札幌稲北高校  早 苗 雅 史

  1. はじめに

     「LiveGraphics3D」を用いた実践では,多角形の頂点の座標を取ることにより立体図形を作成していきました。作成された図形はマウスで簡単に回転,拡大・縮小させることができるので空間的な感覚を身につけるにはよい題材だといえました。また,座標感覚を多角形の作成という作業を通すことで養うことも可能でした。
     さらに今回は空間的な図形感覚を身につけるための試みとして,「POV-Ray」というソフトを使用してみました。これは「LiveGraphics3D」と違い動きはありません。そのかわり3次元図形をレイトレーシング法によって作成するため,よりリアルな立体図形を作成することができます。どちらかというと,より興味・関心をもって取り組めるのではないか,というところを狙っての試みです。

  2. 実践の目的


  3. POV-Rayとは

     この実践で使用しているソフトは「POV-Ray」といいます。「POV-Ray(Persistance of Vision Ray Tracer)」とは,写真のようなリアルな3次元グラフィックスを作り出すためのソフトウエアです。3次元図形をレイトレーシング法によって,光の影や透明感などを見事に演出してくれます。
     このソフトは世界中のボランティアプログラマ「POV-Ray Team」によって,現在も開発が進められています。そしてこれほどの高機能を備えながら,無料で配布されているソフトウエアなのです。
     特に標準インクルードファイルで,リアル感を持たせるためのさまざまな素材が数多く用意されていて,シーンファイルの記述がごく簡単に作成することができます。
     なおこのソフトは,次の公式サイトよりダウンロードすることができます。

    「POV-Ray - the Persistence of Vision Raytracer」
    http://www.povray.org/

  4. 実践の内容

    1. 概要

       「POV-Ray」における簡単な書式を覚えながら,実際に3Dグラフィックスを作成していく。作成する際に3次元における座標感覚や回転,平行移動といった感覚を養っていく。

    2. 主な流れ(3時間分)

      @ソフトの使用法などの説明
      A直方体の作成の仕方の説明
      Bカメラ,照明,物体の色といった3DCGについての基礎知識の説明
      Cよりリアルな図形作成のための方法の説明
      D直方体以外の簡単な図形の作成の説明
      E実際に自分で作成してみる(実習)
      Fプリントアウトしてみる

    3. 使用ソフト「POV-Ray」(by POV-Ray Team)の利点

      ・フリーのソフトウエアである
      ・シーンファイルをテキスト形式で記述
      ・全てのOSに対応
      ・全てのOSで資産を共有できる
      ・ネットワーク上に多くの資産が存在
      ・48ビットカラー出力が可能
      ・標準で多くの素材が用意されている
      ・アニメーション作成

    4. 資料

      3次元図形を作成してみよう(3時間分の資料)
      参考資料(主なインクルードファイルと基本形状)

  5. 実践の感想

    千葉さん,川崎さんの作品松下さん,岸野さんの作品

  6. おわりに

     今回使用したソフトは3Dグラフィックスの方に重点がいきがちであろう,ということを想定していました。しかし,生徒の興味・関心を高めながら少しづつ3次元空間に慣れていければ,と考え実践しました。生徒は数学という学習から別な観点で興味を持ったのかもしれません。リアルな3次元グラフィックスを自分の手で案外簡単に描けることの,ある種の“喜び”みたいなものがあったのかもしれません。現在はゲームソフトの中に驚異的な3次元グラフィックスが使われています。ゲームする喜びとは別の“作る喜び”を体験できたのではないでしょうか。

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