毎週水曜日定期発行
Weekly Mathematics Magazine
《数学通信》
MAT-13 1992.10.21(Tue)

★絵でみる数学の世界〜Part-1〜★

息をするように数学をしたい!!!それこそ,数学の世界が下の図のようになっていて,それを高校時代に知っていれば・・・,絶対にもっともっと真剣に,そして最後まであきらめずに数学の世界に挑んだのに!!!

正直,数学の世界は難解である.生半可な力ではどんなに力いっぱい挑んだところで,あっさりと返りうちに合わされてしまう.俗にいう凡人には,きっと息をするように数学をする事は無理なのかも知れない.図でみても分かるとおり,息をするように数学をしている人は,神様みたいなもので,悟りを開かなければ,その世界に,その域にたどり着けないのだ.

正直,数学の世界を,それも全体像を見る事などほとんど不可能である.1億人に1人,いや10億人に1人すらいないのかも知れない.それほどに数学の世界は,難しい.

でも,これは本当だよ.俺は息をするように,さりげなくそれでいて,楽しみながら数学をしたいと思っていた.現実という壁にさえぶつからなければ・・・.

現実は無情である.情けというものを知らない.嫌というほどに,自分自身の力のなさを目の前に突きつけていく.”お前には無理だ!””力のないものは,才能のないものは,頭の堅いものは,数学の世界に入ってきても無駄だからさっさと出て行け!!”と.君達にはきっと分からないだろう!!あの絶望感は,あの屈辱感は.大学に入学してから,数学の世界に本当に触れてから自分の想像力のなさをつくづく思い知らされて,自分の無力感を嫌というほど見せつけられて,挫折しかけた.それでも,数学の世界から足を洗え

ないのは,やっぱり数学が好きだからだろう.

分数クレバスは難なく越したが,微積分のつり橋は,一度渡りそこねた.途中で引き返してきて,もう一度渡り直した.

数式地獄に落ちた事もある.

安住の地に長居をした記憶がない.ひょっとしたら,俺にとっては安住の地はなかったのかも知れない.

偏微分や,行列式もやった.

線形代数の岩壁にも挑んだ.

あっさり負けてしまったが.

εδ連峰も越えた.

わからんの森や絶望の森を嫌というほどさまよった.正直,数学を選んで失敗したとまで思った.

それこそ,昔の数学が出来るというプライドなどなかった.

入試の壁や,論理の壁,抽象化の壁などは難なく越えたのだが,そのあとの,想像性の壁はどうにもならなかった.

もっと力があれば,もっと才能があれば,孤立の沼や,時間の沼などにも行けただろうし,それこそ,腹が減ったから数学が食べたいというぐらいにはなれたと思う.

悔しいな.

たとえ,息をするように数学をする人になれなくても,悟りを開いて,俺も息をするように数学をするん人になるんだと,そう思うところまでは行きたかったな.

本当に,もっともっと早く数学がこんな世界だと分かっていたら・・・.

全体が見えるようになるまでがものすごく大変だよね.

Printed in Tounn.1992.
Written by Y.O^kouchi.1992.
Copyright 1987,1992 MAT Inc.
MAT is Mathematics Assist Team Corporation.