毎週水曜日定期発行
Weekly Mathematics Magazine
《数学通信》
MAT-07 1992.9.9(Tue)

★続4次元の話〜ドラエモンのポケットはクラインの壺だ!!〜★

さて,前回の話に続いて今回も4次元の話をしてみたいと思う.

覚えているよね!前回の話!そう!クラインの壺の話である.もう一度復習のつもりでクラインの壺の話をすると,クラインの壺とは3次元世界でつくるメービウスの帯と同じように,4次元世界でなければ作れない表と裏の区別のない世界の事である.だから,クラインの壺は,壺の口から手をつっこむと壺の外に手が出ていると言うおかしな現象が起こるのである.(理論的には.現実にはそのような壺は存在しない.)

つまり,考え方を変えると,クラインの壺はその壺の中に無限に広がる空間を持っている事になる.小さな壺の内部に.内部という表現はおかしいか,クラインの壺には内部も外部もないのだから.さて,ここまで言うと君たちの頭が混乱を始めるのではないかな?大丈夫だろうか?

さて,1つ何かに気がつかないだろうか?君たちがよく知っている物,君たちに馴染みの深い物に実はクラインの壺が利用されているという事に!そう!!実はドラエモンのあの4次元ポケットとはクラインの壺を応用してつくられたポケットだったのだ!!クラインの壺の口から手をつっこむと壺の外に出てしまう.であれば,それを応用して,壺の口から手をつっこんだときに,壺の外ではなくて,別な空間に手が出るようにすればいい.そうすればいくらでも無限に物を詰め込む事ができる.あとは,ポケットの口の構造の問題だけである.どの様な大きさにも対応できるような収縮性を持たせればいいのである.

だが,まだ分からない事がある.4次元ポケットの中は無限に広がる空間があるだろうという事は,クラインの壺の応用と考えれば理解もできるし,納得もいく,想像もできなくはない.(もちろん想像力が足りない者には難しいが・・・.)それならば,ポケットの中に無限に広がる空間があるのならば,どうやって,仕舞い込んだ物をポケットから取り出せるのだろうか?無限に広がる空間の中にドラエモンのあの短い手では届かないところに道具があったらどうするのか?

だが,それも心配はいらない.想像力の問題であろう.無限に広がる空間が,必ずしも無限に大きいとは限らない.空間の広がりと,空間の大きさとは一致しない場合だってあるはずだ.俺の言っている事が理解できるかな?きっと君たちにはかなり理解し辛いような事を言っているような気がするのだが.

つまり,空間を考えるときに,我々はこの世界,つまりは3次元的な空間しか想像できない.だから,4次元の空間なんか到底想像できない.3次元世界では,空間が無限に広いという事と,空間が無限に大きいという事とは一致している.でも,それは3次元での話である.これが4次元になると,新たな軸の加え方によって,空間の持つ性質が変わっていく.すると,無限の広がりが無限の大きさでなくなったりもするわけだ.もっと分かりやすく言うと,ドラエモンのポケットは,無限に広がる別な空間につながっている.だが,そのつながっている空間は,狭いのだ.ドラエモンの手が届く程度に狭いのである.大きさは狭いのだが,広がりとしては無限医広がる.だから,いくらでも道具を仕舞い込んでおけるし,どんなに大きな物でも仕舞い込んで置けるのである.ここから先は,もう自分の想像力に頼るしかない.想像力の追いつかない者に,どれほど説明しても想像力を補ってやる事は出来ないから.

4次元世界は,魅力的である.新たにもう一つ軸を加えるだけで様々な世界が,様々な空間が出来上がるのである.こんな面白い世界はない.出きるならば,行ってみたいよね,4次元の世界へ.でもそれが出来ないから,我々3次元人はわずかな,そして,幼い想像力を駆使して4次元世界を想像するのである.

さて,君たちには,この4次元世界をどれ程想像できるだろうか?それは,4次元への憧れと情熱に比例すると思う!!頑張ってみてご覧!!新しい世界が想像できたら,ぜひ教えてほしい.その新しい世界を広げていく事はものすごく面白い事だと思うから,ぜひ仲間にいれてほしいのだ!!期待しているよ!!

