変換の性質を用いて複素数を定義し、複素数の計算規則を導くことをこれから試みてみよう。
まず、変換のどのような性質がこれから使われるか、簡単にまとめておこう。
(@)2つの写像f、gが等しいの意味
f;x├→y g;u├→v
(1)xの変域とuの変域が集合として等しい。
(2)x=uならばf(x)=g(u)
集合Vから同じ集合Vへの写像を“Vの変換”という。
Vにおける2つの変換f,gが与えられているとき、変換fと変換gとが等しいのは次のときである。
f;x├→f(x) g;x├→g(x)
とすると、任意の元x(x∈v)に対してf(x)=g(x)のときf=gとなる。
(A)合成変換
Vの変換の中でx├→g(f(x))を”fとgの合成”といいgfで表わす。
gf;x├→g(f(x))である。
これをgf;x├→gf(x)とも表わす。つまり
gf(x)=g(f(x))である。
合成変換については一般に、gf≠fgであるが、gf=fgのとき可換という。Vにおける3つの変換f、g、hについてはh(gf)=(hg)fは常に成り立つ。
(B)変換の和
Vにおける2つの変換f、gについて、
f;x├→f(x) g;x├→g(x)
に対してx├→f(x)+g(x)となる変換を、変換fと変換gの和と呼びf+gと表わす。
すなわちf+g;x├→f(x)+g(x)である。
(C)変換が線型であるとき。
変換fについてはf;x+y├→f(x+y)であるがf;x+y├→f(x)+g(y)とは必ずしもならない。同様にしてf;kx├→f(kx)ではあるがf;kx├→kf(x)とは必ずしもならない。ここでf(x+y)=f(x)+f(y)、f(kx)=kf(x)となるとき変換fは線型であるという。