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●返信15(9月10日)

> 差出人 : Akio Furukawa
> 件名 : [mathedu97-00834] Re: 受験数学を作っ
> 送信日時 : 1997年9月10日 13:42
>
古川@SEGです。
terao> なお、「次の証明(解答)を要約せよ」という
terao> 出題は、今年信州大学がやりましたね。
terao> ちょっとうれしくなりました。
 早速、「入試問題正解」(旺文社)で、前期の経済、理、工 の問題を調べてみましたが見つかりませんでした。
 後期ですか? どこの学部でしょう?
(余談)
「入試問題正解」(旺文社)には、その名前と違って「誤解」も結構あって、笑えます。例えば、97年の東京医科歯科大の2番の空間図形の問題の解答では、解答者は、「3つのベクトルの1次独立性」の定義を誤解しています。ちなみに、旺文社に e-mail で指摘しましたが、返事はありませんでした。
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FURUKAWA Akio Math Teacher of Scientific Education Group
Email fakio@seg.co.jp Phone +81-3-3366-1466 Fax +81-3-3366-1689
c/o SEG, 7-19-19, Nishi-Shinjuku, Shinjuku-ku Tokyo, 160, JAPAN
IPadrs 202.33.199.66 Pager 03-6574-2558
URLadrs http://www.seg.co.jp/fakio/
古川 昭夫  〒160 新宿区西新宿7-19-19 SEG気付
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●返信16(9月10日)

> 差出人 : Nisiyama Hisanobu
> 件名 : [mathedu97-00835] Re: 受験数学を作っ
> 送信日時 : 1997年9月10日 21:17
>
西山@佐賀県教育センターです。
寺尾 敦 さんは書きました:
>数年前、心理学者の市川伸一先生が「入試の数学でも、
>なになにという概念について説明せよというような
>問題を出題したらどうか」という問題提起をして
>fj.sci.mathで議論になっていたことがありましたね。
日本評論社の「数学は語りうるか」として本になったもののことですか?
--
西山寿延(Nisiyama Hisanobu) nisiyama@saga-ed.go.jp
佐賀県教育センター(Saga Prefectural Education Center)
〒840-02 佐賀県佐賀郡大和町大字川上字西山 Tel:0952-62-5211,Fax:0952-62-6404
http://www.saga-ed.go.jp/materials/mathclass/index.htm



●返信17(9月11日)

> 差出人 : Yasuyuki Iijima
> 件名 : [mathedu97-00836] Re: 受験数学を作ったのは誰?
> 送信日時 : 1997年9月11日 0:51
>
愛知の飯島です。
 やっぱり,この手の話題は,レスが多くなる傾向はありますね。
 あまりまじめでなく,議論を続けますと,
In message <199709101101.UAA02347@mosura.seg.co.jp>
"[mathedu97-00832] Re: 受験数学を作ったのは誰?"
"Akio Furukawa " wrote:
fakio> 古川@SEGです。
fakio> iijima> あまりまじめに議論するつもりはないですが,私は「ある」と思います。
fakio> iijima> そして,それを作っているのは,
fakio> iijima> いい大学/高校に受かるための最も効果的なトレーニングをしたいという気持ちと,
fakio> iijima> そのためのトレーニング方法を体系化している人々ではないでしょうか。
fakio> 私も、あまり、真剣に議論するつもりはありません。
fakio> というのは、この手の議論は、永遠に平行線のままでしょうから。