★続々4次元の話〜4次元人は不老不死である〜★

さて,4次元の話第3弾.今度は4次元人の話である.4次元人とは,通常4次元世界に住んでいる人間を指す言葉であるが,ここで言う4次元人とは,自分の体内に4つ目の軸を持っている人間を指す.では,その4つめの軸とは,どの様な軸なのか?これこそ時間軸である.

俺はこんな4次元人を考えてみた.4次元人,縦,横,高さ+時間この4つの軸を体内に持つ人間である.だから,別に4次元の世界に住んでいなくてもいいのである.我々と同じ3次元世界に住んでいても,体内に,4つ目の時間軸を持っていれば,その人間は4次元人と呼べるのである.

さて,4次元人とはいかなる者か?簡単に言うと,4次元人とは不老不死の人間である.我々3次元人には永久に無理な不老不死ではあるが,4次元人は生まれながらに不老不死である.その気になれば,20才の自分の姿のまま,永久に生きていく事だって出来る.なぜか?それは,彼らが,体内に時間軸を有しているからである.では,なぜ時間軸を有していると不老不死になれるのだろうか?

時間軸の働きを考えてみよう.時間軸を有するという事は,自らの意志で,タイムトラベルが出来るという事である.自分の望む時間に,自分の行きたい場所に,自分自身を移動させる事が出来るという事である.体内に時間軸があるという事は,自分個人で時間を支配できるという事である.他の道具を使う事なく,自分の意志の力だけで,自分の時間をコントロールできるという事である.時間のコントロール,我々3次元人には絶対に出来ない事である.なぜならば,3次元人は体内に時間軸を持っていないから!

時間とは,3次元世界でコントロールしたり,自由にしたりする事が出来ない物である.我々3次元人は4次元世界に支配されている時間の流れの中をただひたすらに歩き続けるしかない.残念ながら・・・.

そのような,時間軸を体内に有する4次元人はその気になれば,他の時間の自分自身をも現在に運び込む事が出来る.だから,例えば,こんな事が考えられる.4次元人が死刑を宣告されたとしよう.我々3次元人が4次元人を死刑にする.どんな方法がいいかな?例えば,銃殺にするとしよう.4次元人とて,人間である.銃で射たれれば,血も流すし,悲鳴もあげるし,そして,死にもしよう.だが,そこからが違うのである.死の瞬間に体内の時間軸の働きで,1分前の自分を現在に運び込むのである.1分前はまだ,銃殺になっていないから生きている自分がいる.よく考えてほしい.銃殺になって,血を流した瞬間に,銃殺になっていない,血も流していない,生きた4次元人が再び我々の目の前に現れるのである.もう一度銃殺にしようと発砲する.結果は同じである.確かに,そのときの4次元人は死ぬ.だが,再び別の同一人物の4次元人が目の前に現れるのである.何百回,何千回と殺しても,何百回,何千回と生き返るのである.これこそ,不老不死でなくて,何と呼ぼう.

ただ,不老不死がいい事かどうかは,また,別の問題である.4組の生徒には学級通信『三青庵』で一度不老不死の話をしたが,死なない,永久に生きていくという事は必ずしも幸せな事ではない.俺はそう思っている.まあ,その点については,個々人の価値観だが・・・.

いかがだっただろう?4次元の世界はそれこそ幾く通りもある.要は.想像力がどれ程あるかだけである.4次元人の話にしても,正直完全な俺のオリジナルではない.ちゃんと俺より先にこんな事を考えている人がいるのだ.(萩尾望都という.)それが悔しくもあるのだが,彼女には正直頭が下がる.すごいなと思う.話がそれてしまったが,是非是非4次元の世界で遊んでみてほしい.数学がまた面白くなる事は確実だ!!

Printed in Tounn.1992.
Written by Y.O^kouchi.1992.
Copyright 1987,1992 MAT Inc.
MAT is Mathematics Assist Team Corporation.