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〔5〕変換によって複素数を定義する

 実数を変換によって定義することができた。いよいよ複素数も変換によって定義することを試み よう。

 複素数はどのような変換によって特徴づけられるであろうか。
 複素数の概念を明確にする為には次の3つの事柄が本質的なことである。

  1. 虚数単位iとはi2=−1を満たす。このような数iとは如何なる変換から導かれるのか。
  2. 実数bと虚数単位iとの積とはどのような意味をもつのか。
  3. aとbiとの和とは何を意味するか(但しa、bは実数)

 ここで平面ペクトルの集合Uを考える。∈Uに対してπ/2回転移動したベクトルを*∈Uとする。

 =(||、θ)とすると*=(||、θ+π/2)となる。

 ここで次のように定義する。

《定義》

平面ベクトルの変換:├→*を虚数単位を特徴づける変換と呼びiで表わす。
すなわち、i;├→*
また i;├→iとすると*=i
つまり変換iとは平面ベグトルをπ/2回転させる変換である。
 この変換iは線型であることを示そう。

図で123とする。

 Oを中心とするπ/2回転によって、点A、点Bは、それぞれ点C、点Dに移るとする。このとき
   1*2*3*
となる。

今、に上式を代入して
   3*1*2* ・・・@

 ここで
   312
   1*=i12*=i23*=i3
を@に代入する。
   i3=i(12)=i1+i2
   ∴. i(12)==i1+i2
よって変換iは線型である。

 次に合成変換i・iについて考える。
   i;├→* 続いて i;*├→(*)*
よってi・i;├→(*)*となる。

=(||、θ)とすると
   *=(||、θ+π/2)、
   (*)*=(||、θ+π/2+π/2)
よって(*)*=(||、θ+π)=−
従ってi・i;├→−となりこの変換は(−1);├→−と同じ変換である。
よってi・i=−1、合成変換i・iと略記することにすれぱi2=−1となる。

 続いてiと実数aとの積は可換であることを示す。

 これは合成変換i・aとa・iとが同じ変換であることを示すことになる。
   a・i;├→a(i)
   i・a;├→i(a)
であるから結局はa(i)=i(a)となることを確かめればよいのである。

a=0との場合は自明なので省略し、a≠0、そして=(||、θ)として考える。

(@)a>0のとき

   a(i)=a(|、θ+π/2)=(a||、θ+π・2)
 また、i(a)=i(a||、θ)=(a||、θ+π/2)
 よってa(i)=i(a)

(A)aく0のとき

 a=−b(ただし、b>0)とおける。
   a(i)=−b(i)=−b(||、θ+π/2)
    =(b||、θ+π/2+π)
    =(b||、θ+3π/2)
   i(a)=i(−b)=i(b')=i(b||、θ+π))
    =i(b||、θ+π)=(b||、θ+π+π/2)
    =(b||、θ+3/2π)
よってa(i)=i(a)

 以上よりいずれの場合もa(i)=i(a)となるから、変換aiと変換iaとは同じ変換であるからai=iaとなる。今後はこれをai=iaと表わすことにする。

 次に2つの変換aとbiとの和を考える。
   a;├→a
   bi;├→b(i)
より
   a+bi;├→a+b(i)
となる。これは
   a+bi;a├→a+b*
と考えてもよい。

 つまり変換a+biはにa+b*を対応させる変換である。

 この変換の和a+biは線型であることを示そう。まず
   a+bi;├→a+b(i)はa+bi;├→(a+bi)
なのであるから
   (a+bi)=a+b(i)
となる。

 次に任意の2つのベクトル12に対して、
   a;12├→a(12)
   bi;12├→b(i(12))
の2つの変換を考える。

 これよリ2つの変換の和は
   a+bi;12├→a(12)+b(i(12))
となる。
   a+bi;12├→(a+bi)(12)
であるから、
   (a+bi)(12)=a(12)+b(i(12))
となる。

 iの線型性は既に確かめてあるので、
   i(12)=i1+i2
よって
   b(i(12))=b(i1+i2)=b(i1)+b(i2)
従つて
   (a+bi)(12)=a(12)+b(i(12))
    =a1+a2+b(i1)+b(i2)
    =a1+b(i1)+a2+b(i2)
    =(a+bi)1+(a+bi)2
となり、a+biの線型性が証明される。

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