〔6〕複素数の計算規則
変換によって複素数を定義する場合の理論展開について調べてきた。いよいよ変換としての複素
数にはどのような計算規則が成り立つのか、それについて考えてみよう。
(@)相等
a+bi;
├→a
+b
*
c+di;
├→c
+d
*
この2つの変換において
a
+b
*=c
+d
*
とおくと
と
*の独立性よりa=c、b=dが得られる。このとき2つの変換は同じ変換ということになるのでa+bi=c+diよりa=c、b=dが得られる。
(A)加法
α=a+bi、β=c+diに対して
α;
├→α
β;
├→β
を考える。
このとき
α+β;
├→α
+β
であるが、これは
α+β:
├→(α+β)
でもある。従って、
(α+β)
=α
+β
=(a+bi)
+(c+di)
=a
+b
*+c
+d
*=(a+c)
+(b+d)
*
=(a+c)
+(b+d)i
従つて
α+β;
├→(a+c)
十(b+d)i
であり、
(a+c)+(b+d)i;
├→(a+c)
+(b+d)i
であるから変換α+βと、変換(a+c)+(b+d)iとは同じ変換である。
よって
α+β=(a+bi)+(c+di)=(a+c)+(b+d)i
となりここに複素数の加法の計算規則が導かれる。
(B)減法
α+γ=βとなるγをγ=β−αと定義すると
γ=β一α=(c+di)−(a+bi)=(c−a)+(d一b)i
となることはすぐ示される。
(C)乗法
次にαβ;
├→α(β
)について考える。
まず
i
*=(|
|、θ+π/2)=(|
|、θ+π/2+π/2)
=(|
|、θ+π)=−
である。
α(β
)=α(c
+d
*)=(a+bi)(c
+d
*)
=(a+bi)(c
)+(a+bi)(d
*)
=a(c
)+bi(c
)+a(d
*)+bi(d
*)
=ac
+bc(i
)+ad(i
)+bd(i
*)
=ac
+bc(i
)+ad(i
)+bd(−
)
=(ac−bd)
+(ad+bc)i
(ac−bd)+(ad+bc)i;
├→(ac−bd)
+(ad+bc)i
であるから変換αβと変換(ac−bd)+(ad+bc)iとは同じ変換である。
よって
αβ=(a+bi)(c十di)=(ac−bd)+(ad+bc)i
となる。
この式から複素数の乗法が可換であることもわかる。
(D)除法
(a+bi)W=1となるようなWを
W=1/(a+bi)
と定義する。W=p+qiとおいて既に確かめられた諸体質をもとにして計算してみよう。
(a+bi)W=(a+bi)(p+qi)=1とおくと
(ap−bq)+(aq+bp)i=l
となる。よって
ap−bq=1、aq+bp=0
が得られ
p=a/(a2+b2)、q=−b/(a2+b2)
となる。よって
W=p+qi=a/(a2+b2)−bi/(a2+b2)
となる。つまり
a+bi=a/(a2+b2)−bi/(a2+b2)
となる。そこで複素数の除法を次のように定義する。