メービウス変換の性質として、原点を通らない直線は原点を通る直線に変換されることは既知のことである。反転の考え方から原点に近い点は原点から遠ざかり、原点から離れた点は原点に近づく。直線の場合は、-∞と∞の点はともに原点に収束し、ジョイントされ円になるわけである。直線を半径が無限大の円と広義にみて、これを円々対応という。
ところで、メービウス変換は、等角写像の代表例としても知られている。等角とは、二曲線の交角の大きさが変換後も不変であるということであるが、このことは、早苗氏のレポートにも触れられている。
ではメーピウス変換についてその等角写像性を調べてみよう。
複素数平面の格子を表す直線x=s と直線 y=t のfによる像は反転の考え方から、
x=s ⇒ 中心 A(1/2s) 半径 |1/2s|の円
y=t ⇒ 中心 B(-1/2t・i) 半径 |1/2t|の円
である。二直線はもちろん直交し、交点 s+ti の像P(w)は、

である。
よって、上で求めた2円が直交すればよい。さてここで2曲線が直交することとは、その交点における各曲線の接線が直交するということである。特に円については接線の法線は円の中心を通るから、中心と接点を結ぶ2つの直線が直交すればよいことになる。
すなわち、2円の中心と交点を結ぶベクトル
に対して、
が言えればよい。

より
また、

以上より、
となり、等角写像性が示されたことになる。