fakio> しかし、上記の意見には同意できません。
fakio> もし、受験数学があるとすれば、
fakio> それを作っているのは、塾や予備校の方ではなく、
fakio> 大学や高校の出題者の側でしょう。
fakio> 出題者が、毎年毎年、個性のない手抜きの問題を作っているからではないですか?
fakio> 入試に手間暇かけたくない人々が、いわゆる「受験数学」
fakio> を育ててきたのではありませんか?
fakio> 本当に、数学教育のことを考えるのなら、入試関係者は、
fakio> もっと入試に手間暇をかけるべきだし、もっともっと
fakio> 工夫すべきだとは思いませんか?
 たしかに,それも一因としてはあるでしょうね。
 入試問題「も」作っている人間の一員として考えると,変な言い方ですが,我々は入試のプロではないという現実はあります。
 どの大学でもそうではないでしょうか。
 おまけに,前期/後期,私たちの教室は関係ないですが,その他にも,推薦入試や帰国子女など,いろいろな試験があります。
 高校の数学のカリキュラムでは,選択の幅が広がったので,まじめに対応すると,かなり多くの問題を作らねばなりません。
 本来,これはとっても大変な仕事ですよ。しかも影響は大きい。
 だから,それを専門にやる人がいたっていいはずなんだけど,どうしたって,入試「も」やるけど,本業は別にある,というようなことになるんじゃないでしょうか。
 しかも,入試に関していろいろな試みをしたということは,業績としても残らない。
 そもそも,「この問題は私が作った」なんていうことさえできないんじゃないでしょうか。
 それに対して,それを分析する側の方は,いわずもがなで,とっても強力です。
***
fakio> 私が、知る限り、個性的な問題を出題しているのは、
fakio> ICU だけで、後の大学は、問題を見てもどこの大学
fakio> かをあてるのは、受験のプロでなければ難しいでしょう。
***
 何が個性的かを定義するのは難しいですが,少なくとも,入試問題の作成に当たっては,作問者は,結構いろいろな工夫をしているのは事実だと思います。(専門家からは,「よくある問題」と分類されてしまうこともあるでしょうが。)
 また,答案を見ていると,ここ程度であっても,かなりいろいろな答案があるのは事実ですし,その採点に当たっては,いろいろな観点からなされていると思います。
fakio> 例えば、
fakio> 1)電卓持ち込み可 の試験をする とか
fakio> 2)参考書持ち込み可 の試験をする とか
fakio> 3)(すごく易しい)証明中心 の試験をする とか
fakio> 4)すごく良いアイデアの解法には、満点の2倍までの点数を与える とか
fakio> 5)数学の試験時間を 5時間程度にする とか
fakio> 6)数学コンクールのような 問題を出題する とか
fakio> 7)レポートを出させて、それに対する質疑応答にする とか
 たしかに,後期の試験に関しては,かなりいろいろな工夫がありうるのではないでしょうか。
 たとえば,ここの後期の問題も,かなり変わっていると思いますよ。
 受験生は面食らったと思います。
 なお,「2」は無理でしょうね。入試としては,条件を揃えなければならないということがありますから。
 でも,「2」に関しては,入学してから,「何でも持ち込み可能」という定期試験をやれば,多少「そういうものもある」ことを実感できると思います。
 ちなみに,私も,
* 何でも見ていいぞ。図書館に行ってもいいぞ。
* 時間になったら,誰か答案をまとめて,研究室に持ってこい
という試験を経験し,自分の無力さを実感したのを覚えています。
*******************
それと,別の観点からの議論になると思いますが,いわゆる「受験産業」と言われている人々の仕事が,fakio> iijima> そのためのトレーニング方法を体系化している人々としてしか評価されてこなかったということも問題ではないかと思います。
 たとえば,私自身は SEG で何をしているのかはよく分からないのですが,本屋で面白そうだと思って買ってみた本の中に,米谷「大学入試数学の変数と図形表現」, SEG出版,1993というのがあります。
 形式としては,名前の通り,「大学入試のための参考書」と見えますが,実質的には,「高校数学に関するカリキュラム研究」と言ったっておかしくないと思います。
 いや,「高校数学」という限定も不要かもしれません。
 つまり,そういう新しい数学を生み出す,あるいは,新しい形に再編集するそういう試みだと思います。
 しかし,そういう面での評価というのが,なされていないというのが,ある意味では問題なのではないでしょうか。
 本来は「数学産業」の市場は,かなり広くあるべきだと思うんですよね。
 それが,少なくとも,これまでは,(市場に関する)分類としては,
(1) 研究者 (主として大学や研究所に生息する)
(2) 教育者 (正規の学校に生息する)
(3) 受験産業 (主として予備校,あるいは塾など,「受験生の支援をする」ところに生息する)
というような見方があったのではないかと思います。また,社会的な「常識」では,現在でも,そういう見方が潜在的にあると思います。
 その見方が妥当かどうかということもあるけれど,個人的には,「市場の拡大」の方にならないかと思います。
 そして,本来,数学教育なんていうのも,「学校教育」があるから存在するのではなく,人間にとって,数学が本来的なものだから,一つの教育作用として,もっと広い意味で必要だという観点からの研究でありたいと思いますし。
 まあ,そういうことを考えたり,議論したり,社会の仕組みを変化させていくための有力な仕掛けとして,ネットワークというのは,かなり有効だとも思っています。
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愛知教育大学 数学教室 飯島康之
Yasuyuki IIJIMA
Aichi University of Education, Department of Mathematics
yiijima@auecc.aichi-edu.ac.jp
http://www.auemath.aichi-edu.ac.jp/teacher/iijima/
tel(fax): 0566-26-2329
Math Dep./ tel 26-2334, fax: 0566-26-2320
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●返信18(9月11日)

> 差出人 : 寺尾 敦
> 件名 : [mathedu97-00837] Re: 受験数学を作っ
> 送信日時 : 1997年9月11日 2:08
>
寺尾敦@東京工業大です。
古川先生>後期ですか? どこの学部でしょう?
後期日程、教育学部数学専攻のようです。
それから、西山先生の「日本評論社から出てる本のことか」
というおたずねは、そのとおりです。
#古川先生の余談にあった「入試問題正解」の誤解。
 昔私が高校生だった頃代々木ゼミナールに当時見えた安田亨先生が講義で間違いを指摘していたのを 思い出しました。
認知科学研究の参考にSEGの本をいくつか買い込んでいる寺尾でした。



●返信19(9月11日)

