味そのものが問われることになろう。
第1節 MathOn-line
MathOn-lineは、数学の自律的広域分散知的データベースを構築するものである。単なる知識を蓄積するのみでなく、公開された知識に対して付随する周辺の話題(知的)を、教師や学生にとどまらず、広く一般の人々からも収集しようとするものである。Webにおいてcgiの仕組みを使い(自律的に)、数学情報を収集する。またデータベースのメンテナンスも一人でやる必要はなく、インターネットに接続されている人ならば誰でも(広域)、少しずつ手分けをしながら(分散)分担した作業が出来る。
詳細については、第33回北海道高等学校教育研究大会(1996年1月11日)数学部会における発表、『インターネットは数学教育を変えるか−自律的蓄積型数学データベースMathOn-line』を参照されたい。またインターネットにおいて、次のURLにおいてアクセスすることが出来る。
<URL> http://www.ryoun-hs.asahikawa.hokkaido.jp/pers/mathonline/mathonline.html
第2節 Java による教材開発とその流通
インターネットといえばWWWのことと思いこまれているように、WWWは爆発的な普及を見せている。グラフィカルで誰でもが操作できるといわれているWWWであるが、使い込んでみるとインターラクティブな面に不満を感じ始める。それを補うべく注目されている技術がJavaのアプレットである。WWWにおいてはアプレットとしての面が協調される面があるが、Javaが一般のアプリケーションを記述することはもちろん出来る。Javaの技術には次のような特徴がある。
(1)マシンやシステムに依存しない。(プラットフォームに関して独立)
(2)ネットワーク対応
(3)高度なセキュリティ
(4)完全なオブジェクト指向
(5)マルチスレッド
(6)シンプル
これらの詳細は専門書や専門雑誌に譲るとして、(1)と(2)については、これまでソフトウェアを開発する上でネックになっていたことを解決する。
第一には、機種依存の問題である。初期の頃は、メーカーの機種による依存があり、その後はOSに依存している。JavaはJava
バーチャル・マシンという仮想コンピュータの上で動作する、いわばインタープリタなので、プログラミングされたコードは、各機種共通に動作することになる。このことは、プログラム開発効率を大幅に向上させる。
第二に、ネットワークに対応していることで、プログラムを含めた情報を簡単に共有することが出来る。それも、どこかで誰かが集約するという面倒を掛けることなく、分散管理が可能になるので、自分の責任のもとで自分のデータを管理すればよいことになる。確かにそういった管理の仕事は全ての個人が出来るわけではないから、学校単位、あるいはもう少し大きな単位での管理が必要にはなるであろう。さらにネットワークでの利点は、この様な作業を含めて、コラボレーションが可能になる。個人では出来なかったことも、少しずつ多くの人間で対応すれば可能になることがある。新しい教育活動を展望することが出来はしないか。
第3節 インターネットにおける情報交換と実践
ネットニュースについては、一般の数学者を含めた、相当専門的なものがある。またネットニュース独特の作法のようなものもあり、初めての人が取り組むには敷居が若干高いかも知れない。数学教育に関するメーリングリストとしてmatheduがあり、活発な意見交換がなされている。インターネットの数学教育への応用に関すること、日々の実践の報告や協力依頼、インターネットでの試みへの意見や感想の提供など、話題は豊富である。また、WWWを使った情報収集・発信の試みも増えており、ますますその応用価値が広がっている。