毎週水曜日定期発行 Weekly Mathematics Magazine | 《数学通信》
MAT-06 1992.9.2(Tue) |
★4次元から夢が広がる!4次元から数学がロマンに変わる!!★
君達は《クラインの壺》を知っているだろうか?えっ,知らない?それは残念!!それでは,今回は4次元の話をしよう. 君達は考えたことがあるだろうか?4次元の世界を?
数学の世界では,点は0次元の世界を表す.この世界では,存在のみが確認できるのであって,物体には大きさはない.(それならなぜ物体があることが認識できるのだろう?)次に直線を考える.これは,1次元の世界を表す.直線上しか移動が出来ない.加えて,直線には太さはない.(では,なぜ直線を描けるのだろう?)続いて,平面を考えると,ここに2次元の世界が広がる.2次元の世界では縦横自由に移動が出来るが,平面には厚さがない.(では,どの様に平面を認識するのだろうか?)そして,いよいよ3次元,つまり我々の存在している世界が広がるわけである.この3次元の空間は,縦横高さの3つの軸から成り立っている.さて,ここまでは人間の,いや凡人のイメージでも把握できる.ここからである.数学の世界では,いとも簡単に次元が増えていく.4次元でも,5次元でもn次元までも次元が増えていく.もちろん計算できるし,理論的にはおかしな所はない.しかし,イメージとしてはどうだろう?次元が1つ増える毎に空間に軸が一つずつ増えて行くことになる.すると,4次元の空間になると,縦横高さの他にどんな軸を加えるのだろう?
話が,ちょっとずれてしまったが不思議な世界が数学には沢山ある.ちょっと視点を変えて考えてみよう.君達は,《メービウスの帯》を知っているよね.(下の図参照)
メビウスの帯
メービウスの帯は,1本のリボンの片方の端を半分ひねって,もう片方の端につないだものだ.メービウスの帯上では,裏と表の区別がない.裏も表もない世界ができあがる.リボン は2次元の物であるが,3次元の世界でちょっと手を加えるとメービウスの帯のような世界ができあがる.
これと同様の事を,一つ次元を上げて行った物が,《クライ ンの壺》である.(下の図参照)
作成図⇒ 完成⇒
クラインの壺は,ゴム状の壺を考えて,壺の口をずっと伸ばしていって,壺の底へ口をつないだものだ.すると,この壺には,内側と,外側とがなくなる.
しかし,このクラインの壺を我々の3次元空間で具体化することは不可能である.壺自体は3次元の産物であるが,メービウスの帯同様,4次元(次元を1つ上げなければならない.)の世界でなければ作れない.(下の図が見ずらいのは,4次元でなければ具体化出来ないものを,次元を2つも落として,2次元で描いているからだ.)
数学は,このクライン(人の名前)の考えだした,壺から,新しい,位相幾何学(トポロジーやホモトピーと言った図形の形ではなく,図形の持つ性質に着目した新しい幾何学)が大きな発展を遂げ,今日の数学を飛躍的に進歩させたのです.(ここに非凡なる人間のインスピレーションの持つ偉大さがあるのですよ.)
この,位相幾何学は魅力的な数学の分野の一つである.(難点は俺のような凡人では,イメージがついていかないことだ.)
さて,難しい話はここまでとして,本当は今までのような事が話したかったのではなく,これから話すことが今回のメイン なんだよ.
4次元の世界を考えるときに,3次元の世界は,縦横高さの3つの軸から構成されているが,4次元ではもう一つどんな軸を加えるかが大きな問題となる.これから先は,空想の世界となるので,イマジネーション豊かな者のみが理解できる世界となる.(本当に4次元の世界が存在しないかどうかは,俺にもよく解らないが….)
SF作家は,新しい軸として,時間軸を付け加える.するとタイムマシンなども容易に実現できて,タイムパラドックスなどの新たな問題が起こったりする.
時間軸を加えた4次元の世界はいったいどんな世界になるのだろう?ちょっと想像してみて欲しい.新たに時間軸が加わったということは,例えば,眼の前にコーヒーカップがあるとすると,”今”,あるコーヒーカップと,”1秒後”あるコーヒーカップは違うものという認識に立たなければならないことになる.3次元空間で,高さが違えば,当然大きさが違うのであるから,4次元空間では,時間が違えば,当然違うものになるはずである.(そうでない考えもあるが…)
理解できるかな?更に話を進めると,今の自分と,さっきの自分とは別人ということになる.あまり真剣に考えすぎると,頭の中で自我が崩壊してしまうから気を付けなさい.
しかし,SF作家の空想力には頭が下がるね.俺は,本当に感心してしまうし,そんな発想を最初に出来ない自分の想像力のなさを嘆き悲しんでしまう.
でも,ただ嘆き悲しんでいるのではない.俺は俺なりの4次元を考えてみた.3次元に時間軸を新たに加えると,SF作家の4次元になるのであれば,時間軸以外の軸を新たに加えると新しい4次元の世界が広がることになる.では,いったいどんな軸を加えるのか?ここがポイントである.
俺は,4本目の軸として”夢”という軸を加える.すると,そこに俺だけの4次元の世界が広がることになる.夢軸を加えた4次元はどんな世界なのかというと,昔,ライト兄弟がひたすら空への憧れを抱いて日々夢を追いかけていたような,空想と現実との中間のような世界なのである.
ライト兄弟は,ただ空を飛びたいという一途な思いの果てに飛行機を完成させた.その時,ライト兄弟は夢軸を4本目の軸に持つ4次元の世界に生きていたんだ.そんな4次元からの3次元への正射影が飛行機となって現れたと考えるといい.これはもう数学の世界を通り越してロマンの世界だ.
それでは,調子にのって5次元の世界を想像してみる.しかも俺なりの5次元の世界だ.
4本目の軸には時間軸をとる.そして,5本目の軸には夢軸をとる.すると,どんな世界が広がるのだろう?俺は,こんな世界を想像してみた.
今,こうしている自分は,時間軸と夢軸とを持つ5次元の世界の自分の正射影なのだと考えれるのだ.つまり,今,将来への夢を描いている自分がいる.1分後,将来への夢を描いている自分がいる.3日後,やはり,将来への夢を描いている自分がいる.ところが,5次元の世界では,時間が異なれば,自分も別人になる.更に,夢も異なれば,自分も別人になる.例え俺一人であろうと,描いている夢は1つではない.幾つも幾つもの夢や希望を描いて今を生きている.(俺には沢山夢があるんだよ.)すると,5次元の世界には,時間を異にした,夢を異にした”自分”が無数に,いや無限に存在することになる.
5次元の世界であれば,俺が無限にいても気味悪くはないが,3次元の世界では,俺が無限にいたら….ちょっと,気味悪いかな.では,どうやって3次元の世界に俺を表すかというと,5次元に無限にいる俺を,一つの集合と考えて,天気のいい日に木の陰が出来るように,3次元の世界へ5次元の世界から,”俺”の陰を投影すると,今こうして,君達へ熱いメッセージを書いている”俺”ができあがるんだ.
いかがですかな?俺の考えだした4次元や5次元の世界は?
もはや数学は論理を越えて,ロマンさえをも包み込むファンタジー空間(数学の理論にあるリーマン空間やハウスドルフ空間に対抗してつけられた名前)を作り上げたと言っても過言ではないのではないかな? ★★感想を待ってます!★★
Printed in Tounn.1992.
Written by Y.O^kouchi.1992. Copyright 1987,1992 MAT Inc. MAT is Mathematics Assist Team Corporation. |