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2_2 「数学のいずみ」の3つの柱

 「数学のいずみ」が目標とするのは「公開」「連携」「蓄積」の3つである。そしてこの3つが柱となり,単なる研究会の公開ペ−ジにとどまらない,より数学教育に根差したペ−ジにしたいと考えている。

  1. 自分達の研究や実践の「公開」
  2. 数実研の母体である北数教は,北海道の小・中・高の数学の教員が一緒になった全国でも貴重な研究組織である。しかし,意外とその知名度は低い。数学以外の教員のみならず,数学の教員でもその存在を知らない人も案外と多い。ましてやその中の研究部の存在など,札幌市内にすらいきわたっていない。近年,北数教の会員数もかなり減少傾向にあることは,この事を顕著に物語っている。せっかくの研究や実践交流の場であるにも関わらず広がりをみせることがないのは,研究会自体の質の低下も招くといえるであろう。まず,研究会自体の活動内容を公開することにより,さらに活動の幅も広がり内容的にも深みのあるものが生まれてくるのではないかと考える。生徒が自らホ−ムペ−ジを作って公開するのと同様,私たち教師が生徒へ向けて発信していくのである。

  3. 数学を通しての「連携」
  4.  全国の数学教育に携わる教師のみならず,より多くの方々との提携を期待している。昨年度における実践例としては次のようなものがあった。

    開設されてから多くの意見や感想をいただいた。「互いの授業実践を共有化していくことが大切だと常々考えていました。こういった形で具現化していくことは 本当にすばらしいことですね」,「数学教育に関する情報交換の場として意義あるペ−ジだと思います。先生方のホ−ムペ−ジで,実践記録,生徒の発言等が載せられるのがいいですね」,「教育実践のレポ−トが参考になりました。デ−タの蓄積を期待しています」など,実践報告に対する意見が多くを占めた。また,個々のレポートに対する質問などやリンク依頼なども多く,その他,生徒からの質問メールなどもあった。

    道内他管内の先生方からメ−ルを通してレポ−トを提供してもらい,それをWeb公開した。また,道外から個人のページへのリンク依頼や数学に関する題材提供などもあった。こうした,地域性の問題をWebは解決してくれるといえる。

    昨年6月,第20回の研究会で旭川凌雲高校とのテレビ会議をデモンストレ−ションとして実施した。初めてであり,内容的にはたいした事ができなかったが,将来的には他府県の研究会との交流も可能ではないかと考えている。

    第23回の研究会('97.12.6)群馬桐生高等学校の和田先生の作成された関数グラフ支援ソフト「Function View」を数実研で演習。著作権者の和田先生の御好意により、「FunctionView Ver3.22」をWeb上でダウンロードできるようにした。その後もメールを通して交流。また,第25回の研究会('98.6.20)では大阪教育大学附属高等学校池田校舎の友田勝久先生が作成された 「GRAPES」の演習も行われ,実際に授業で用いた実戦例なども報告された。

     こうした数学を通した連携を更に進めていく必要がある。数学教育に関する意見交流の場として,山梨教育大学のメ−リングリスト「mathedu」のような,全国的にな試みにも積極的に連携をしていく必要があろう。

  5.  “ネットワ−ク型”のデ−タベ−スの構築と“素材”としてのデータの「蓄積」
 授業でのちょっとした工夫や教材研究した内容が,次にも引き継がれ更にそれが改善されていく,それが大事ではなかろうか。せっかくのすばらしい内容や実践報告が埋もれていってしまう,それでは意味がない。過去の研究発表の中にはすばらしいものが数多く存在する。しかし,今となってはほとんど目にする機会さえ失われている。これまでの実践や研究内容を蓄積していくということは,ネットワ−クの利点である,「情報の蓄積・入手」「地域性の除去」といったものの,最も適した活用法ではなかろうか。

 また,別の観点からとらえてみる。中教審の答申では「教育用ソフトウエアライブラリ」の整備が急務であるとうたわれている。しかし,デ−タベ−ス化しなくてはならないのは,そうしたソフトウエアではなく,教科に促した「内容」であり「実践報告」ではなかろうか。特に数学に関して言えば,たとえ情報化社会がきても,扱う題材はコンピュ−タでなく数学の内容である。たとえコンピュ−タを用いたとしても,デ−タベ−ス化しなくてはならないのはそのソフトの評価であり,実践例であろう。

 「インタ−ネットと教育利用の現状'97.1」(大阪教育大学)の中では,「WWWによる教育システムに関する調査」報告として,必要とされる教育・学習情報のトップに「教育実践報告」があげられている。この結果はインタ−ネットを教育に活用しようとしている現場の実態を如実に表しているように思われる。つまり,学校としての総務的・分掌的な活用や他校・地域とのコミュニケ−ション機能の必要性も大事であるが,既存の教科の枠内での活用をはかりたい,という願望があるということである。今までの現場の中における教育では,過去の実践報告が次に生かされるということはなかなか難しいものがあった。なぜなら,そうした実践報告が蓄積されていないか,または研究会に参加する一部の教員でのものでしかなかったからである。今の実践が次の実践へ,そうしたつながりが今までは起こりづらかった。学習への教材としての活用と同時に,そうした教育実践が,広範な地域から簡単に得られることができれば教員自身の指導力アップにつなげることができるであろう。

 私たちは題材の内容や実践報告に主眼を置いたデ−タベ−スを構築しようと考えている。その中にコンピュ−タを用いたものがあってもよいであろう。しかし,あくまで数学の内容を中心としたものが前提であると考える。そしてそうした中から,数学の魅力を感じ取ってくれればと考えている。さらに,多くの方がこのペ−ジにどんどん話題を提供し,共に構築するすることを願っている。

 こうした点を先進的に取り組もうとしている佐賀県教育センターの教育実践事例データベース「ぷらっとSagaS」は注目に値する。ここでは「検索サービス」を搭載し,2次情報の収集と登録を行っている。IDを発給することにより信憑性を高め,有益な情報を供給できる点で,これからの方向性を示しているといえる。

 「数学のいずみ」はまだ始まったばかりある。しかし,自分たちの実践・研究を公開することにより,より多くの広範な連携が得られることを期待すると同時に,ネットワ−ク型の教材デ−タベ−スを構築していきたい。全国の数学に感心のある多くの人たちとつながりをもつと同時に,今のこの話題を次にもつなげていく事ができればと考える。

 旭川凌雲高校の奥村先生は「インタ−ネットは数学教育を変えるか−自律的蓄積型デ−タベ−スMathOn−line−」の中で,現在の教育に欠如しているものとして次の4点をあげている。

 こうしたものを少しでも補完することが,ネット上では可能なのではなかろうか。

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