毎週水曜日定期発行
Weekly Mathematics Magazine
《数学通信》
MAT-46 1993.5.19(Wed)

★フェルマー数とコンパスによる作図★

今回はちょっと数学っぽく,話しをしていこうと思っている.難しい内容ではないから,よく読んでみて欲しい.

君達はフェルマーという人物をご存知かな?数学の世界では有名な人物で,偉大な数学者ともペテン師とも言われている.まあ,いい加減なところがなかった訳ではないから…,そのうち,フェルマーについて話しをしてあげよう.その数学者フェルマーにまつわる話しの中でもっとも有名なのは次の問題に関する事である.

を満足する整数a,b,cは存在しない.[フェルマーの最終定理 ]

フェルマーはこの問題に対して,自分の書物の余白に次のように書き残したきりである.”この問題を証明するには余白が足りないので,省略する.”とね.まあ,本当に,フェルマーが証明できていたのか,それとも勘違いの早とちりであったかは,もはや誰にも断言できないものとなってしまったが,それまでのフェルマーの功績からして,誰もがきっとフェルマーならば…,と思っていたのだろう.俺などは,単に勘違いしてただけでないの?とうがった見方をしてしまうのだが.

尚,この証明は現在もされていないままである,ということを付け加えておこう.

今回はその話ではなく,その有名なフェルマーの発見したフェルマー数の話をしようと思っている.フェルマー数とは?それは次の条件を満足して得られる数のことである.

 (ただし、nは0以上の整数とする)

従って,

n=0のとき, 3
n=1のとき, 5
n=2のとき, 17
n=3のとき, 257
n=4のとき,65537となる。

さてこれからが今回の話の本題である.

コンパスと定規だけで作図のできる正多角形を君達はいくつ知っているだろうか?有名なのは正六角形である.定規で適当な長さを引いて,その長さをコンパスでとって,半径とし円を描く.任意の場所から半径で円弧を切っていけば正六角形が出来上がる.

ところで君達はコンパスと定規の役割を知っているだろうか?定規とは線を引くもの.長さを計るものではない.コンパスとは円を描くものであると同時に長さを移すものである.

話を元に戻そう.コンパスと定規だけで作図できる正多角形には一定の条件がある.その条件を満たしているものは,コンパスと定規だけで作図が出来るのである.その条件とは?ここにフェルマー数が関係してくるのである.

「正多角形がコンパスと定規だけで作図可能なのは,正多角形の辺の数が,異なるフェルマー素数の積(1個や0個でも良い)と2の累乗(でも良い)の積になっている場合に限る.」

この事は,かの偉大な数学者ガウスが18才のときに証明している.(その証明は省略.また,ガウスについても詳しい事はいずれ,機会があれば話してあげよう.彼は天才だったんだよ.)

また,ここで言うフェルマー素数とは,前述のフェルマー数の中で特に素数のものを言う.具体的には,3,5,17,257,66537のみである.

つまり,

3×20=3…正三角形 、3×21=6…正六角形、3×22=12…正十二角形、…

5×20=5…正五角形、 5×21=10…正十角形、5×22=20…正二十角形、…

17×20=17…正十七角形、17×21=34…正三十四角形、…

・ ・ ・ 等

これらのものは全て,コンパスと定規だけで作図ができることになる.

ここで問題である.
Q1:正五角形は本当にコンパスと定規だけで作図が可能なのだろうか?作図の方法を見つけて欲しい.

正五角形がコンパスと定規だけで作図ができれば,正十角形もコンパスと定規だけで作図ができる.同じように問題の2番目.
Q2:正十七角形は本当にコンパスと定規だけで作図が可能なのだろうか?作図の方法を見つけて欲しい.

正十七角形がコンパスと定規だけで作図ができれば,正三十四角形もコンパスと定規だけで作図ができる.

今回の問題は難問である.すごく,すごく難しい.それでも,Q1は中学校で聞いたことがある者もいるかも知れない.中学校の数学の先生の中には,受験だけでなく,数学の,幾何の面白さを君達に伝えたいという熱意の塊のような人もきっとわずかではあるがいるであろうから.運が良ければ,君達はそんな教師に巡り会っているはずである.巡り会っていなければ,それは君の生まれついての運が,不運,なのである.君が悪いわけではない.そんな星の下に生まれてしまったことが悪いのである.

まあ,そんな事はさておき,Q2の正解者には豪華景品をさしあげよう.ただし,Q1はだめ,景品無しである.

君達の柔らかな頭脳に期待している.

Printed in Tounn.1993.
Written by Y.O^kouchi.1993.
Copyright 1987,1993 MAT Inc.
MAT is Mathematics Assist Team Corporation.