毎週水曜日定期発行
Weekly Mathematics Magazine
《数学通信》
MAT-61 1993.10.6(Wed)

★素数だけからなる等差数列★

数列が終わったので,今回は数列の話をしよう.数列の中でもいろいろな数列がある.等差数列,等比数列,階差数列,群数列等々.しかし今回はその中でも等差数列にこだわって,素数だけからなる等差数列のいくつかを紹介しようと思う.

今更言わなくても解ると思うが,素数とは1と自分自身以外約数を持たない数の事をいい,2や3などが代表的である.1が素数でないということもいいよね.

素数だけからなる無限等差数列はありえない.公差dの約数でない素数p以上の長さの列は,必ずどれかがpで割り切れるからである.しかし,素数だけからなるいくらでも長い有限個の等差数列があるというのは,古くからある予想であり,その証明または,反証に,エルデージュは懸賞金を提供しているともいう.

少し前までは最長記録は17個だったが,最近18個,19個の数列が発見された.少しさかのぼって,歴史的に有名なものを含めて,いくつかの数列を紹介しよう.

項 数 初 項 公 差 末 項 発 見 者 発 見 年
12 23143 3030 353473 Golubev 1958年
13 766439 510510 6892559 Seredinskii 1965年
16 2236133941 223092870 5582526991 Root 1969年
17 3430751869 87297210 4827507229 Weintraub 1977年
18 107928278317 99222782870 276615587107 Pritchard 1983年
19 8297644387 4180566390 83547839407 Weintraub 1986年
19 407531380253 60564864360 1497698938733 Weintraub 1986年

★フィボナッチ数列★

今回はもう一つ.珍しい?数列として,フィボナッチの数列というのを紹介しておこう.

次の数列をフィボナッチの数列と呼ぶ.

1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,

これは,イタリアの数学者フィボナッチが彼の著書『算盤の書』の中で紹介したウサギの繁殖のしかたについてでてくる数列に由来するものである.フィボナッチの数列は生物界によく現れてくるのでその例を紹介しよう.

●ウサギの繁殖例●

雌雄1対の子ウサギは2カ月たつと親になり,毎月1対の子ウサギを生む.(とする.)その生まれた子ウサギは2カ月たつと 親になり,また1対の子ウサギを生む.(とする.)以下同様に考えていく.このように繁殖していくとすれば,はじめの1対の ウサギは,12カ月後には何対のウサギになっているだろうか?(ただし,途中で死ぬウサギはいないものとする.)

繁殖の状況は次の図のようになる.

もちろん近親相姦だとか,劣性遺伝だとか致死遺伝等の問題は現実にあるのだが,そんなことを言っていたら数学は語れない.あくまでもすべてが理想状態での話しであるから,….

現実は,割り切れない.それはそれでものすごく面白い.

が,それと同じくらいに,数学の純粋世界は面白いのである.

もし,暇だったら,100項ぐらい求めてみるといいし,やっぱり,数列である.一般項が求めてみたいよね.

やって出来ないことはない.試しに一般項でも求めてみてごらん.

Printed in Tounn.1993.
Written by Y.O^kouchi.1993.
Copyright 1987,1993 MAT Inc.
MAT is Mathematics Assist Team Corporation.