『論理的思考力・想像力を育てるための試み』

北海道檜山北高等学校  吹越 勉
(fk_tutomu@teleweb.or.jp)

 “他教科との関連づけ”として、国語科での作文指導を取り入れてみました。

1.作文指導の位置づけ

 機関誌「[月刊国語教育]’97・5別冊『作文指導改善ハンドブック』」によると、作文指導の意義・目的は、社会の変化に対応し改善を模索しているようです。以下に、抜粋して紹介します。

 「現在の国語科教育においては、情報化社会に対応し、「生きる力」として機能する作文力を育てるため、作文指導を改善することが重要な課題になっている。指導内容の検討とともに、生徒の書く意欲の喚起、主体的な表現者としての学習活動の重視、さらには、様々な場面における情報発信能力、豊かな自己表現能力等を育てるための効果的な指導の開発が求められているのである。」「『生きる力』は、自ら考え、自ら問題を解決していく資質や能力である、と述べられている。あふれる情報の中から、自分にとって本当に必要な情報を選択し、主体的に自らの考えを築き上げていく力は、その重要な要素であるととらえている。」

 そして、作文指導が現在当面している課題を掲げており、その二つを紹介すると、「(1)社会の情報化に対応し、情報を活用して適切に表現する能力をどう育てるか。(2)豊かな自己表現、思考力の育成に役立つ表現力をどう育てるか。」とあります。模索中とは言え、これらのことが作文指導の目的の骨子になることと思います。


2.実践の目的

 本校では、今年度において二次不等式の学習が、までが夏休み前、それ以降が夏休み後となり二次不等式の定着が充分でなかったため、何かの奇策を考えていた。そこで思いついたのが“創作作文”であった。そして、実践にあたり、以下の目的を設定した。

  1. 二次方程式の解法手順のイメージ化

  2. 場合による解の種類の理解を深める

  3. 想像力・表現力・思考力の育成


3.『’97数学物語on二次不等式』(「創作作文」)実践報告

  1. 課題提示(資料参照)

  2. 生徒にとっても、数学の授業での“作文”は初めてであり、戸惑いの声があがった。そのため、参考例文を提示した。なお、作文は家庭学習等で書くように指示した。
    また、必ずしも個人作品とする事もなく、友人との合作でも良いこととした。
  3. 作品の評価

  4.  私自身も初めての試みで、どういうものが出来上がるか不安であったが、提出された作品は、その不安を感動へと変えてくれた。意外な発想に驚き、新たな発見を感じた。そこで、急きょ“賞”を設け、顕彰することとした。これによって、生徒が、自己存在感を感じてもらえればと思い「大賞」等を設けた。
  5. 小テストの変化
 以下に示した問題で実践前・後で小テストを実施。部分点無しの完全解答で採点した結果ともに14点満点で、その平均点は、5.9→6.4と0.5点のアップが見られた。同じ傾向の出題でもあり、一概に点数の変化だけで色々な観点の評価判断はできないと思いますが、記述内容を見ると前進したようにも感じた。

 【実践前小テスト問題】

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【実践後小テスト問題】

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4.『’97数学物語on二次不等式』(「創作作文」)実践報告まとめ

 本校1年次で実施している習熟度別学習のβクラス(α・β・γと置き、中程度の集団33名)で実施したが、一人一人が(あるいは仲間同士で)豊かな創造力を発揮し読み応えのある作品が多く、そこには“たくましさ”をも感じました。

 二次不等式で得た情報を、自分なりに表現することで、生徒の新たな側面を発見することができた。また、資料中の[投稿作品]は、ある生徒から「連立二次不等式について合作で作ってみたいのですがいいですか?」との申し出があり、二つ返事で進めた作品であり、このような積極的な面も現れた。なお、この申し出た生徒は、大賞作品を書いた生徒でもあり、数学の成績については低い方である。

 かつて、恩師に学んだ「読むことは人を豊かにし、話し合うことは人を機敏にし、書くことは人を確かにする」(フランシス・ベーコン)との言葉を思い出しました。書くことによって(数学の場合ほとんどが問題演習ですが)学習をより確かなものとしていきたいと思います。

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