「数学のいずみ」が目標とするのは「公開」「連携」「蓄積」の3つである。そしてこの3つが柱となり,単なる研究会の公開ペ−ジにとどまらない,より数学教育に根差したペ−ジにしたいと考えている。
数実研の母体である北数教は,北海道の小・中・高の数学の教員が一緒になった全国でも貴重な研究組織である。しかし,意外とその知名度は低い。数学以外の教員のみならず,数学の教員でもその存在を知らない人も案外と多い。ましてやその中の研究部の存在など,札幌市内にすらいきわたっていない。近年,北数教の会員数もかなり減少傾向にあることは,この事を顕著に物語っている。せっかくの研究や実践交流の場であるにも関わらず広がりをみせることがないのは,研究会自体の質の低下も招くといえるであろう。まず,研究会自体の活動内容を公開することにより,さらに活動の幅も広がり内容的にも深みのあるものが生まれてくるのではないかと考える。生徒が自らホ−ムペ−ジを作って公開するのと同様,私たち教師が生徒へ向けて発信していくのである。
全国の数学教育に携わる教師のみならず,より多くの方々との提携を期待している。昨年度における実践例としては次のようなものがあった。
こうした数学を通した連携を更に進めていく必要がある。数学教育に関する意見交流の場として,山梨教育大学のメ−リングリスト「mathedu」のような,全国的にな試みにも積極的に連携をしていく必要があろう。
また,別の観点からとらえてみる。中教審の答申では「教育用ソフトウエアライブラリ」の整備が急務であるとうたわれている。しかし,デ−タベ−ス化しなくてはならないのは,そうしたソフトウエアではなく,教科に促した「内容」であり「実践報告」ではなかろうか。特に数学に関して言えば,たとえ情報化社会がきても,扱う題材はコンピュ−タでなく数学の内容である。たとえコンピュ−タを用いたとしても,デ−タベ−ス化しなくてはならないのはそのソフトの評価であり,実践例であろう。
「インタ−ネットと教育利用の現状'97.1」(大阪教育大学)の中では,「WWWによる教育システムに関する調査」報告として,必要とされる教育・学習情報のトップに「教育実践報告」があげられている。この結果はインタ−ネットを教育に活用しようとしている現場の実態を如実に表しているように思われる。つまり,学校としての総務的・分掌的な活用や他校・地域とのコミュニケ−ション機能の必要性も大事であるが,既存の教科の枠内での活用をはかりたい,という願望があるということである。今までの現場の中における教育では,過去の実践報告が次に生かされるということはなかなか難しいものがあった。なぜなら,そうした実践報告が蓄積されていないか,または研究会に参加する一部の教員でのものでしかなかったからである。今の実践が次の実践へ,そうしたつながりが今までは起こりづらかった。学習への教材としての活用と同時に,そうした教育実践が,広範な地域から簡単に得られることができれば教員自身の指導力アップにつなげることができるであろう。
私たちは題材の内容や実践報告に主眼を置いたデ−タベ−スを構築しようと考えている。その中にコンピュ−タを用いたものがあってもよいであろう。しかし,あくまで数学の内容を中心としたものが前提であると考える。そしてそうした中から,数学の魅力を感じ取ってくれればと考えている。さらに,多くの方がこのペ−ジにどんどん話題を提供し,共に構築するすることを願っている。
こうした点を先進的に取り組もうとしている佐賀県教育センターの教育実践事例データベース「ぷらっとSagaS」は注目に値する。ここでは「検索サービス」を搭載し,2次情報の収集と登録を行っている。IDを発給することにより信憑性を高め,有益な情報を供給できる点で,これからの方向性を示しているといえる。
旭川凌雲高校の奥村先生は「インタ−ネットは数学教育を変えるか−自律的蓄積型デ−タベ−スMathOn−line−」の中で,現在の教育に欠如しているものとして次の4点をあげている。