> 差出人 : KAMO Hiroyasu
> 件名 : [mathedu97-00838] Re: 受験数学を作っ
> 送信日時 : 1997年9月11日 4:42
>
鴨です。
From: 寺尾 敦
Subject: [mathedu97-00833] Re: 受験数学を作っ
Date: Wed, 10 Sep 1997 21:37:00 +0900
> 数年前、心理学者の市川伸一先生が「入試の数学でも、
> なになにという概念について説明せよというような
> 問題を出題したらどうか」という問題提起をして
> fj.sci.mathで議論になっていたことがありましたね。
> 鴨先生もこの議論に参加されていましたね。
> 結果として市川提案には否定的な意見が多かったようですが、
> あのような提案を出題者側がどんどん議論してくれれば
> 出題に工夫がされていくのではないかと思います。
 まあ、あれは、市川氏があまりにも数学を甘く見ていたから、どうしようもないですけど。「ベクトルとは何か」に試験時間内に解答用紙の中に書き切れると思っているんですから……。まともに答えようと思ったら、線形代数の教科書を一冊書くことになってしまうではないですか。
 しかも、この問題の困ったところは、知識が豊富で自分の頭でものを考えることのできる人には、かえって不利になることです。まじめに考えれば考えるほど、こんな短い言葉ではベクトルについて何も語っていないと理解できてしまい、結局、何も書けなくなってしまいます。ところが、「向きと大きさを持つ量をベクトルという」という何の説明にもなっていない教条を丸暗記して何の疑問も持たない人は、少なくとも、その一文は書けてしまいます。
 あと、市川氏の議論の態度にも問題があったのですが、それについて、議論の当時者の一人が語ることは不公平になりますので、私も含めた複数の論者が非難をした事実のみ述べておきます。興味のある方は、どこかのfjアーカイブで探して読んでください。例の本の出版後の議論なので、収録されていません。
 鴨 浩靖@情報科学科.理学部.奈良女子大学



●返信20(9月11日)

> 差出人 : Nisiyama Hisanobu
> 件名 : [mathedu97-00839] Re: 受験数学を作っ
> 送信日時 : 1997年9月11日 6:43
>
西山@佐賀県教育センターです。
KAMO Hiroyasu さんは書きました:
>しかも、この問題の困ったところは、知識が豊富で自分の頭でものを考えるこ
>とのできる人には、かえって不利になることです。まじめに考えれば考えるほ
>ど、こんな短い言葉ではベクトルについて何も語っていないと理解できてしま
>い、結局、何も書けなくなってしまいます。
 「チャイナ・シンドローム」という映画でチャールストン・ヘストンが演じていた原発の技術者か何かがテレビカメラの前でいかに今ここの発電所が危険であるか!!
 語ろうとして、語れなかったシーンが思い浮かびますね。
>例の本の出版後の議論なので、収録されていません。
 本は
 「ネットワークのソフィストたち」 -「数学は語りうるか」を語る電子討論-
 ISBN4-535-78201-6   日本評論社
でした。
 私が買ったときは本体2500円でした。
西山寿延(Nisiyama Hisanobu)
nisiyama@saga-ed.go.jp
http://www.saga-ed.go.jp/materials/mathclass/index.htm
佐賀県教育センター(Saga Prefectural Education Center)



●返信21(9月22日)

> 差出人 : Kanroku Aoyama
> 件名 : [mathedu97-00881] res shadow line
> 送信日時 : 1997年9月22日 1:15
>
時代遅れのまとめをしました。  青山数
「2円の交点を通る直線の問題について」(青山のコメント)
「2円の交点を通る直線の問題について」
  「Shadow Line 〜その存在性をめぐって〜 」
    http://www.nikonet.or.jp/spring/shadow/shadow.htm
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「x^2+y^2=1・・・@、x^2+y^2-6x-8y+16=0・・・A の交点を通る直線は何か」
という問題を
 @−Aより 6x+8y-17=0・・・(*)
としてしまうのは、テクニック偏重の受験数学の弊害の最たるものである
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 なかなか面白い問題でした。また、面白い議論を呼び起こしました。
 福島伊知郎さんの解説は(その1、その2とも)見事でした。
 その3、「まとめ」を聞きたいような気もします。
「実座標平面に交点が存在しない場合においても生成される1次方程式の持つ意味は何か」
を素材に
「テクニック偏重の受験数学の弊害」の嘆きやら
「複素数を考えて良かったね(あるいは複素数の痕跡)」の教材の有力候補と
考えられますね。                 福 島 伊知郎
などが見えかくれしました。
この問題の原典 http://www.nikonet.or.jp/spring/shadow/shadow.htm
に、解説されているのか、よく分かりませんが、一つ、こんな解説はいかが?
 事例の場合ちょっと係数が厄介です。問題を
「x^2+y^2=1・・・@、x^2+y^2-4x-4y+7=0・・・A の交点を通る直線は何か」
として、
交点の座標を(α,β)(γ,δ)求めます(複素数で)。
この2点を通る平面(直線)は、(1、1)+(2c−1)(1、−1)iSR(2)/2
となります(cは、任意の複素数)ね。
(2c−1)iが実数になる部分が正に、問題の形式解(と言うか影)ですね。
(こんな話は、原典のHPに解説してあるのかな?)


ここで終わりです。

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