さて高校数学の式計算でよく用いられかつ重要な役割をはたすものは,計算の基本法則としての交換則,結合則,分配則と共に指数法則といわれるものである。指数法則とは次のような公式をいう。
m,nが正の整数のとき am×an=am+n, am÷an=am-n (am)n=amn, (ab)m=ambm となる。 |
これらの公式の証明は,例えば次のようにしてなわれることが多い。
amは1にaをm個掛ける,anは1をn回掛けることであるから,
となる。
しかしながらmやnが正や負の有理数であれば,このような方法での証明はできない。従ってm,nが有理数のときに指数法則が成り立つかどうかも判らないわけである。たとえば,
a-5×a3=a-5+3=a-2
a2/5×a1/3=a2/5+1/3=a11/15
(a-2/3)4/5=a-2/3×4/5=a-8/15
等というように計算してもよいのであろうか。
これを考える場合にも媒質の中を通る光の量についての性質をもとにして計算法則を見つけてゆかなければならない。
光はOの位置より目盛x1の位置に到達し,そこから距離x2だけ進んで目盛x1+x2の位置に達する。この場合について考えよう。
Ix1=ax1I0,Ix1+x2=ax2I1より
Ix1+x2=ax2×ax1I0
Ix1+x2=ax1+x2I0
故に
ax1+×ax2=ax1+x2
が成り立つ。しかもこの場合のx1,x2は正,負の有理数であっても上式は成り立つ。
次にIx1=bI0とする。このときIx1=ax1I0であるから,b=ax1である。0からx1までを単位距離とみなしたとき,0から目盛x1x2までの距離はこの単位距離のx2倍となっている。これはOを通る光が単位距離進むごとにb倍になってゆくとき,その単位距離のx2倍の距離を進んだと考えられる。
目盛x1x2を通る光の量はIx1x2=bx2I0となる。またIx1x2=ax1x2I0であるからbx2=ax1x2となる。b=ax1より
(ax1)x2=ax1x2
が成り立つ。
上図のような媒質の中を光が通りぬけてゆく。この媒質を通る光の量は1m進むごとにab倍となってゆくとする。
従ってIx=(ab)xI0となる。光の量について考えると,はじめI0であったものが,この媒質の中をxm進んでIxになったのであるが,このIxについては次のことがいえる。
まず,I0が1m進むとab倍になる媒質の中を通りI1となるがI1=abI0であった。このI1については次のように段階に分けて考えることができる。
まずI0が1m進むごとにa倍となる媒質の中を1m進みI1’となり,引き続いてI1’が1m進むごとにb倍となる媒質の中を1m進んでI1''となるとき,I1''=I1である。何故ならば I1’=aI0,I1''=bI1’=baI0 であり,I1''=I1 がいえる。つまりI0が1m進むとab倍となる媒質の中を1m進むということは,1m進むとa倍となる媒質の中を1m進み,引き続いて1m進むとb倍となる媒質の中を1m進むということと同じ光の量になるのである。
この考えをつきつめてゆくとI0が1m進むごとにab倍となる媒質の中をxm進んだときの光の量は,I0がまず1m進むごとにa倍となる媒質の中をxm進み,引き続いて1m進むごとにb倍となる媒質の中をxm進んだときの光の量と同じになるのである。
I0が1m進むとab倍となる媒質の中をxm進んだときの光の量は,Ix=(ab)xI0である。またI0が1m進むとa倍となる媒質中をxm進み光の量はIx’となり,引き続いて1m進むとb倍となる媒質中をxm進んで光の量はIx''となったとしよう。このとき次の式が成り立つ。
Ix’=(ax)I0, Ix''=bxIx’=axbxI0
既に考察してきたようにIx=Ix''であるから,(ab)x=axbxI0となり,故に
(ab)x=axbx
が成り立つ。